【まなぶ(学ぶ)】[manabu]
■「まね(真似)[mane]」、「まねび(学び)」、などいずれも「な(名)[na]」を「ま(真)」、つまりその通りにすること、を原義にもつ。
◆興味や関心のあることを真似て再現する。「名」は単なる「名前」ではなく、そのものの本質、である。信頼し尊敬する相手のすべてを、自らその通りにできるようにしようとすること。
※「ならう」は、繰り返し練習することで身につける、の意味。
「真似」の動詞化で「まねぶ」の交替形。「まねぶ」が平安女流文学に多いのに対し、「まなぶ」は漢文訓読体や男性語として用いられることが多かった。活用は、上代から平安初期ごろまで上二段活用、その後、四段活用も行われたといわれるが、訓点関係では、後まで上二段活用が見られる。
「おしえる」は、教える側が相手をいとおしみ、自らが身につけていることを相手に渡そうとすることである。それに対して「まなぶ」は学ぶ相手を尊敬するがゆえに相手をまねようとするのである。実際の人と人の信頼と愛情が教え学ぶことの土台である。この言葉にはそのような意味が込められている。
▼まなぶ
▽教えられたとおりにまねて修得すること。 ◇『名語記』五「人のしわざをまなぶる、まね」 ◇『観智院本三宝絵』下「文をまなふるに、さとりあらたに」
▽ここから学問すること、教訓を学ぶことに展開した。 ◇先人の失敗に学ぶ。 ◇『今昔物語』二・二五「仏道に入りて法を学びよ」 ◇『徒然草』八五「驥をまなぶは驥のたぐひ、舜をまなぶは舜の徒也」 ◇『源氏物語』橋姫「年ごろまなびしり給へる事どもの深き心」
▼まねぶ
▽興味や関心のあること、他の者の言ったことやその口調をそっくりまねて再現する。見たり聞いたりしたことを、そっくり人に語り伝える。 ◇『霊異記』上・一九(興福寺本訓釈)「音(こゑ)を訛(よこなま)りて效(マネビ)読む」 ◇『落窪物語』二「かかる事なまねび給ひそ。かたはなり」
▽学問や技芸などを、手本をまね、教えを受けて身につける。 ◇『東大寺諷誦文平安初期点』「善を見ては殷を学(マネば)むと念ひ」 ◇『源氏物語』乙女「ふみのざえをまねぶにも」 ◇『梁塵秘抄』二「戯れ遊びの中にしも、尖(さき)らにまねびん人をして」