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オイラー=ラグランジュ方程式の導出

南海  $ T $ を定める被積分関数 $ \sqrt{\dfrac{1+{y'}^2}{2gy}} $ は, $ y $ と $ y' $ の関数で $ x $ は現れない. しかし一般には, $ y $ と $ y' $ とそして $ x $ とで表される関数の定積分を考えなければならないことが多い. また実際,この3つで決定される物理量は他にもあり,この被積分関数を, ラグランジュ(Lagrange)にちなんだ記号であるが, \[ L(y,\ y',\ x) \] と書くことが多い. $ L $ の形が与えられ,関数 $ y $ を変化させるとき,定積分 \[ \int_{0}^{a}L(y,\ y',\ x)\,dx \] が最大,あるいは最小になる $ y $ を決定すること,と問題を一般化することが出来る. 最大や最小になるということは, $ y $ の変化に対して $ L $ が極大,あるいは極小となときであり, $ y $ の変化に対する $ L $ の変化率がその $ y $ で0になることが必要である.

このようにして$y$を求める方法のことを変分法といい. 変分法を研究する学を変分学という.

一般に,極となるための$y$に関する必要十分条件は,たいへん難しい. しかし,極を与える関数であるための必要条件は,次のように微分方程式で記述することができる.

$ \delta(0)=\delta(a)=0 $ となる微分可能な任意の関数 $ \delta(x) $ をとる. そして, $ \epsilon $ を実数とし, \[ Y(x)=y(x)+\epsilon\delta(x) \] とおく.曲線 $ Y=Y(x) $ もまた原点と点 $ (a,\ h) $ を結ぶ曲線の方程式である. $ y $ が極を与える関数であるためには, \[ \dfrac{d}{d\epsilon}\int_{0}^{a}L(Y,\ Y',\ x)\,dx \left| \begin{array}{l} {}\\ _{\epsilon=0} \end{array} \right. =0 \] となることが必要である. 以下の計算は,『 解析基礎 』−「 多次元微分 」などを参照のこと.
\begin{eqnarray*} \dfrac{d}{d\epsilon}\int_{0}^{a}L(Y,\ Y',\ x)\,dx&=& \int_{0}^{a}\dfrac{d}{d\epsilon}L(y(x)+\epsilon\delta(x),\ y'(x)+\epsilon\delta'(x),\ x)\,dx\\ &=&\int_{0}^{a}\left\{\dfrac{\partial L}{\partial Y}\delta(x)+\dfrac{\partial L}{\partial Y'}\delta'(x)\right\}\,dx \end{eqnarray*}
第2項を部分積分する. $ \delta(0)=\delta(a)=0 $ より \[ \int_{0}^{a}\dfrac{\partial L}{\partial Y'}\delta'(x)\,dx =\biggl[\dfrac{\partial L}{\partial Y'}\delta(x)\biggr]_{0}^{a} -\int_{0}^{a}\dfrac{d}{dx}\dfrac{\partial L}{\partial Y'}\delta(x)\,dx =-\int_{0}^{a}\dfrac{d}{dx}\dfrac{\partial L}{\partial Y'}\delta(x)\,dx \] となる.よって, \[ \dfrac{d}{d\epsilon}\int_{0}^{a}L(Y,\ Y',\ x)\,dx =\int_{0}^{a}\left(\dfrac{\partial L}{\partial Y}-\dfrac{d}{dx}\dfrac{\partial L}{\partial Y'}\right)\delta(x)\,dx=0 \] ここで $ \epsilon=0 $ のとき $ Y=y,\ Y'=y' $ なので, $ \epsilon\to 0 $ をとると, \[ \int_{0}^{a}\left(\dfrac{\partial L}{\partial y}-\dfrac{d}{dx}\dfrac{\partial L}{\partial y'}\right)\delta(x)\,dx=0 \] が任意の $ \delta(x) $ に対して成立しなければならない.よって \begin{equation} \dfrac{\partial L}{\partial y}-\dfrac{d}{dx}\dfrac{\partial L}{\partial y'}=0  \cdots\cdots (2) \end{equation} が必要である.ただしここで次の補題を用いている.

補題 1 (変分法の基本補題)

連続関数 $ \varphi(x) $ が, $ \delta(a)=\delta(b)=0 $ を満たす任意の連続関数に対して \[ \int_a^b\varphi(x)\delta(x)\,dx=0 \] を満たすなら, $ \varphi(x) $ は恒等的に0である.■

これは証明が必要なことであるが,ここではそれを承認する.

微分方程式(2)をオイラー=ラグランジュ方程式という.


AozoraGakuen
2016-11-06