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素数定理

チェビシフのこの証明からさらの半世紀後,1896年になってフランスの数学者アダマール(J.Hadamard)とプーサン(C.de la Vallée Poussin)によってほとんど同時に独立に

定理 66 (素数定理)

\begin{displaymath}
\pi(x)\sim \dfrac{x}{\log x}
\end{displaymath}

が示されたのだ.その証明には次の関数が本質的に用いられた.

リーマンの$\zeta $関数

$s$に対して

\begin{displaymath}
\zeta(s)=1+\dfrac{1}{2^s}+\dfrac{1}{3^s}+\dfrac{1}{4^s}+\cdots
=\sum_{n \in \mathbb{Z}}\dfrac{1}{n^s}
\end{displaymath}

リーマンの$\zeta $関数という. リーマンの$\zeta $関数は実数$s$$s>1$にあれば収束する. すべての自然数はただ一つの素因数分解をもつのであるから$s>1$のとき$\zeta(s)$

\begin{displaymath}
\zeta(s)=\prod_p\dfrac{1}{1-\dfrac{1}{p^s}}
\end{displaymath}

と素数にわたる積で表される.この積をオイラー積という. 逆にリーマンの$\zeta $関数がオイラー積と一致するということが,素因数分解の一意的な存在を示している.

定理64の証明は$\zeta(1)$が発散することから,素数が無数に存在することを示したのである.

自然数全体にわたる和が,素数全体にわたる積と一致する.このことは素数の分布を調べることと,$\zeta $関数の性質を調べることのあいだに深い関係がることを意味している.

\begin{eqnarray*}
\zeta(2)&=&1+\dfrac{1}{2^2}+\dfrac{1}{3^2}+\dfrac{1}{4^2}+\cd...
...{1}{2^4}+\dfrac{1}{3^4}+\dfrac{1}{4^4}+\cdots=\dfrac{\pi^4}{90}
\end{eqnarray*}

などの特別な値は初等的に知ることができる.この証明などは『数学対話』「円周率を表す」にある.

リーマンは$\zeta $関数を,複素関数として研究し時代を画する論文を残した.その中には今日もまだ未解決の問題が提起されている.$\zeta $は整数論できわめて重要であるばかりでなく,その他の分野でも頻繁に登場する.彼らの素数定理の証明はこのリーマンの$\zeta $関数を本質的に用いる.1949年になってセルバーグ(A.Selberg)が$\zeta $関数を用いない初等的な方法で示した.これらについては『数論初歩』の範囲をこえる.

青空学園では2005年〜2007年に数論の読者会をした.そこで『解析的整数論』(末綱恕一,岩波書店)に載っている素数定理の証明を紹介した.読書会に使った『数論I』の定理7.3 までは用いる.その他は出来るかぎり完結的に整理した.といっても,関数を中心に複素関数論を使うので,理解は難しい.それは『数学対話』「素数の分布」をたどれば読める.

素数については今日もまだ未解決な問題がたくさんあることを指摘し本節を終えなければならない.それにしても,この世界に素数があるということはなんと不思議なことなのだろう.

 


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