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指数

定理 28 に述べたように $r$$p$ の原始根とすれば $a\not \equiv 0\quad (\bmod.\ p)$ である任意の整数 $a$ に対して

\begin{displaymath}
r^{\alpha}\equiv a\quad (\bmod.\ p)
\end{displaymath}

となる整数 $\alpha$ $0\le \alpha < p-1$ の範囲に必ず,しかもただ一つ 存在する.この $\alpha$$r$ を底としての $a$指数(index) といい,それを次のように表す.

\begin{displaymath}
\Ind_r(a)=\alpha
\end{displaymath}

指数 $\alpha$ $0\le \alpha < p-1$ の範囲にかぎる必要はない.一般に

\begin{displaymath}
r^s\equiv a\quad (\bmod.\ p)
\end{displaymath}

ならば

\begin{displaymath}
s\equiv \alpha\quad (\bmod.\ p-1)
\end{displaymath}

この $s$ なども指数とすれば, $a$ の指数は $p-1$ を法として一意に定まる.

\begin{displaymath}
\Ind_r(a)\equiv s\quad (\bmod.\ p-1)
\end{displaymath}

$a\equiv b\quad (\bmod.\ p)$ であることと, $\Ind_r(a)\equiv \Ind_r(b)\quad (\bmod.\ p-1)$ であることは同値である.

したがって指数を次のように定義することもできる.

$r$$p$ の原始根とすれば $p$ を法とする0でない任意の剰余系の 代表である整数 $a$ に対して

\begin{displaymath}
r^{\alpha}\equiv a\quad (\bmod.\ p)
\end{displaymath}

となる $\alpha$$p-1$ を法としてただ一つ存在する. つまり $\alpha$$p-1$ を法とする剰余系の代表となる. この剰余系を $r$ を底としての $a$ の「指数」といい, それを$\Ind_r(a)$と表す.

意味が明白なときは等号で表す.また「$\Ind_r(a)$の値」というときは,厳密には $p-1$ を法とする剰余系の一つを指すが,その剰余系のある代表値で表すこともする. 底が定まっているときは省略して$\Ind.\,a$とも記すことにする.

例 2.5.2        $p=13$ のとき.2は原始根である. $p$ を法とする剰余系の数 $a$ に対する底2の指数 $I=\Ind.\,a$ は,この節の冒頭の表より次のようになる.

\begin{displaymath}
\begin{array}{\vert c\vert rrrrrrrrrrrr\vert}
\hline
a...
...hline
I&0&1&4&2&9&5&11&3&8&10&7&6\\
\hline
\end{array}
\end{displaymath}



定理 29
     素数 $p$ を法として原始根 $r$ を底とするとき,

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
\Ind.\,ab\equiv \Ind.\,a+\Ind.\,b,\\ ...
...,a^n\equiv n\Ind.\,a\ .
\end{array}
\quad (\bmod.\ p-1)
\end{displaymath}

が成り立つ.■

証明     $\Ind.\,a=\alpha,\ \Ind.\,b=\beta$ とする.つまり

\begin{displaymath}
a\equiv r^{\alpha},\ \quad b\equiv r^{\beta}\quad \quad (\bmod.\ p)
\end{displaymath}

ゆえに

\begin{displaymath}
ab\equiv r^{\alpha+\beta}\quad (\bmod.\ p)
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴\quad \Ind.\,ab\equiv \alpha+\beta\equiv \Ind.\,a+\Ind.\,b\quad (\bmod.\ p-1)
\end{displaymath}

また

\begin{displaymath}
\Ind.\,a^n=\Ind.\,a\cdot a^{n-1}\equiv \Ind.\,a+\Ind.\,a^{n-1}\quad (\bmod.\ p-1)
\end{displaymath}

より,帰納法で

\begin{displaymath}
\Ind.\,a^n\equiv n\Ind.\,a\quad (\bmod.\ p-1)
\end{displaymath}

となる.□



『初等整数論講義』によれば,Jacobi は『Canon arithmeticus』(1839)において 1000 以下の 素数を法とする指数を計算している.Jacobi は計算を楽しんだのだろう.そして Cunninghana という人がこの Jacobi の表の検算をおこない,正誤表が数学雜誌 「Messenger of methematics, 46巻」(1916)に載っているそうである.

