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4章

解答 11   問題11
(1)
(イ),(ロ)とも成り立たないとする.$S$の属する最大の数を$M$, 最小の数を$m$とする. このとき$m<0<M$が成り立っている.$M-m$$m-M$$S$に属するので, $M<M-m$または$m-M<m$が成り立つ. これは$M$の最大性または$m$の最小性に矛盾する. よって(イ),(ロ)のうちいずれか一方が成立する.
(2)
(イ)が成り立っているとする. $S$の要素で正で最小のものを$d$とする.

$S$$d$と異なる正の任意の要素$a$をとる.

\begin{displaymath}
qd\le a<(q+1)d
\end{displaymath}

となる自然数$q$をとる.$r=a-qd$とおく. $r>0$とする. $a-d \in S$であり,自然数$1\le j<q$に対して $a-jd \in S$なら $a-jd-d=a-(j+1)d \in S$なので,数学的帰納法で$r=a-dq\in S$である. $d$$S$の要素で正で最小のものであるという仮定に反する.よって$r=0$である. $S$のすべての要素は$d$の倍数である.

$S$に属する最大の要素を$md$とおく, $1<j\le m$の整数に対して$jd \in S$なら $jd-d=(j-1)d\in S$なので

\begin{displaymath}
md,\ (m-1)d,\ \cdots,\ d
\end{displaymath}

はすべて$S$に属する.要素の個数は, 0が$S$にあるかどうかを考え$m=n$$m=n-1$であり
\begin{displaymath}
S=\{nd,\ (n-1)d,\ \cdots,\ d\},\ \{(n-1)d,\ (n-2)d,\ \cdots,\ d,\ 0 \}
\end{displaymath}

のいずれかである. $a_1,\ a_2,\ \cdots,\ a_n$ の順序を適当に変えれば 初項が$d$または0,公差$d$の等差数列になる.

(ロ)の場合,すべての要素の絶対値をとって考えれば同様である.

※ 大小の順で並べ替えて示してもよい.

解答 12
  問題12
 自然数$j$に対して $jd \in G$なら $d+jd=(j+1)d \in G$なので,数学的帰納法によって
\begin{displaymath}
\{kd\ \vert\ k\ は自然数\ \}\subset G
\end{displaymath}

$G$の任意の要素$a$をとり,$a$$d$で割り商が$q$,余りが$r$とする.

\begin{displaymath}
a=dq+r
\end{displaymath}

$dq\in G$なので$r=a-dq\in S$である. ここで$r>0$とすると $d$$G$に属する正で最小の整数という仮定に反する.よって$r=0$である. $G$のすべての要素は$d$の倍数である.
\begin{displaymath}
G\subset \{kd\ \vert\ k\ は自然数\ \}
\end{displaymath}

が示され,題意が証明された.

解答 13   問題13    
  1. $x \ge y$ としてよい. $C(nx)=C(ny)$より$nx-ny$は1000の倍数である.
    \begin{displaymath}
nx-ny=n(x-y)
\end{displaymath}

    で,$n$と1000が互いに素なので,$x-y$ が1000の倍数である.

    よって $C(x)=C(y)$ である.

  2. (1)より, $C(0),C(n),C(2n),\cdots,C(999n)$はすべて異なる.

    つまり,集合 $\{C(0),C(n),C(2n),\cdots,C(999n)\}$は1000個の要素からなる. この集合は,集合 $\{0,1,\cdots,999 \}$ に含まれ,ともに1000個の要素からなる.

    \begin{displaymath}
∴\quad \{C(0),C(n),C(2n),\cdots,C(999n)\}=\{0,1,\cdots,999 \}
\end{displaymath}

    つまり,要素 $C(0),\ \cdots,\ C(999n)$ のどれかは1に一致する. すなわち$C(nx)=1$ となる0以上の整数 $x$ が存在する.
  3. $379x=1+1000y$となる整数解$(x,\ y)$を一組求める.
    \begin{eqnarray*}
1&=&397x-1000y=397x-(397\cdot2+206)y\\
&=&397(x-2y)-206y=...
...)=(15\cdot12+11)(2x-5y)+15(x-3y)\\
&=&15(25x-63y)+11(2x-5y)
\end{eqnarray*}

    $15\cdot3+11\cdot(-4)=1$なので
    \begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
25x-63y=3\\
2x-5y=-4
\end{array}
\right.
\end{displaymath}

    とおき,これを解く. $x=-267,\ y=-106$である.つまり

    \begin{displaymath}
397(-267)-1000(-106)=1
\end{displaymath}

    任意の解$(m,\ n)$,つまり$397m-1000n=1$を満たす整数の組に対し,
    \begin{displaymath}
397(m+267)-1000(n+106)=0
\end{displaymath}

    が成り立つ.

