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なる

【なる】[naru]

■[na]は「地」の意の古語「な」。「野(の)」[no]も同源。 [na]に[aru]、大地に芽生えることが基層の意味である。

□[na]はタミル語<nalam>に起源。

◆命そのものとしてたま(魂)が見えないところにこもり、新しいものが現れること。果物の実がなるように、一定の自然条件と時の経過によって、それまではなかったものが現れること。生命力がこもることによってはじめて「なる」。だから「なる」は価値あることとしてとらえられる。 これがなるの基本である。

「ものがなる」から何かのことが成就するつまり「ことがなる」、「ことになる」に展開した。

※自然の実を採集する段階から稲作に発展することで、「なる」ためには、一定の自然条件にさらに自然条件に対して人の手が加わる(田を耕す、等)ことが必要なこととして意識されるようになる。

▼ものがなる。 ◇『日本書紀』推古二一年一二月・歌謡「親無しに汝(なれ)奈理(ナリ)けめや」 ◇『蜻蛉日記』上「花さき、実なるまで」

▼ものになる ◇戦火で灰になる。 ◇委員になる。 ◇『万葉集』八一九「斯くしあらば梅の花にも奈良(ナラ)ましものを」 ◇『更級日記』「今は武蔵の国になりぬ」 ◇夕方になる。 ◇髪がしろくなった。

▼ことがなる。 ◇功成り名遂ぐ。 ◇『方丈記』「新都はいまだならず」 ◇なせば(ことが)なる。 ◇『万葉集』「たらちねの母に障(さや)らばいたづらに汝(いまし)もわれも事なるべしや」

▼ことになる。 ◇彼の手になる絵だ。 ◇なんとかなるさ。 ◇『竹取物語』「思ふことならで、世中に生きて何かせん」

−【ならない】

◆ものはなることに価値がある。ものがなるようにしなければならず(強制)、ものがなるのが妨げられるからしてはならない(禁止)のである。

▽「ねばならない、してはならない、してはいけない」のは「ねば(ものが)ならない、しては(ものが)ならない、しては(ものがならないので)いけない」からである。

▽「案じられてならない、いやでならない、いとしくてならない」の意味は「案じられて(ものが)ならない、いやで(ものが)ならない、いとしくて(ものが)ならない」である。

▽「風邪を引くといけない、強くなくてはいけない、=行けない」、「いけない」、「すまない」も同様である。「いく」「すむ」がいずれも「もの」が現れることによって安定した状態になることを意味していて、それが実現しないということ述べる。

−【なす】[nasu]

▼なるようにすること。現代語では「なす」を用いるよりは直接「する」で表す。 ◇『竹取物語』「おのがなさぬ子なれば、心にも従はずなんある」 ◇なせば成る。 ◇『落窪物語』四「越前守、今年なん代りけれど、国の事いとよくなしたりければ」 ◇『万葉集』九二八「もののふの八十伴(やそとも)の男は廬(いほり)して都成(なし)たり旅にはあれども」 ◇『源氏物語』手習「立とまりて火をあかくなして見れば」



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