【する】[suru]←[su]←[siu]
■[su]と[uru]からなる。[su]の不変部分[s]は、意志をもっておこなうこと一般を指示する。
「もの」の属性が具体的に現れるように、つまり「なるようにする」こと、つまり「なる」という人の力を越えたことを起こすためにひとがなしうることを意識的に「する」こと。
※なぜ「音がする」と「旅をする」が同じ「する」なのか。「音がする」は、「もの」のいろいろな属性のうち「音」という属性が現れる(一般的に「なる」)ことを意味する。「旅をする」は「旅」という状態(一般的に「こと」)にその者を置くことを意味している。もののある属性が現れ現実になることが基本である。
この基本が二つに分化した。「音をする」「旅がする」とは言わない。「もの」そのものが属性を表すときは「[属性]がする」といい、話者が意志を持ってことを行うときは「何々をする」という。
□タミル語<cey>に起源(e〜i 対応)。
▼ものの動きやけはいが現れる。 ◇『万葉集』三六二四「沖への方に楫(かぢ)の音須(ス)なり」 ◇『古今集』一三九「昔の人の袖の香ぞする」
▽ものの動きやけはいが心の中に現れる ◇『源氏物語』夕顔「あながちにたけたちき心地ぞする」 ◇そんな気がする。
▽現れた状態を示す。 ◇『源氏物語』桐壺「見てはうちゑまれぬべきさまのし給へれば」 ◇『行人』夏目漱石「とうとう根気負がして黙って仕舞った」
▽もののけはいが現れている(あるいは現れていない)状態が続くことから時間の経過を表す。同じく価値の持続から(金額などを表す語のあとに付けて)…の金額である。 ◇もう一週間もすればできるのだが。 ◇しばらくするとまた立ち止まった。 ◇「いくらした?」「千円もする本だった」-
【−むとす】いままさに…をしようとする。現代語でこの的確な言い方は廃れた。 ◇『竹取物語』「鬼のようなる物出きてころさんとしき」
▼あることが実現するように意志をもってことを行う。
▽ある動作や行為を行う ◇「旅をする」「野球をする」 ◇『古事記』下・歌謡「弾く琴にq梶iまひ)須流(スル)女常世にもかも」 ◇『万葉集』二「登り立ち国見をすれば」
▽ある状態を実現する。 ◇子どもを歌手にする。値を高くする。 ◇『万葉集』八一七「青柳はかづらに須(ス)べく成りにけらずや」 ◇『大鏡』五「男ならば、大臣の子とせよ」 ◇彼は会社の重役をしている。いすを踏み台にする。 ◇『浮雲』二葉亭四迷「見て見ぬ風をしてゐるらしい」
▼他の語についてその動作を実際にすることを表す。本来「くしゃみする」のように動作を表す語につく。安易に動詞化ができるので乱用される。
▽本来の用法 ◇値する、噂する、いたずらする。 ◇がっかりする。 ◇研究する、報告する。 ◇お誘いする・ ◇甘んずる、重んずる。 ◇害する、信ずる(「信じる」と熟している)。 ◇れっき(歴)とした家柄の人。
▽乱用例 ◇哲学する、科学する、勝利する。