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定点を通る曲線群

このように,座標幾何で恒等式の考え方は必須のものだ.その典型は次の例だ.曲線の式の係数に媒介変数が入ると,一連の曲線の集合ができる.これを曲線群という. この分野は次の二つのことが重要な問題になる.
  1. 二曲線の交点を通る曲線群の表示と応用.
  2. 曲線群の通過範囲を求める方法.
これらの問題では,題意を満たす点の存在と方程式の解の存在とを結びつけて考えることである. 要点を述べる.

二曲線の交点を通る曲線群

二つの曲線 $f(x,\ y)=0,\ g(x,\ y)=0$ に対して

\begin{displaymath}
f(x,\ y)+kg(x,\ y)=0 \quad \cdots \maru{2}
\end{displaymath}

は,始めの2曲線のすべての交点を通る曲線を表す. なぜか. $(\alpha,\ \beta)$を1つの交点とする.

\begin{displaymath}
f(\alpha,\ \beta)=0,\ g(\alpha,\ \beta)=0
\end{displaymath}

である.したがって次式が成り立つ.

\begin{displaymath}
f(\alpha,\ \beta)+kg(\alpha,\ \beta)=0
\end{displaymath}

これは曲線$\maru{2}$が交点 $(\alpha,\ \beta)$を通ることを示している.

ただし次の二点に注意しよう. 第一に曲線$\maru{2}$は交点を通る曲線をすべて表すわけではない. 第二に曲線$\maru{2}$$g(x,\ y)=0$ 自身は表せない.

  1. 二直線

    \begin{displaymath}
l_1:a_1x+b_1y+c_1=0 \quad ,\ \quad l_2:a_2x+b_2y+c_2=0
\end{displaymath}

    が点Pで交わるとき,

    \begin{displaymath}
(a_1x+b_1y+c_1)+k(a_2x+b_2y+c_2)=0
\end{displaymath}

    は,点Pを通る直線を表す.ただし $l_2$ は表せない.

    \begin{displaymath}
h(a_1x+b_1y+c_1)+k(a_2x+b_2y+c_2)=0
\end{displaymath}

    と二つの実数 $h,\ k$ を用いればPを通るすべての直線を表すことができる.
  2. 二つの放物線

    \begin{displaymath}
C_1:y=a_1x^2+b_1x+c_1 \quad ,\ \quad C_2:y=a_2x^2+b_2x+c_2
\end{displaymath}

    が二点P, Qで交わるとする.このとき

    \begin{displaymath}
(a_1x^2+b_1x+c_1-y)+k(a_2x^2+b_2x+c_2-y)=0
\end{displaymath}

    は点 P, Q を通る. $k=-\dfrac{a_1}{a_2}$なら1次式になるので直線, その他の場合は放物線を表す.
  3. 二円と直線

    \begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{lll}
C_1&:x^2+y^2+a_1x+b_1y+c_1=0 &...
...x+(b_1-b_2)y+c_1-c_2=0 & \cdots \maru{5}
\end{array} \right.
\end{displaymath}

    次のことが成り立つ.
    1. Dは点Pから $C_1,\ C_2$ への接線の長さが等しい点の軌跡である.
    2. BCDのうち二つが交われば他のものもその交点を通る.

例題 1.4  

$C:x^2+y^2=4$と直線$l:2x+y-2=0$の交点を通りかつ原点も通る円の方程式を求めよ.


解答     求める円を

\begin{displaymath}
x^2+y^2-4+k(2x+y-2)=0
\end{displaymath}

とおく.これが原点を通るので$-4-2k=0$.これから$k=-2$. よって円の方程式は

 ⇔ 

である. □


円と円,円と直線の交点を通る円はいつもこのように 元の二式と係数$k$などを用いて書けるのだろうか. それを考えるのが次の例題である.


例題 1.5  

二つの円$C_1,\ C_2$が次の方程式で与えられている.

\begin{eqnarray*}
C_1&:&x^2+y^2-1=0 \\
C_2&:&x^2-4x+y^2-4y+7=0
\end{eqnarray*}

(1)
$xy$平面上の 点$\mathrm{P}$から$C_1$へ引いた接線の接点を $\mathrm{T}_1$, 点$\mathrm{P}$から$C_2$へ引いた接線の接点を $\mathrm{T}_2$ とする. $\mathrm{PT}_1=\mathrm{PT}_2$ となるような点 $\mathrm{P}$ の軌跡を求めよ.
(2)
実数 $k$ に対し,

\begin{displaymath}
k(x^2+y^2-1)+x^2-4x+y^2-4y+7=0 \quad \cdots (*)
\end{displaymath}

