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みる

【みる(見る、看る、視る、観る、診る)】[miru]

■そのものとして定まる空間([ma])に「いる[iru]」ことを認識すること。「いる[iru]」ことそのものは見られてはじめて成立する。

□タミル語<miri>に起源。

◆目をむけて見ることによって世界を分節してつかみ、「もの」としてとらえ、ものが存在することを確認する。「聞く」のが「こと」であるのに対し、「見る」のはまず「もの」として存在を確認することでありる。そのうえでそのもののことを考えることまで意味するように発展する。

※何かを認知するのは、対象を対象として確定することと、確定したものをつかむことの両方で成立する。「みる」はこの意味での認知することそのものである。

▼目にとめる。目でものの存在を知る。 ◇「見るも無残な敗北」 ◇『古事記』中・歌謡「かもがと我が美(ミ)し子ら」 ◇『万葉集』二〇「あかねさす紫野行きしめ野行き野守は見ずや君が袖振る」。

▽ながめる。望む。 ◇『古事記』下・歌謡「潮瀬の波折(なをり)を美礼(ミレ)ば」 ◇『万葉集』四七四「昔こそよそにも見しか吾が妹子が」

▼見て判断する。 ◇顔色をみる。足もとをみる。 ◇『万葉集』八三九「降る雪と人の美流(ミル)まで梅の花散る」。

▽占う。予知する。 ◇手相をみる ◇『源氏』桐壺「そなたにてみれば、乱れうれふる事やあらむ」。

▽わかる。 ◇『弥勒上生経賛平安初期点』「聴といふは理を察(ミル)ぞ」

▽よく注意して調べる。観察する。 ◇「患者を診る」「味をみる」 ◇『竹取物語』「つばくらめをあまた殺してみるだにも腹になき物也」

▽人の気持や意志をためす。 ◇『平家物語』五「御辺の心をみんとて申などおもひ給か」

▼(ものの存在を確認せざるを得なくなるところから)何かのことに遭う。経験する。ある物事を身に受ける。 ◇馬鹿をみる。泣きをみる。 ◇『竹取物語』「かかるわびしき目を見ず」。

▽人と顔をあわせる。 ◇『万葉集』四一一六「月かさね美(ミ)ぬ日さまねみ」

▽男女の交わりをする。また、夫婦として暮らす。 ◇『竹取物語』「此女見では世にあるまじき心ちのしければ」。

▽世話をする。面倒をみる。 ◇両親(孫)をみる ◇『落窪物語』四「北の方をこそはみ奉り仕うまつらめ」

▼補助動詞。経験することからどうしについてその動作を経験することを意味する。

▽(動詞の連用形、または、それに助詞「て」を添えた形に付いて)意図して…する。 ◇『三四郎』夏目漱石「一回りしようじゃないかと女を誘ってみた」 ◇食べてみる ◇書き心地を調べるのに字を書いてみる ◇『土左日記』「男もすなる日記といふものを、女もしてみんとてするなり」

▽「…なら…」という条件を表すときは意図していなくても用いる。 ◇目が覚めてみるといい天気だった。 ◇咲いてみると思ったほどきれいでもなかった。 ◇帰ってみればこの有様だ。

−【みえる(見える)】「みる(見)」の自発・受身・可能を表す。

▽目にはいる。目にうつる。 ◇『古事記』中・歌謡「百千足る家庭(やには)も美由(ミユ)国の秀(ほ)も美由(ミユ)」 ◇『古今集』一六九「秋来ぬと目にはさやかに見えねども」

▽他から見られる。他に見せる。 ◇『竹取物語』「おはしましぬと人には見え給ひて、三日ばかりありて漕ぎかへり給ぬ」

▽よく見ることがある。見なれる。見つかる。 ◇『竹取物語』「此国に見えぬ玉の枝なり」

▽現れる。人が来る。また、手紙が来る。 ◇お客様が見えました ◇『蜻蛉物語』中「日暮るるほどに、文みえたり」

▽…と思われる。そう感じられる。 ◇とても小学生には見えない ◇一杯飲んでいると見えて ◇『竹取物語』「人の物ともせぬ所にまどひありけども、何のしるしあるべくも見えず」

▽文字に書かれる。書物に載る。 ◇聖書に見える言葉 ◇『平家物語』一「栴檀は二葉よりかうばしとこそみえたれ」



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