    397と1000は互いに素なので$m+267$は1000の倍数,これを$m+267=1000t$とおくと, $n+106=397t$となる.つまりすべての整数解$(x,\ y)$は,整数$t$を用いて

    \begin{displaymath}
(x,\ y)=(-267+1000t,\ -106+397t)
\end{displaymath}

    と表される.正で最小の$x$$t=1$のとき.したがって $C(397x)=1$となる0以上の整数$x$で最小のものは $x=1000-267=733$である. 検算
    \begin{displaymath}
C(733\cdot397)=C(291001)=1
\end{displaymath}

注意 4        受験数学でよく用いられる「引き出し論法」が(2)である. あわせてユークリッドの互助法によって解を構成する方法も(3)で行うので よく学んでおいてほしい.

解答 14   問題14   
(1)
$4m+6n=7$においてどのような整数 $m,\ n$ に対しても左辺は2で割り切れる. 一方右辺はつねに2で割ると1余る.ゆえにこの等式を満たす整数 $m,\ n$は存在しない.
(2)
$3m+5n=2$を満たすひと組の $(m,\ n)$ として $(-1,\ 1)$ がとれる.

任意の解$(m,\ n)$ に対して

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
3m+5n=2\\
3(-1)+5(1)=2
\end{array}
\end{displaymath}

で辺々引くと,
\begin{displaymath}
3(m+1)+5(n-1)=0
\end{displaymath}

3と5は互いに素なので, $m+1$ が5の倍数.これを $m+1=5t$ とおく.

このとき $n-1=-3t$ となる.つまり

\begin{displaymath}
(m,\ n)=(-1+5t,\ 1-3t)
\end{displaymath}

と表される.逆にこの形をしたものがもとの方程式を満たすことは明らか. ゆえにすべての解は
\begin{displaymath}
(m,\ n)=(-1+5t,\ 1-3t)\quad (tは任意の整数)
\end{displaymath}

(3)
背理法で示す.
\begin{eqnarray*}
r(k)=r(l)&\iff&ak-al が b の倍数\\
(a と b は互い...
...,\ l\le b-1より&&-(b-2)\le k-l\le b-2 \\
&∴&\quad k-l=0
\end{eqnarray*}

ゆえに対偶が示されたので,
\begin{displaymath}
k\ne l\quad ならば \quad r(k)\ne r(l)
\end{displaymath}

である.
(4)
二つの集合
\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
A=\{1,\ 2,\ \cdots,\ b-1\}\\
B=\{r(k)\vert k=1,\ 2,\ \cdots,\ b-1\}
\end{array}
\end{displaymath}

この $k$ に対して $r(k)=0$ なら $ak$$b$ の倍数. $a$$b$ は互いに素なので $k$$b$ の倍数となるが, $k=1,\ 2,\ \cdots,\ b-1$ よりあり得ない. したがって $r(k)$$b$ で割った余りでしかも0でないので
\begin{displaymath}
B\subset A
\end{displaymath}

一方(3)より
\begin{displaymath}
k\ne l\quad ならば \quad r(k)\ne r(l)
\end{displaymath}

なので, $k=1,\ 2,\ \cdots,\ b-1$ に対して $r(k)$ はすべて異なる. つまり集合 $B$ の個数は $b-1$ で,集合 $A$ の個数と等しい.
\begin{displaymath}
∴\quad A=B
\end{displaymath}

したがって $B$ の元のなかに
\begin{displaymath}
r(k)=1
\end{displaymath}

となるものがある.このとき
\begin{displaymath}
ak-1が b の倍数
\end{displaymath}

つまり $ak-1=bl$ となる $(k,\ l)$が存在した.

$(m,\ n)=(k,\ l)$ という解が存在した.

