次: 整式と見るか整数と見るか
上: 整式と見るか関数と見るか
前: 関数値の符号[01慶応理工]
問題
次の実数係数の三次式を とする.
いま,二つの実数係数の整式 が次を満たすものとする.
このとき次のいずれかが成り立つことを示せ.
-
恒等的に等しい.
- 二つの整式 はともに定数である.
方針
解1
これがすべての で成立するので, か
かのいずれかは無数の で成立する.
が無数の で成立するとすれば, が の整式なのでは恒等的に等しい.
同様に
が無数の で成立し,したがって恒等的に成立するとする.
の次数が異なる場合,大きい方の次数を とすると
は 次の整式である.恒等的に0ではあり得ない.
の次数が等しい場合,それを 次として
,
と置く.このとき
となる.
実数 に対して であるからもし なら
これが恒等的に0になることはない.
ゆえに で,はともに定数である.□
解2
が定数でないとする. は実数係数の整式なので,
である.
これが が十分大きいすべての で成立する. は整式なので,恒等的に成立する.
次に
とする.
したがって はすべての に対して
次方程式
の解にいずれかに一致しなければならない.実数解は有限個なので
少なくとの一つの解で,が一致するような が無数にあるものがある.
は整式なので,恒等的にこの解に等しい,つまりも定数である.□
吟味
解2のように考えると,は任意の実数係数の整式で成立することがわかる.大切なことなので,恒等式の定義を書いておこう.
が についての整式であるとき,次の3つの命題は同値である.
またこのとき,等式 は 恒等式 であるという.
2式の次数の小さくない方をとする.
- と は同一の式である.つまり,次数が等しくかつ同じ次数の項の係数が等しい.
- 任意のの値に対しては同一の値をとる.
- 等式が異なる個のの値に対して成り立つ.
証明
-
-
-
は
次以下の整式である.
のあい異なる に対して,
であるから,因数定理より,
と因数分解される.
もし なら,左辺の次数は 以下であり,
右辺の次数は 以上となる.よって矛盾が起こる.
従って となりは式として0である.
と は同一の式である.
3つの条件は互いに他の2つの必要十分条件になっていることが示されているので,
題意が示された.□
次: 整式と見るか整数と見るか
上: 整式と見るか関数と見るか
前: 関数値の符号[01慶応理工]
Aozora Gakuen