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■石川議員逮捕の意味  10/01/16

小沢秘書逮捕のときにも書いたが、これは完全に小沢つぶしの捜査である。民主党は衆議院で多数派であるが国家の権力を完全に握っているわけではない。政治資金に関する事務的な手続き上の瑕疵を針小棒大に取りあげ、夏の選挙を見据えての弾圧である。かつて、小沢幹事長の師匠、田中角栄もロッキード疑惑で失脚させられた。アメリカの意向を無視して中国との国交回復を実現させた(注参照)。アメリカとそれに従属する検察による報復だった。政敵を検察・警察を使って逮捕させる手法は、これまでも佐藤優、鈴木宗男、その他いくつも例があった。

新聞もテレビも検察のリークをそのままに流していている。「自殺の恐れがある」などといっているが、そういわなければならないほど今回の逮捕には無理があるということだ。この無茶な捜査を暴露する記事など皆無である。さらに、水谷建設がその日に5千万渡したと自白しているが、この「自白」自体が何かの取引の結果の「でっちあげた」であるということは十分考えられる。何度も何度も使われてきた手法である。

かつて田中角栄は失脚した。今回もそうなるのか。田中角栄のとき背後にいたアメリカには強大な力がまだ残っていた。今アメリカにはかつてのような力はない。アメリカのいちばんに身内と思われてきたドイツも、日本も、サウジアラビアも、イスラエルも、それぞれ内容は違うがアメリカのいうとおりには動かない。アメリカの権威は地に墜ち世界は多極化に向かっている。検索の今回の捜査はこれまでの国策捜査そのままの手法であるが、歴史的背景がちがっている。今回は検察首脳の一人相撲で勝手にアメリカに媚を売っているように思われる。

検察は余りやる気がないのにアメリカが本気で小沢つぶしをねらっているという見方もある。検察庁特捜部は占領下の1947年、GHQの指導で隠匿退蔵物資事件捜査部としてスタートした。特捜部上層部は在米日本大使館の一等書記官経験者が多く、アメリカの意をくんで動く傾向が強い。小沢幹事長は昨年はじめ「極東の米軍は第七艦隊で十分だ」と発言し、このときは秘書逮捕となった。米軍再編問題や先日の小沢訪中団等をみればそれもありうる。

検察といえども行政府の一環である。法務大臣は、検察庁法に基づいて検察事務について検察官を指揮監督する権限をもつ。個々の事件の取調べまたは処分については検事総長に対してのみ発動されるものであるが、露骨な検察ファッショともいうべき政治弾圧行為に対して内閣はもっと毅然と対処すべきである。

去年の3月には小沢秘書が逮捕された。あれも去年の夏の衆議院選挙を計算した検察の意図的捜査だった。しかしそれでも民主党は選挙で勝った。今回も同じで、結局夏の参院選挙も民主党の優位は揺るがない。それが歴史の流れである。儲け第一の経済拡大より人間の生活を、多極化する世界のなかで日本はアメリカ一辺倒からの脱却を、それを担う政治潮流をという歴史の大勢は動かない。検察や自民党がいくら抵抗しても、現実の政治過程が紆余曲折を経るだけであって、その流れ自体をとめることはできない。

問題は民主党にこれを弾圧だととらえて団結して闘う力があるかである。さっそく横から身内を攻撃する者もいる。身内がやられているときに横から撃つようなことはするべきではない。人間性が疑われる。民主党はその歴史の要求に応えることが党の使命だ。それを自覚して団結して進めば、今回の弾圧も逆に大きな力にかえることができるだろう。そうせずに内輪もめを始めたら瓦解するだろう。

私は党派としての民主党を支持するものではない。どこかの党派に属することも支持しているということもない。だから醒めてはいる。ただ、権力から弾圧されているものに対して、できることはしたいと思う。といってもせめて私見を書くぐらいしかできないのだが。

2006年5月26日までに解禁された米公文書によれば、ニクソン米大統領の中国訪問など70年代の米外交政策を主導したキッシンジャー大統領補佐官(後に国務長官)が72年夏、田中角栄首相が訪中して日中国交正常化を図る計画を知り「ジャップ(日本人への蔑称(べっしょう))」との表現を使って日本を「最悪の裏切り者」と非難していた。

 キッシンジャー氏の懐疑的な対日観は解禁済みの公文書から既に明らかになっているが、戦略性の高い外交案件をめぐり、同氏が日本に露骨な敵がい心を抱いていたことを明確に伝えている。日米繊維交渉などで険悪化した当時の両国関係を反映しており、70年代の日米関係史をひもとく重要資料といえる。

 文書はシンクタンク「国家安全保障公文書館」が国立公文書館から入手。26日の公表前に共同通信に閲覧を認めた。

 ハワイで日米首脳会談が行われた72年8月31日付の部内協議メモ(極秘)によると、キッシンジャー氏は部内協議の冒頭で「あらゆる裏切り者の中でも、ジャップが最悪だ」と発言した。

 続けて、中国との国交正常化を伝えてきた日本の外交方針を「品のない拙速さ」と批判し、日中共同声明調印のために田中首相が中国の建国記念日に合わせ訪中する計画を非難。首相訪中に関する日本からの高官協議の申し入れを拒否したという。

 またフォード大統領訪日を直前に控えた74年11月12日付の国務省会議録(秘密)によると、国務長官も兼務していた同氏は省内会議で田中首相について「日本の標準に照らしてみてもうそつきだ」と言明した。

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2006年5月26日【ワシントン26日共同】解禁された米公文書の要旨は次の通り。

 ▽1972年8月31日のバンカー駐南ベトナム大使とキッシンジャー大統領補佐官の部内協議メモ(極秘)

 一、あらゆる裏切り者の中でもジャップは最悪だ。

 一、中国との関係正常化を品のない拙速さで進めるだけでなく、中国の建国記念日に訪中したがっている。

 一、昨日、日本側はこの件で鶴見(清彦)外務審議官が私と打ち合わせをしたいと面会を申し入れてきた。ロジャーズ国務長官にも同様の申し入れをしてきた。長官らがどう対応したかは知らないが、私は審議官には会わない。

 

 ▽74年11月12日付の国務省会議録(秘密)

 一、ハビブ国務次官補(東アジア・太平洋担当) 日本の内閣は厳しい状況だ。フォード大統領訪日後に、田中(角栄)首相は辞任するだろう。

 一、キッシンジャー国務長官 大統領訪日で何を達成するのか。

 一、次官補 訪日自体が一つの目標達成だ。大きなインパクトがある。訪問を取りやめたら、政治的に大きな影響が出る。

 一、国務長官 田中(首相)にそれほど関心があるわけではない。

 一、次官補 彼が辞めても涙を流すことはない。彼は退屈な首相だった。

 一、国務長官 日本の標準に照らしてみてもうそつきだ。