解答 15   問題15    
(1)

\begin{displaymath}
a(-ak)+(a^2+1)k=k\quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}

であるから,格子点$(-ak,\ k)$$L$上にある.
(2)
$(m,\ n)$$L$上の任意の格子点とする.つまり
\begin{displaymath}
am+(a^2+1)n=k\quad \cdots\maru{2}
\end{displaymath}

である. $\maru{2}-\maru{1}$をとる.
\begin{displaymath}
a(m+ak)+(a^2+1)(n-k)=0\quad \cdots\maru{3}
\end{displaymath}

$a$の約数は$a^2$の約数であり,$a^2+1$の約数ではありえないので $a$$a^2+1$は互いに素である.

したがって$\maru{3}$より$m+ak$$a^2+1$の倍数である. 整数$t$を用いて$m+ak=(a^2+1)t$とおける.このとき$n-k=-at$となる.

つまり $L$ 上の格子点は整数 $t$ によって,

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
m=-ak+(a^2+1)t\\
n=k-at
\end{array}
\right.
\end{displaymath}

と表される.逆にこのように表されるものが $L$ 上にあることは明らかである.

題意をみたす格子点が存在するのは,

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
m=-ak+(a^2+1)t>0\\
n=k-at>0
\end{array}
\right.
\end{displaymath}

をみたす $t$ が存在することと同値である.つまり
\begin{displaymath}
\dfrac{k}{a}>t>\dfrac{ak}{a^2+1}\quad \cdots\maru{4}
\end{displaymath}

ここで $k=a(a^2+1)$ のとき$\maru{4}$

\begin{displaymath}
a^2+1>t>a^2
\end{displaymath}

となる.よって条件をみたす整数 $t$ が存在せず, 題意をみたす $L$ 上の格子点も存在しない.
(3)
$k>a(a^2+1)$のとき$\maru{4}$の左辺から右辺を引くと,
\begin{displaymath}
\dfrac{k}{a}-\dfrac{ak}{a^2+1}=\dfrac{k}{a(a^2+1)}>1
\end{displaymath}

したがって条件をみたす $t$ がつねに存在し, 題意をみたす $L$ 上の格子点も存在する.
解答 16   問題16    
(1)
$k$を整数とし$3x+2y=k$とおく. これを満たす$0$以上の整数解$(x,\ y)$の個数を $k=0,\ 1,\ \cdots,\ 2008$$k$について加えればよい.

まず,$3x+2y=k$を満たすすべての整数の組を求める.

\begin{displaymath}
3k+2(-k)=k
\end{displaymath}

より任意の整数解$(x,\ y)$に対して
\begin{displaymath}
3(x-k)+2(y+k)=0
\end{displaymath}

2と3は互いに素なので,$x-k$は2の,$y+k$は3の倍数である. よって整数解$(x,\ y)$は整数$t$を用いて
\begin{displaymath}
x=k-2t,\ y=-k+3t
\end{displaymath}

と表せ,この形をしたものはすべて整数解である.

$x\ge 0,\ y\ge 0$という条件は

\begin{displaymath}
\dfrac{k}{3}\le t \le \dfrac{k}{2}
\end{displaymath}

と同値である. よって$k$に対しこの範囲にある整数$t$の個数が, $3x+2y=k$となる0以上の整数の組$(x,\ y)$の個数である. 負でない整数$m$を用いて$k$を場合に分け,個数を求める.
\begin{displaymath}
\begin{array}{lll}
&t\ の範囲&t\ の個数\\
k=6m?...
...rac{5}{3}\le t \le 3m+\frac{5}{2}
&m+1個\\
\end{array}
\end{displaymath}

一つの$m$に対し個数は$6m+5$個ある. $2008=6\cdot334+4$なので $m=0,\ 1,\ \cdots,\ 334$について$6m+5$を加え, 2009のときの個数 335 個を除けばよい.
\begin{eqnarray*}
∴\quad \sum_{m=0}^{334}(6m+5)-335
&=&6\cdot167\cdot335+5\cdot335-335\\
&=&(1002+4)\cdot335=337010\ (個)
\end{eqnarray*}

(2)
不等式は$3x+2y+z\le 60$と同値である. $3x+2y=k$となる一組の$(x,\ y)$に対し, $z$ $0\le z\le 60-k$の範囲に$60-k+1$個とれる. 組$(x,\ y)$の個数に$z$の個数を乗じたものが, $3x+2y=k$かつ$3x+2y+z\le 60$となる整数の組 $(x,\ y,\ z)$の個数である.
\begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
k=6mのとき&(m+1)(60-6m+1)個\\
k...
...)個\\
k=6m+5のとき&(m+1)(60-6m-4)個\\
\end{array}
\end{displaymath}

