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射影写像

配景写像と射影写像

射影平面$P^2$の1次元部分空間${P_1}^1$${P_2}^1$,およびそれらの上にない1点$P^0$が与えられたとき,${P_1}^1$から${P_2}^1$への写像が次のように定まる.

点を0次元射影空間とみるときは大文字で,射影空間の要素とみるときは小文字で表す.

\begin{displaymath}
P_1\ \to \ P_2\ ;\ p\ \mapsto (p\vee P^0)\cap P_2
\end{displaymath}

つまり,射影空間${P_1}^1$の点$p$に対して, 直線$p\vee P^0$と直線$P_2$の交点を対応させるのである.
これを一般化して射影空間$P$の部分空間から同一次元の部分空間への写像を定義する.そのために二つの命題を示す.

命題 33        $n$を2以上の整数とし,射影空間$P^n$の任意の部分空間 ${P_1}^r,\ {P_2}^r\ (0\le r \le n))$に対して,それらと共有点をもたない部分空間${P_0}^{n-r-1}$をとる. $x$${P_1}^r$の点とする.このとき

\begin{displaymath}
\dim\{(x\vee {P_0}^{n-r-1})\cap{P_2}^r\}=0
\end{displaymath}

である. ■

証明      次元定理から

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
\dim({P_0}^{n-r-1}\vee{P_2}^r)=n-r-1+r-...
...\
\dim(x\vee {P_0}^{n-r-1})=0+n-r-1-(-1)=n-r
\end{array}
\end{displaymath}

である.命題16より

\begin{displaymath}
(x\vee {P_0}^{n-r-1})\vee{P_2}^r
=x\vee ({P_0}^{n-r-1}\vee{P_2}^r)
\end{displaymath}

なので

\begin{displaymath}
\dim\{(x\vee {P_0}^{n-r-1})\vee{P_2}^r\}
=\dim\{x\vee ({P_0}^{n-r-1}\vee{P_2}^r)\}
=n
\end{displaymath}

である.よって

\begin{eqnarray*}
&&\dim\{(x\vee {P_0}^{n-r-1})\cap{P_2}^r\}\\
&=&\dim(x\vee ...
...^r)
-\dim\{(x\vee {P_0}^{n-r-1})\vee{P_2}^r\}\\
&=&n-r+r-n=0
\end{eqnarray*}

である.  □

命題 34        命題33と同じ設定で, ${P_1}^r$の点$x$に対して${P_2}^r$の点 $(x\vee {P_0}^{n-r-1})\cap{P_2}^r$を対応させる. この対応は${P_1}^r$から${P_2}^r$への一対一対応である.

この対応で${P_1}^r$の基本図形$\Sigma$${P_2}^r$の基本図形$\Sigma'$に対応する. ■

証明     ${P_2}^r$から${P_1}^r$への写像が同様に定義される. このとき命題20によって

\begin{eqnarray*}
&&[\{(x\vee {P_0}^{n-r-1})\cap{P_2}^r\}\vee {P_0}^{n-r-1}]\ca...
...e {P_0}^{n-r-1})\cap{P_1}^r
=x\vee({P_0}^{n-r-1}\cap{P_1}^r)=x
\end{eqnarray*}

となり,これが逆写像であることが示された. 逆写像の存在により,一対一対応である.

${P_1}^{r}$の2点$x_1,\ x_2$をとる.この2点がそれぞれ$y_1,\ y_2$と対応しているとする. 次元定理から

\begin{displaymath}
\dim\{(x_1\vee x_2)\vee {P_0}^{n-r-1}\}=1+n-r-1-(-1)=n-r+1
\end{displaymath}

である.命題16より

\begin{displaymath}
\{(x_1\vee x_2)\vee {P_0}^{n-r-1}\}\vee{P_2}^r
=(x_1\vee x_2)\vee ({P_0}^{n-r-1}\vee{P_2}^r)
\end{displaymath}

なので

\begin{displaymath}
\dim[\{(x_1\vee x_2)\vee {P_0}^{n-r-1}\}\vee{P_2}^r]
=\dim\{(x_1\vee x_2)\vee ({P_0}^{n-r-1}\vee{P_2}^r)\}
=n
\end{displaymath}

である.よって

\begin{eqnarray*}
&&\dim[\{(x_1\vee x_2)\vee {P_0}^{n-r-1}\}\cap{P_2}^r]\\
&=...
...(x_1\vee x_2)\vee {P_0}^{n-r-1}\vee{P_2}^r\}\\
&=&n-r+1+r-n=1
\end{eqnarray*}

である. $y_1,\ y_2\in \{(x_1\vee x_2)\vee {P_0}^{n-r-1}\}\cap{P_2}^r$ なので,射影幾何の公理I)から

\begin{displaymath}
y_1\vee y_2=\{(x_1\vee x_2)\vee {P_0}^{n-r-1}\}\cap{P_2}^r
\end{displaymath}

となる.つまりこの対応は直線を直線にうつす一対一対応である. よって基本図形を基本図形にうつす. □

定義 17 (配景写像)        命題34の一対一対応を,${P_0}^{n-r-1}$を中心とする ${P_1}^r$から${P_2}^r$への射影,あるいは配景写像という. 必要なときはこの写像を $\pi_{P_2P_1}(P_0)$と表す. 基本図形$\Sigma$と基本図形$\Sigma'$が配景写像で対応するとき二つの基本図形は 配景的関係にあるといい, $\Sigma\doublebarwedge \Sigma'$と表す.  ■

例 3.1.3        $n=3$の場合,二種の配景写像がある. $r=2$ ${P_0}^0,\ {P_1}^2$のときと, $r=1$ ${P_0}^1,\ {P_1}^1$のときである. $r=2$ ${P_0}^0,\ {P_1}^2$のときは,基本図形として直線$\Sigma$$\Sigma'$を入れた. $r=1$ ${P_0}^1,\ {P_1}^1$のときは,基本図形を省いた.

