next up previous
次: 平面曲線としての円錐曲線 上: 円錐曲線・二次曲線 前: はじめに

円錐曲線の定義と離心率

南海  円錐曲線の研究はギリシアにはじまった. 円錐曲線を系統的に研究した最初の人は, プラトンの友人であったメナイクモス(Menaechmus,B.C.350頃)であろうといわれている.

円錐とは何か.また円錐曲線とは何か.

耕一  円錐というのは,軸といわれる直線があって, これに交わるもう一つの直線を軸の周りに回転させたとき, その直線が通過してできる曲面です. この直線を母線といいます. 軸と母線の交点を頂点といいます.

円錐曲線とは,円錐をある平面$\pi$で切ったとき,切り口として得られる曲線です.

南海  左図のうち右側の図は軸と直交する方向から見たものだが,図のように, 軸と母線のなす角を$\alpha$,平面$\pi$と軸のなす角を$\beta$とする.

その主な性質を調べていこう.

楕円

円錐を平面$\pi$で切り,図の太線のような切り口になるとする.

このとき円錐に内接しかつこの平面$\pi$に接する球が2個確定する. この球と平面$\pi$との接点を $\mathrm{F},\ \mathrm{F}'$とする.

また切り口の図形上の点$\mathrm{P}$をとる. 円錐の頂点と点$\mathrm{P}$を結ぶ直線が,2個の球と接する点を $\mathrm{K},\ \mathrm{K}'$とする.

この接点は球と円錐が共有する円周上にある.

2つの直線$\mathrm{PF}$$\mathrm{PK}$は球の外部の点$\mathrm{P}$ から,この球に引いた2本の接線であるから

\begin{displaymath}
\mathrm{PF}=\mathrm{PK}
\end{displaymath}
である.同様に

\begin{displaymath}
\mathrm{PF'}=\mathrm{PK'}
\end{displaymath}
である.したがって

\begin{displaymath}
\mathrm{PF}+\mathrm{PF}'=\mathrm{PK}+\mathrm{PK}'=\mathrm{KK'}\ (一定)
\end{displaymath}
となる.

2つの球と平面$\pi$との接点 $\mathrm{F},\ \mathrm{F}'$をこの楕円の焦点という.

双曲線

耕一  なるほど,よくわかります. 双曲線でやってみます. 点の名称は楕円の場合と同様です.

2つの直線$\mathrm{PF}$$\mathrm{PK}$は球の外部の点$\mathrm{P}$ から,この球に引いた2本の接線であるから

\begin{displaymath}
\mathrm{PF}=\mathrm{PK}
\end{displaymath}
である.同様に

\begin{displaymath}
\mathrm{PF'}=\mathrm{PK'}
\end{displaymath}
である.したがって

\begin{displaymath}
\mathrm{PF}'-\mathrm{PF}=\mathrm{PK}'-\mathrm{PK}=\mathrm{KK'}\ (一定)
\end{displaymath}
となる.

楕円の場合と同様に2点 $\mathrm{F},\ \mathrm{F}'$をこの双曲線の焦点という.

 

 

 

 

 

放物線

南海  ところが放物線は,同じようにはいかない. 焦点のみで放物線を定義することはできず,準線が必要になる. 後で,楕円や双曲線の準線や離心率を円錐曲線として考えるための準備として, 放物線の場合を考えてみよう.

切断平面$\pi$に点$\mathrm{F}$で接し, かつ円錐にも接している球の,円錐との共有円を含む平面を$\pi'$とする. 平面$\pi$と平面$\pi'$との交線を$d$とする.

曲線上の点$\mathrm{P}$をとる. 点$\mathrm{P}$から直線$d$への垂線の足を点$\mathrm{H}$, 点$\mathrm{P}$から平面$\pi'$への垂線の足を点$\mathrm{K}$とする.

$\mathrm{M}$は平面上にあり,直線$\mathrm{PM}$は円錐の頂点を通り, 直線$\mathrm{KM}$は円錐の軸と交わるものとする.

$\angle \mathrm{KPH}$は平面$\pi$と軸のなす角であり,これが$\beta$であった. $\angle \mathrm{KPH}=\beta$ である.

$\angle \mathrm{KPM}$は直線$\mathrm{PM}$が軸となす角であり, これは母線が軸となす角$\alpha$と等しい.

平面$\pi$が母線と平行なので,

\begin{displaymath}
\alpha=\beta
\end{displaymath}
である.

この結果,2つの直線が描く三角形のあいだの合同

\begin{displaymath}
\bigtriangleup \mathrm{PKH}\equiv \bigtriangleup \mathrm{PKM}
\end{displaymath}

が成り立ち,

\begin{displaymath}
\mathrm{PH}=\mathrm{PM}
\end{displaymath}

が成立する.

2直線$\mathrm{PM}$$\mathrm{PF}$はともに点$\mathrm{P}$から同一の球への接線なので

\begin{displaymath}
\mathrm{PM}=\mathrm{PF}
\end{displaymath}

である.

\begin{displaymath}
∴\quad \mathrm{PH}=\mathrm{PF}
\end{displaymath}

耕一  つまり平面$\pi$と円錐の交わりの曲線上の点$\mathrm{P}$は, 直線$d$と点$\mathrm{F}$からの距離が等しい点であるのですね.

$d$のことを準線,$\mathrm{F}$を焦点というのでした.

南海  放物線の場合の考察に導かれて,楕円,双曲線,放物線の離心率を定義しよう.

ここでの話は 『直観幾何学』(ダ−ヴィト・ヒルベルト;S.コ−ン・フォッセン,芹沢正三訳,みすず書店,1966) に教えられたことだ. この本は2005年に復刊された.ぜひ意欲的な高校生が挑戦してみてほしい.

円錐曲線としての放物線を考えたときと同様に,切断平面$\pi$と, $\pi$に接する球が円錐と接する円の乗っている平面$\pi'$の交わる直線を$d$とする.

図は放物線のときの図を借用する.

図のように角$\beta$は軸が母線となす角$\alpha$とは異なる.

定義 2
次の比を離心率といい,普通は$e$で表す.

\begin{displaymath}
e=\dfrac{\mathrm{PF}}{\mathrm{PH}}
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
\mathrm{PH}\cos\beta=\mathrm{PK}=\mathrm{PF}\cos\alpha
\end{displaymath}

であるから

\begin{displaymath}
e=\dfrac{\cos\beta}{\cos\alpha}
\end{displaymath}

と余弦でも表される.

耕一  平面$\pi$が定まれば, 平面$\pi'$は平面$\pi$に接する球から定まる. 角$\beta$$\pi$$\pi'$のなす角から定まる.

よって比 $\dfrac{\cos\beta}{\cos\alpha}$は点$\mathrm{P}$によらず一定なのですね.

南海  そう.それを確認することが大切なのだ.

耕一  $\alpha<\beta$なら楕円ですが, このときは $\cos\alpha>\cos\beta$なので$0<e<1$です.

$\alpha>\beta$なら双曲線ですが, このときは $\cos\alpha<\cos\beta$なので$1<e$です.

また$\alpha=\beta$なら放物線ですが, このときは $\cos\alpha=\cos\beta$なので$e=1$です. 放物線のときは先にやりました.




next up previous
次: 平面曲線としての円錐曲線 上: 円錐曲線・二次曲線 前: はじめに
Aozora Gakuen