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わける

【わける(分ける、別ける)】[wakeru]←[waku]

◆ひとつのものを割って離すこと。

□タミル語<vaku><paku>に起源。

▼ひとつのものに筋目を入れて二つまたはそれ以上に離すこと。

▽一つのもの、一面にあるものに力を加えて、左右に押し開く。 ◇草むらを分けて登っていった。

▽別々に区切って分割する。 ◇『蜻蛉日記』上「宮の御桟敷の、ひとつづきにて、二間ありけるをわけて」 ◇『源氏物語』御法「後の世には同しはちすの座をもわけんと契かはしきこえて」 ◇『門』夏目漱石「髪の毛を長くして真ん中から分ける癖があった」

▽すき間を作る。 ◇『万葉集』四二九七「をみなえし秋萩しのぎさを鹿の露和気(ワケ)鳴かむ高円の野そ」(大伴家持) ◇『古今集』四七八「かすが野の雪まをわけて生いいでくる草のはつかに見えし君はも」

▽いくつかに割って配る。分配する。 ◇みんなでお菓子を分けなさい。 ◇『東大寺諷誦文平安初期点』「飢(やわ)しと申せば分(ワケ)て給ひし母氏は」

▽分け持つ。手分けをする。所属、役割などを別にする。 ◇『源氏物語』若菜上「御かたがたもさるべき事どもわけつつ、のぞみつかうまつり給ふ」

▽判断して見わける。判断して区別する。 ◇『太平記』九「何れを二王、何れを孫三郎とも分(ワケ)兼たり」

▽争いごとなどの仲裁や、是非のさばきを行う。 ◇『狂言記・内沙汰』「こんどの公事日に、両人ともに、参りませい。そのおりにわけてとらせう」

▽争っているものを、勝負がつかないとして、やめさせる。 ◇引き分ける。勝負を分ける。

−【わく】「わける」の古形。四段活用「わく」は精神的な働きとして、区別する、判別するの意、下二段活用「わく」、下一段活用「わける」は、押し分ける、かき分けるの意が主。

▼区別する。判断する。

▽対象・時期・場所などの違いによって扱いをかえる。差別する。 ◇『万葉集』四〇〇三「天そそり高き立山 冬夏と和久(ワク)こともなく白たへに雪は降り置きて」(大伴池主) ◇『正法眼蔵』辧道話「理鈍をわかず」

▽違いを識別する。物事を判断する。判別する。 ◇『万葉集』八二六「うちなびく春の柳とわが宿の梅の花とをいかにか和可(ワカ)む」 ◇『古今集』序「ちはやぶる神世には、歌の文字も定まらず、すなほにして、事の心わきがたかりし」

−【わけ(分、訳)】

▼分割・分配すること。

▽分けること。分配。 ◇『良寛歌』「自今以後納所(なっしょ)は君にまかすべし 二合三合はわけのよろしき」

▽食い余りの食物。食い残し。また、供物のおさがり。『史記抄』一一「なんぼ我にくいさいたる桃のわけをくれた」

▽芸娼妓などが、そのかせぎ高を抱え主と半々に分けること。また、その芸娼妓。『浮・好色一代女』六「分(ワケ)とは其花代宿とふたつに分るなるべし」

▽花代が五分(一匁の半分)の端女郎の称。そろり。北むき。分女郎。

▽勘定。支払い。『浮・好色二代男』二「当座払に万(よろづ)ケ様の分(ワケ)ぞかし」

▽村中の小区分。

▽相撲で、勝負が決まらず引き分けること。

▼(「訳」と書くことが多い)物事を判断すること。また、その判断した内容。

▽物事の違いなどを判別すること。区別。違い。 ◇『中華若木詩抄』中「乱世にならでは、君子小人のわけは、見へぬぞ」

▽事柄やことばなどの意味・内容。 ◇君が何を言っているのか訳が分からない。 ◇『虎清本狂言・泣尼』「だんぎせっぽうのわけをしらぬほどに」 ◇『開化の話し』辻弘想「我思ふ所をもて、自由の義(ワケ)を解かば、気随気儘謂にはあらず」

▽物事の道理。すじみち。 ◇『浄・用明天皇職人鑑』二「添ひ通さいではわけ立ず」 ◇『当世書生気質』坪内逍遙「ああいふ奴が本校に居っては、到底(つまり)本校の体面を汚す道理(ワケ)ぢゃ」

▽事情や理由。原因やいきさつ。 ◇それとこれとはわけが違う。わけもなく泣く。わけを説明する。

▽特に、情事やそのいきさつ。また、色の道に通じていること。 ◇『浮・好色一代男』六「太鞁女郎にも大形成(おほかたなる)わけは見ゆるし」



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