と置く.これが円となる $k$ の範囲を求めよ.
(3)
$k$ が(2)の範囲にあるとき,この円を $D_k$ とする. (1)で求めた軌跡上の任意の 点 $\mathrm{P}$ から $D_k$ に引いた接線の接点を$\mathrm{S}$ とし, 点 $\mathrm{P}$ から $C_1$ へ引いた接線の接点を$\mathrm{T}_1$ する. このとき常に $\mathrm{PS}=\mathrm{PT}_1$ が成り立つことを示せ.
(4)
$xy$ 平面上の円 $C$ があって,(1)で求めた軌跡上の任意の 点$\mathrm{P}$から$C$に引いた接線の接点を$\mathrm{U}$とし, 点$\mathrm{P}$から$C_1$へ引いた接線の接点を$\mathrm{V}_1$する. このとき常に $\mathrm{PU}=\mathrm{PV}_1$ が成り立つならば 円$C$$(*)$の形に表すような実数 $k$ が存在することを示せ.

解答
(1)    2円の中心をそれぞれ $\mathrm{O_1},\ \mathrm{O_2}$ とする. $\mathrm{P}(X,\ Y)$ とおく.三平方の定理より,

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
\mathrm{O_1T_1}^2+\mathrm{PT_1}^2...
...{O_2T_2}^2+\mathrm{PT_2}^2=\mathrm{PO_2}^2
\end{array}\right.
\end{displaymath}
条件から

\begin{displaymath}
\mathrm{PO_1}^2-\mathrm{O_1T_1}^2=\mathrm{PO_2}^2-\mathrm{O_2T_2}^2
\end{displaymath}
つまり

\begin{displaymath}
X^2+Y^2-1=(X-2)^2+(Y-2)^2-1
\end{displaymath}

これを整理して$X+Y=2$. これを満たす点$(X,\ Y)$は二円の外部にあり, つねにそれぞれの円に接線が引ける.

(2)     $(*)$ を変形する. $k=-1$ なら直線なので, $k\ne -1$ とする.

\begin{displaymath}
\left(x-\dfrac{2}{k+1} \right)^2+ \left(y-\dfrac{2}{k+1} \right)^2
=\dfrac{k^2-6k+1}{(k+1)^2}
\end{displaymath}

これが円になるのは, $k^2- 6k+1>0,\ k \ne -1$ のとき.

\begin{displaymath}
∴ \quad k<3-2\sqrt{2},\ 3+2\sqrt{2}<k
\end{displaymath}

(3)    $D_k$ の中心を $\mathrm{O}_k$ とし, $\mathrm{P}(X,\ Y)$ とおく. 三平方の定理より,

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
\mathrm{O_1T_1}^2+\mathrm{PT_1}^2...
...hrm{O_kS}^2+\mathrm{PS}^2= \mathrm{PO_k}^2
\end{array}\right.
\end{displaymath}

\begin{eqnarray*}
\mathrm{PS}^2&=&\mathrm{PO_k}^2-\mathrm{O_kS}^2\\
&=&\left(X...
...&\dfrac{1}{k+1}\{ (k+1)(X^2+Y^2-1)-(X^2+Y^2-1)+X^2-4X+Y^2-4Y+7\}
\end{eqnarray*}

(1)より

\begin{displaymath}
-(X^2+Y^2-1)+X^2-4X+Y^2-4Y+7=0
\end{displaymath}

なので,

\begin{displaymath}
\mathrm{PS}^2=X^2+Y^2-1={\mathrm{PT}_1}^2
\end{displaymath}

である.

\begin{displaymath}
∴ \quad \mathrm{PS}=\mathrm{PT}_1
\end{displaymath}

(4)     $\mathrm{P}(X,\ Y)$ とし,

\begin{displaymath}
C:x^2-\alpha x+y^2-\beta y+\gamma=0
\end{displaymath}

とおく. $\mathrm{PU}=\mathrm{PV}_1$ より(1)と同様にして

\begin{displaymath}
X^2-\alpha X+Y^2-\beta Y+\gamma=X^2+Y^2-1
\end{displaymath}

これが直線 $X+Y=2$ と一致する. よって $\alpha,\ \beta,\ \gamma$ は0でない実数$h$を用いて

\begin{displaymath}
-\alpha =h,\ -\beta=h,\ \gamma+1=-2h
\end{displaymath}

と表される. これが$(*)$の形になるためには,

となればよいが,これを$h$で表すと

…@  …A


@が成立すればAも成立する. ゆえに より とおけばよい. この $k$ に対して確かに$C=D_k$ である. □
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