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素数定理

南海   定理8は定理7の(2)の別証明になっている.

拓生 

\begin{displaymath}
\dfrac{c_1}{\log x}<\dfrac{\pi(x)}{x}<\dfrac{c_2}{\log x}
\end{displaymath}

ですから,$x\to \infty$のとき,はさみうちの原理によって $\dfrac{\pi(x)}{x}\to 0$である.

南海   チェビシェフはさらにこの$c_1,\ c_2$を調べ,

\begin{displaymath}
0.92\dfrac{x}{\log x}<\pi(x)<1.11\dfrac{x}{\log x}
\end{displaymath}

まで示した.またもし $\displaystyle \lim_{x \to \infty}\dfrac{\pi(x)\log x}{x}$が収束するならば, それは1であることも示した.

チェビシェフのこの証明からさらの半世紀後,1896年になってフランスの数学者アダマール(J.Hadamard)と プーサン(C.de la Vallée Poussin)によってほとんど同時に独立に

\begin{displaymath}
\lim_{x \to \infty}\dfrac{\pi(x)\log x}{x}=1
\end{displaymath}

が示されたのだ.これを素数定理という. 彼らの方法はリーマンの$\zeta$関数を用いるきわめて難しいものだった. 1949年になってセルバーグ(A.Selberg)が$\zeta$関数を用いない初等的な方法で示した.

素数については今日もまだ未解決な問題がたくさんある.この世界に素数があるということは なんと不思議なことなのだろう.

さて,青空学園では2005年〜2007年に数論の読者会をした.そこで,私が『解析的整数論』(末綱恕一,岩波書店)に載っている素数定理の証明を紹介した.読書会に使った『数論I』の定理7.3 までは用いる.その他は出来るかぎり完結的に整理した.といっても, 関数を中心に複素関数論を使うので,理解は難しい.あくまで参考にするということで,それをここに紹介する.


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