エジプト革命の息吹を現地から伝える新聞が届いた。『人民新聞』
通巻1404号、2011年2月15日号だ。人民新聞特派員の阪口浩一さんが現地から伝える革命の有り様は、読んでいて心動かされる。阪口さんは上記人民新聞webの最初のページにあるように、昨年12月2日、アジアから初となる「ガザ支援キャラバン」に同行。1月4日、ガザ入りを果たし支援物資を送り届けた。その後いったんトルコに戻り再度エジプトに入り、1402号でも現地から速報を伝えていた。そしてムバラク退陣のその日タハリール広場にいたのだ。ちなみに『人民新聞』は1968年創刊の大衆政治新聞で団体・組織の機関紙ではない。
インターネットを利用してデモを呼びかけた「4月6日グループ」をはじめとする若者たちの働きは、大きい。しかし最大200万人もの人々が集まったタハリール広場には、多種多様な人々がいた。ブルカを披った女性から西洋的な服装をした女性まで。言仰深いイスラム教徒からキリスト教徒も。学生から日雇い労働者まで。年齢幅も広<、家族連れも参加していた。そこには文字通リタハリール=解放区が形成されていた。以下は、解放区で出会っ立人々のスケッチだ。(阪口浩一)
として彼の書く記事は読み応えがある。このように日本の若者がエジプトに飛び込み、そして現地からの息吹を伝えることはすばらしいことだ。こんな記事は大手の新聞ではまず見当たらない。エジプト在住の音楽家、堀江努さんがトランペットでエジプト国家を弾きながら人々と革命を祝った。「祝祭に花を添えた外国人によるエール」なのだ。彼は「どんな時でも自分のできることを」とエジプトに留まるそうだ。彼についての記事も読んで楽しい。が、ここで他の記事の一部を紹介しよう。
女性も多数参加した。ヒジャブを被ったファトマさんは、3人の子どもを連れて参加した。現在、4人目をお腹に宿していて妊娠7ケ月。小学校の非常勤教師をやっているという。子どもたちは物心ついた時から、警察官の汚職に接しながら育ちます。今回の民主化デモについても、子どもたちは理解し、支援しています」。
「ムバラク退陣!」のシュプレヒコールを必死で叫んでいたナディアさんは、高校生だ。先生に引率されて、クラスメートとともに参加した。「現在のままでは、若い世代は夢を見ることができません。私は希望の持てる社会を作っていきたい。そのためにも、ムバラクは退陣しなければならない」と語った。
休憩がてらに入ったマクハー(喫茶店)で会った女子大生ハナンさんは、市民革命の神髄を語ってくれた。それは、私の友人がエジプト民主化要求デモ連帯募金活動を思い立ち、「送り先を知らせて欲しい」と依頼してきたことを彼女に話したときだ。「海外からの援助は不要です。気持ちだけで十分だと伝えてください。可能なら、日本の人々と政府にエジプトの現状を知らせて欲しい。確かに、我々は裕福だとは言えません。しかし、タハリールを見てください。皆が必要な物を持ち寄り、共有しています。そこに集まる人々は、皆エジプトを愛しています。長年にわたる独裁政治により、皆が正直な意志を表明することを恐れていました。ですが、あなたも目撃しているように、人々は恐怖を打ち破りました。大きな最初の関門を突破したのです。外国からの支援を安易に受け取ってしまえば、規模は全く違うとはいえ、今の対米依存構造と同じで、相手に物が言えなくなってしまいます。外国からの金銭的、物質的援助は受け取るべきではないと思っています」。
掃除を手伝っていた大学生のマハムード君は、続けて語る−「大丈夫ですよ。たとえ貧乏でも、皆が納得して決定したことなら、我々エジプト人は自分たちで乗り越えていけます。僕は、今回のタハリールで自分の国の人たちが一層好きになりましたよ」。
この大学生たちの言葉は、その通りだと思う。エジプトの若者たちの勇敢さ、人々の相互扶助の精神を見れば、彼らは問題を乗り越えて行くだろう。エジプト革命序章。自らの力で勝ち取った人々は強い。革命は始まったばかりだ。
このように考えるエジプトの若者。それを伝える日本の青年。希望がある。
『人民新聞』とのつきあいは古い。訪中記を載せたのも『人民新聞』だった。二十年を経て、新たな中東の息吹を伝える『人民新聞』を青空学園で紹介する。このようにして人々の経験が積みあげられてゆく。この経験の積みあげが、その世の奥行きと、いざというときの人民の力の源だ。
青空学園は玄関の言葉で
活路を求め人は人間が生きる意味立ちかえり、固有の言葉で考えはじめる。固有性がともに輝く普遍の場は可能である。その場こそ文明の新しい段階である。
言葉において深く根づく人々こそ、言葉をこえて結ばれる。…。その言葉は近代西洋文明を見直し、新しい時代の深い普遍の礎となる。人間といのちの世界が輝きをとりもどすときは来る。
と書いてきた。タハリール広場はまさにその実践であった。言葉をもっと深めなければならない。われわれの歩みは遅い。同時代の息吹を力にして、ここで田を拓き耕し続けよう。