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定理8によって
である.
は確かにいくらでも大きくなるのだが,しかしその大きさの程度はよりもずっと小さく
である.この二つを統一的な方法で示し,
定理8の別解を作る.それは解析的な方法である.
この証明のために次の等式を補題としてあらかじめ示しておこう.
補題 11
を相異なる素数とする.
実数
を越えない自然数のなかで
のいずれでも割り切れないものの個数
は次式で与えられる.
ただし
は
を超えない最大の整数を表す.
■
証明
に関する数学的帰納法で証明する.
のときは
のなかで の倍数は
だけある.したがって実数 を越えない自然数のなかで で割り切れないものの個数は
となり,等式(7.1)は成立する.
のときが成立するとする.
とし,さらに が追加されたとする.
このときは,さらに の倍数
を除かなければならない.そのうち が
で割り切れるものは
すでに除かれているので,新たに除くべきものの個数は,
を越えない整数のなかで
で割り切れないものの個数である.ゆえに求める個数は
ゆえに のときも成立し,題意が示された.□
さらに微積から補題をもう一つ.
証明
関数は単調減少なので
区間で
つまり
より
□
以上の準備をして定理64を証明しよう.
定理64の証明
- (1)
- 以下の素数にわたる積
を考える.
であるから
は,以下の素数とそのべきのみを因数にもつような数全体にわたる和
である.以下の正整数はもちろん以下の素数とそのべきのみを因数にもつような数であるから
|
(7.2) |
となる.
ここで補題12より,のときの右辺は発散する.
もし
が有限であれば,のときの左辺は
有限個の素数にわたる和となり収束する.
これは矛盾なので
が示された.
- (2)
-
と小さい方から個の素数が与えられているとする.
これらの素数はより小さいものとする.
以下の素数は,この個の素数と
以下の数でこれら個の素数で割り切れない数をあわせた数の一部である.
したがって
補題11の和の項数はである.
なので,あわせて
がなりたつ.
したがって
となる.であるから
ここでを
である最大のものにとる.このとき
のときである.したがって(1)で示したように
つまり
とあわせて
が示された.
□
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