したがって指数を次のように定義することもできる.
を の原始根とすれば を法とする0でない任意の剰余系の
代表である整数 に対して
意味が明白なときは等号で表す.また「の値」というときは,厳密には を法とする剰余系の一つを指すが,その剰余系のある代表値で表すこともする. 底が定まっているときは省略してとも記すことにする.
『初等整数論講義』によれば,Jacobi は『Canon arithmeticus』(1839)において 1000 以下の 素数を法とする指数を計算している.Jacobi は計算を楽しんだのだろう.そして Cunninghana という人がこの Jacobi の表の検算をおこない,正誤表が数学雜誌 「Messenger of methematics, 46巻」(1916)に載っているそうである.
指数の理論の応用として,合同方程式の解の存在に関する次の定理を得る.
証明 を解くには を法とする原始根 をとって
逆に ならば, . ゆえに は で割りきれる. つまり が で割りきれ,二項合同方程式は解をもつ. 解があるとき解の数は 個である.□
この定理は今日では,有限群 がただ一つの元(原始根)で 生成される巡回群であること,およびその巡回群に関する二,三の補題で示される. ここでは『初等整数論講義』にしたがって,整数論らしい証明をおこなっている.
合同方程式 が解があるかないかにしたがって を の 「 べき剰余」,または「非剰余」という. もちろん,べき剰余か非べき剰余かは,同じ剰余系に属する二数では同じである. つまりべき剰余か非べき剰余かは を法とする剰余系に関することである. 0はつねに べき剰余である. である について言えば, のとき任意の が べき剰余である. のときは, が の倍数となる だけが べき剰余である. とおけば,指数が となる数が べき剰余である. したがって べき剰余は を法として 個の既約剰余類のなかの 個だけある.
実際,既約剰余系