next up previous 次: 確率計算の方法 上: 直接計算か漸化式か 前: 回数と確率[08京大理系甲乙]

個数と確率[98年京大理系後期]

問題     

$xy$ 平面上に $2n$ 個の点 $\mathrm{A}_i(i,1)$ $\mathrm{B}_i(i,2)$ ($i=1$,2,$\cdots$$n$) がある. 上下に隣り合う2点 $\mathrm{A}_i$$\mathrm{B}_i$ を結ぶ線分を「縦辺」($i=1$,2,$\cdots$$n$), 左右に隣り合う2点 $\mathrm{A}_i$ $\mathrm{A}_{i+1}$ および $\mathrm{B}_i$ $\mathrm{B}_{i+1}$ を結ぶ線分を「横辺」($i=1$,2,$\cdots$$n-1$) と言う. すべての横辺には,各辺独立に,確率 $p$ で右向きの矢印が, 確率 $1-p$$\times$ 印が描かれている. またすべての縦辺には常に上向きの矢印が描かれている.

このとき点 $\mathrm{A}_1(1,1)$ から出発して,矢印の描かれている辺だけを通り,矢印の方向に進んで, 点 $\mathrm{B}_n(n,2)$ に到達する経路が少なくとも1本存在する確率$Q_n$ を求めよ.


方針

1.
事象を排反な事象に場合分けして直接計算する.
2.
$n$のときと$n+1$のときの関係を調べ, 排反となる場合分けをして漸化式を立てる.


解1         辺 $\mathrm{B}_i\mathrm{B}_{i+1}$で最後の$\times$の位置で場合に分ける.ただし$\times$がない場合も考える.

  1. $\mathrm{B}_i\mathrm{B}_{i+1}\ (i=1,\ \cdots,\ n-1)$$\times$がない場合.辺 $\mathrm{A}_i\mathrm{A}_{i+1}\ (i=1,\ \cdots,\ n-1)$はいずれでもよい.この事象の確率は$p^n$である.
  2. 最後の$\times$が横辺 $\mathrm{B}_k\mathrm{B}_{k+1}$にある場合.辺 $\mathrm{B}_i\mathrm{B}_{i+1}\ (i=1,\ \cdots,\ k-1)$はいずれでもよく,横辺 $\mathrm{A}_i\mathrm{A}_{i+1}\ (i=1,\ \cdots,\ k)$はすべて→でなければならない.この場合$\times$が1カ所,→が$n-1$カ所あり,その他はいずれでもよいので,この事象の確率は$(1-p)p^{n-1}$である.

    $k=1,\ \cdots,\ n-1$に対してそれぞれ排反であるから,この場合の確率は $(n-1)(1-p)p^{n-1}$である.


\begin{displaymath}
∴\quad Q_n=p^n+(n-1)(1-p)p^{n-1}=p^{n-1}\{n(1-p)+p\}
\end{displaymath}

解2        

$Q_{n+1}$$Q_n$の漸化式を求める.

$i=n+1$までの点が合計$2(n+1)$個あるとする. 点 $\mathrm{A}_1(1,1)$ から出発して点 $\mathrm{B}_{n+1}(n+1,2)$への経路が存在する場合を 2つに分ける.

  1. $\mathrm{A}_n$を通るものが存在しない場合. 確率$Q_n-p^{n-1}$で点$\mathrm{A}_n$を通ることなく$\mathrm{B}_n$に至り, そこから確率$p$ $\mathrm{B}_{n+1}$にいく.よってこの事象の確率は

    \begin{displaymath}
(Q_n-p^{n-1})\times p
\end{displaymath}

  2. $\mathrm{A}_n$を通るものが存在する場合. 点$\mathrm{A}_n$に来る確率が$p^{n-1}$で, 横辺 $\mathrm{A}_n\mathrm{A}_{n+1}$ $\mathrm{B}_n\mathrm{B}_{n+1}$のいずれかが 矢線であればよく,その確率は $1-(1-p)^2=2p-p^2$である.よってこの事象の確率は

    \begin{displaymath}
p^{n-1}\times(2p-p^2)
\end{displaymath}

これは排反であるから

\begin{displaymath}
Q_{n+1}=(Q_n-p^{n-1})\times p+p^{n-1}\times(2p-p^2)
=pQ_n+(1-p)p^n
\end{displaymath}

これから

\begin{displaymath}
\dfrac{Q_{n+1}}{p^{n+1}}=
\dfrac{Q_n}{p^n}+\dfrac{1-p}{p}
\end{displaymath}

$Q_1=1$であるから


よって

\begin{displaymath}
Q_n=p^{n-1}\{n(1-p)+p\}
\end{displaymath}



Aozora Gakuen