証明
異なる素因数分解をもつガウス整数の集合を考える.
この集合に属するノルム最小のガウス整数をとする.
は相異なる二つの因数分解をもつ.それを
また,
のいずれも
のいずれとも
同伴でない.なぜなら,もし
と
が同伴なら,
これを約せば
よりノルムが小さいガウス整数で,
異なる素因数分解をもつものが得られ,
がそのような数のなかでノルム最小であることに反する.
とする.
と同伴な4数
,
,
,
のうちには,
との偏角の差が
以下のものがある.
それを
とする.
このとき,
が成り立つ.
ここでガウス整数を
の因数分解における因数
は
の倍数ではない.
なぜならもし
の倍数なら
が
の倍数となり互いに異なる素数であることに反する.よってこの因数分解に
は現れない.
一方は
よっての二つの因数分解は相異なる因数分解である.
なので,
が異なる二つの因数分解をもつ最小の自然数であることと矛盾した.
したがって異なる二つの因数分解をもつ自然数は存在しない.□
ガウス環の素数はどのようなものか.
証明
をガウス環
で因数分解しそれを
ノルムをとると
そうでなければ単数以外のノルムは であり,
のとき
と
が同伴数なら
は
のどれかと一致する.
とすれば,
は虚数なので
はない.
なら
で,このとき
となり,
なら
で,このとき
となる.
しかし,
は奇素数なのでこれらはあり得ない. □
のとき,その分解は
証明
一方が奇数で他方が偶数のとき,
において
と
の偶奇が一致するので,
が
で割り切れ,
は
で割り切れない.
必要性が示せた.
□
で割り切れるか割り切れないかによって「偶数」,「奇数」
と読ぶ.ガウス整数の2での剰余類は
証明 ガウス整数
では奇素数 がガウス環で分解されるか否かは何で決まるのか.
証明
がガウス素数のノルムであれば
となる.
が奇素数なので
と
の一方のみが偶数で他方が奇数になる.
したがって はガウス素数のノルムである.
のときの必要十分性が示されたので,
についての命題も成立する.
□
このことから「有理素数は,2か,または4を法として1に合同なときにかぎり,二つの平方数の和として一通りに書き表すことができる」ということがわかる.
本定理は平方剰余の第一補充法則を用いた.これを用いない初等的な大学入試問題がある.それを紹介しておきたい.2002年慶応大医学部問題(問題41)である.