例 2.5.3        $p=13$ のとき. $7x\equiv 10\quad (\bmod.\ 13)$ を解こう. 底を2とする指数をとる.

\begin{displaymath}
\Ind.\,7+\Ind.\,x\equiv \Ind.\,10\quad (\bmod.\ 12)
\end{displaymath}

指数表から

\begin{displaymath}
11+\Ind.\,x\equiv 10\quad (\bmod.\ 12)
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴\quad \Ind.\,x\equiv -1\equiv 11\quad (\bmod.\ 12)
\end{displaymath}

指数表から $x\equiv 7\quad (\bmod.\ 13)$ .

指数の理論の応用として,合同方程式の解の存在に関する次の定理を得る.

定理 30
     $p$ を素数とし, $a\not \equiv 0\quad (\bmod.\ p)$ とする.

二項合同方程式

\begin{displaymath}
x^n\equiv a\quad (\bmod.\ p)
\end{displaymath}

に解があるための必要十分条件は $f=\dfrac{p-1}{(n,\ p-1)}$ とするとき

\begin{displaymath}
a^f\equiv 1\quad (\bmod.\ p)
\end{displaymath}

である. ■

証明     $x^n\equiv a\quad (\bmod.\ p)$ を解くには $p$ を法とする原始根 $r$ をとって


\begin{displaymath}
n\cdot\Ind_rx\equiv \Ind_ra\quad (\bmod.\ p-1)
\end{displaymath} (2.34)

を解けばよい. 今 $(n,\ p-1)=e$ とする.定理 12 から, この合同方程式 (2.34) が解を有するための必要十分条件は, $\Ind_ra$$e$ で割り切れることである. $\Ind_ra=\alpha$ とする. $\alpha$$e$ で割り切れるとき,$\alpha=eq$ とおけば,

\begin{displaymath}
a\equiv r^{eq}\quad (\bmod.\ p)
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴\quad a^f\equiv r^{efq}=r^{(p-1)q}\equiv 1\quad (\bmod.\ p)
\end{displaymath}

逆に $a^f\equiv 1\quad (\bmod.\ p)$ ならば, $r^{f\alpha}\equiv 1\quad (\bmod.\ p)$ . ゆえに $f\alpha$$p-1=ef$ で割りきれる. つまり $\alpha$$e$ で割りきれ,二項合同方程式は解をもつ. 解があるとき解の数は $e=(n,\ p-1)$ 個である.□



この定理は今日では,有限群 $K^{\times}$ がただ一つの元(原始根)で 生成される巡回群であること,およびその巡回群に関する二,三の補題で示される. ここでは『初等整数論講義』にしたがって,整数論らしい証明をおこなっている.


合同方程式 $x^n\equiv a\quad (\bmod.\ p)$ が解があるかないかにしたがって $a$$p$ の 「$n$ べき剰余」,または「非剰余」という. もちろん,べき剰余か非べき剰余かは,同じ剰余系に属する二数では同じである. つまりべき剰余か非べき剰余かは $p$ を法とする剰余系に関することである. 0はつねに $n$ べき剰余である. $a\not \equiv 0\quad (\bmod.\ p)$ である $a$ について言えば, $(n,\ p-1)=1$ のとき任意の $a$$n$ べき剰余である. $(n,\ p-1)=e>1$ のときは, $\Ind.\,a$$e$ の倍数となる $a$ だけが $n$ べき剰余である. $p-1=ef$ とおけば,指数が $0,\ e,\ 2e,\ \cdots,\ (f-1)e$ となる数が $n$ べき剰余である. したがって $n$ べき剰余は $p$ を法として$p-1$ 個の既約剰余類のなかの $f=\dfrac{p-1}{e}$ 個だけある.

例 2.5.4        $n=2,\ p=7$ とする. $e=2,\ f=3$ である.

実際,既約剰余系

\begin{displaymath}
1,\ 2,\ \cdots,\ 6
\end{displaymath}

のうち,2べき剰余(平方剰余)は

\begin{displaymath}
1,\ 4,\ 2
\end{displaymath}

の3個である.


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