【いま(今)】[ima]
■食べ物「い(飯)[i]」を「む[mu]す(蒸す、結ぶ)」、つまり労働の結果得られた食べ物を食べる時、これが「いま」の意味である。働くことが食べるという今のときをもたらす。
◆「飯を食べる」から一般化され、「今」は何かのことがなされるときを意味する。ことがわられるとき。何かがなされるとき、その行為の続くときも意味する。「今」は時間の幅ではない。「こと」が顕現する間(ま)を指ししめす。
▼まさに何かあることがなされるとき。まのあたり。現在。 ◇『古事記』上・歌謡「伊麻(イマ)こそは我鳥(わどり)にあらめ」 ◇『日本書紀』歌謡一四「いま助(す)けに来(こ)ね」 ◇『万葉集』四三三七「水鳥の発(たち)のいそぎに父母に物言わず来て已麻(いま)ぞ悔しき」 ◇『万葉集』三二八「青丹によし寧樂の都は咲く花の薫ふが如く今盛りなり」
▽昔に対し、現在を含む間。い−ま(間)。今の時代。現代。現今。こんにち。 ◇『古事記』中・歌謡「我が心しぞいや愚(をこ)にして伊麻(イマ)ぞ悔しき」 ◇『万葉集』六九九「後にも逢わむ、今ならずとも」 ◇『古今集』仮名序「いまの世の中」
▽古いものに対して新しいこと。また、そのもの。 ◇『万葉集』三三九九「信濃道は伊麻(イマ)の墾道(はりみち)刈株(かりばね)に足踏ましなむ履(くつ)はけわが背」
▽ごく近い過去に関して用い、互いに経験や知識で知っているものをさしていう。ちょっと前。いましがた。 ◇それは今聞いたばかりの話だ。今の話をもう一度すると。 ◇『平家物語』六「今さけぶものは何ものぞ。きっと見て参れ」
▽ごく近い未来に関して。すぐに。今すぐに。直ちに。 ◇『古事記』中・歌謡「鵜飼が伴伊麻(イマ)助(す)けに来ね」 ◇『古今集』六九一「今来んといひしばかりに長月の」 ◇いま助けに行く。