これを加える.
\begin{displaymath}
(m+1)(300-30m-9)+m(60-6m)=-36m^2+321m+291
\end{displaymath}

$m=0,\ \cdots,\ 9$についてこれを加え, $3x+2y=60$とき(このとき$z$は0のみ)の$11$個を加える.

\begin{eqnarray*}
∴\quad \sum_{m=0}^9(-36m^2+321m+291)+11
&=&-6\cdot9\cdot...
...ot19 +321\cdot45+2910+11\\
&=&-10260+14445+2921=7106\ (個)
\end{eqnarray*}

解答 17   問題17    

(1)      $f(m,\ n)=k$,つまり
\begin{displaymath}
m^2-mn+n^2-k=0
\end{displaymath}

$m$の2次方程式である.$m$が実数となることが必要なので, $m$の2次式としての判別式を$D$とすると$n$
\begin{displaymath}
D=n^2-4(n^2-k)=-3n^2+4k\ge 0
\end{displaymath}

を満たさなければならない.これから $0\le n^2\le \dfrac{4k}{3}$となり, $n$は有限個である. 整数$n$に対して整数$m$は多くても2個しかないので$X(k)$は有限集合である.

$k=1$のとき, $0\le n^2\le \dfrac{4}{3}$より $n=0,\ \pm 1$. それぞれ$m$を求めることにより次のようになる.

\begin{displaymath}
X(1)=\{(1,\ 0),\ (-1,\ 0),\ (0,\ 1),\ (0,\ -1),\ (1,\ 1),\ (-1,\ -1)\}
\end{displaymath}

(2)
\begin{displaymath}
f(m,\ n)=m^2-mn+n^2=k
\end{displaymath}

において$k$が偶数とする. $m$$n$がともに奇数なら$f(m,\ n)$は奇数, $m$$n$の一方が奇数,一方が偶数なら$f(m,\ n)$は奇数となるので, 整数解があればそれはともに偶数である.

$k=2$のとき $0\le n^2\le \dfrac{8}{3}$.この範囲の偶数は$n=0$のみで, このとき$m^2=2$より解なし. $X(2)$の個数は0である.

$k=4$のとき.$m$$n$も偶数なので$m=2p$$n=2q$とおくと

\begin{displaymath}
m^2-mn+n^2=4p^2-4pq+4q^2=4
\end{displaymath}

つまり$p^2-pq+q^2=1$.(1)からこれを満たす整数の組$(p,\ q)$は6組あり, それに対する$(2p,\ 2q)$のみが$f(m,\ n)=4$の解なので, $X(4)$の個数は6である.

(3)     (2)から $f(m,\ n)=2^r\ (r\ 自然数)$の解はともに偶数である. $m=2p$$n=2q$とおくと

\begin{eqnarray*}
&&f(m,\ n)=m^2-mn+n^2=2^r\\
&\iff&f(2p,\ 2q)=4p^2-4pq+4q^2=2^r\\
&\iff&f(p,\ q)=p^2-pq+q^2=2^{r-2}
\end{eqnarray*}

である. これより,集合$X(2^r)$の要素の個数と集合$X(2^{r-2})$の要素の個数は等しい, (2)から集合$X(2)$の要素の個数は0,集合$X(2^2)$の要素の個数は6個なので, $X(2^r)$の要素の個数は$r$が奇数なら0,偶数なら6である.

注意1      $r$が奇数のとき$X(2^r)$の要素の個数が0であることは次のように直接示せる.

整数$n$に対して$m$が整数になるために, 判別式$D$が平方数であることが必要である. $k=2^r$のとき,

\begin{displaymath}
D=n^2-4(n^2-k)=-3n^2+2^{r+2}=N^2
\quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}

とおく. $\maru{1}$の両辺を3で割った余りを考える.

右辺$N^2$を3で割ると,$N$が3の倍数なら余りは0, $N=3s\pm 1$と表せるとき余りは1である.

一方,2のべきは,偶数べきなら $2^{2l}=(3+1)^l$より二項定理から 3で割った余りは1である.これから奇数べきなら余りは2である. よって$r$が奇数なら$\maru{1}$となる$n$$N$は存在しない.


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Aozora
2015-03-02