定義 18 (射影写像)        有限個の配景写像の合成で表される$r$次元部分空間から$r$次元部分空間への一対一対応を射影写像という. 基本図形$\Sigma$と基本図形$\Sigma'$が射影写像で対応するとき二つの基本図形は 射影的関係にあるといい, $\Sigma\barwedge \Sigma'$と表す.  ■

注意 3.1.2        $n$次元射影空間の部分空間$P^r$の配景写像の定義17$r=n$にとると, ${P_0}^{n-r-1}$は空集合となり,この場合の配景写像は恒等写像である. $P^n$自身の,恒等写像ではない射影座標の定義は,まだなされていない.

命題 35        2直線$l,\ g$上にそれぞれ相異なる3点 $p_1,\ p_2,\ p_3$ $q_1,\ q_2,\ q_3$がある. このとき, $\varphi(p_i)=q_i\ (i=1,\ 2,\ 3)$となる射影写像 $\varphi:l \to g$が存在する. ■

証明

(1)     $l\ne g$$p_1=q_1$のとき.

     公理II)によって,$p_2\vee q_2$$p_3\vee q_3$は交わる. 交点を$o$とすれば, $p_1,\ p_2,\ p_3$ $q_1,\ q_2,\ q_3$$o$を中心とする配景写像で対応する.つまり, $\pi_{gl}(o)(p_i)=q_i\ (i=1,\ 2,\ 3)$である. $p_i=q_i\ (i=2,\ 3)$のときも同様.
(2)      $l\ne g$ $p_i\ne q_i\ (i=1,\ 2,\ 3)$ のとき.

     2直線$l$$p_1\vee q_1$で定まる平面上に, $q_1$を通り$l$$g$と異なる直線$h$を引く. $p_1\vee q_1$上の点$o_1$をとり, $o_1\vee p_2$$o_1\vee p_3$$h$の交点を$r_2,\ r_3$とする. (1)によって点$o_2$$o_2$を中心とする配景写像で $q_1,\ r_2,\ r_3$ $q_1,\ q_2,\ q_3$に対応させるもの$\pi_{gh}(o_2)$が存在する. この合成 $\pi_{gh}(o_2)\circ\pi_{hl}(o_1)$$\varphi$とすれば, 射影写像$\varphi$ $p_1,\ p_2,\ p_3$ $q_1,\ q_2,\ q_3$は対応する.

(3)     $l=g$のとき.

$l$上にない点$o$$l$と異なる直線$h$をとる. $o$を中心とする$l$から$h$への配景写像で $p_1,\ p_2,\ p_3$と対応する点を $r_1,\ r_2,\ r_3$とする. $r_1,\ r_2,\ r_3$ $q_1,\ q_2,\ q_3$は射影写像で対応するので,この場合も成立する. □

命題 36        $P^n$の異なる2直線$l,\ g$の間の任意の射影写像は, 2次元または3次元部分空間における点を中心とする配景写像の結合として表される. ■

証明      $l$$g$の次元が1なので$\dim(c)=n-2$なる$c$に対する 配景写像$\pi_{gl}(c)$について示せばよい.

(1)     $l\cap g \ne \emptyset $のとき. $\dim(l \vee g)=2$.この結果

\begin{eqnarray*}
\dim(c\cap(l \vee g))
&=&\dim(c)+\dim(l \vee g)-\dim(c\vee(l \vee g))\\
&=&n-2+2-n=0
\end{eqnarray*}

より $c\cap(l \vee g)$は点.この点を$p$とする. $x\in l$に対して $(x\vee c)\cap g=(x\vee p)\cap g$ なので $\pi_{gl}(c)=\pi_{gl}(p)$である.

(2)     $l\cap g =\emptyset $のとき. このとき $\dim(l\vee g)=1+1-(-1)=3$である. したがって

\begin{eqnarray*}
\dim(c\cap(l \vee g))
&=&\dim(c)+\dim(l \vee g)-\dim(c\vee(l \vee g))\\
&=&n-2+3-n=1
\end{eqnarray*}

となり $c\cap(l \vee g)$は直線である.これを$k$とおく. $\pi_{gl}(c)$で対応しない$l$$g$の点$x\in l$$y\in g$をとる. 直線$x\vee y$$h$とおく. さらに $p=k\cap(l \vee h)$ $q=k\cap(h \vee g)$とおく. (1)と同様に考え

\begin{displaymath}
\pi_{gl}(c)=\pi_{gl}(k)=\pi_{gh}(k)\circ\pi_{hl}(k)
=\pi_{gh}(q)\circ\pi_{hl}(p)
\end{displaymath}

である. □

デザルグの定理

有限次元射影空間$P^n$をとる.

射影幾何の公理から展開するかぎり,$n=1$の1次元射影空間は,それだけではまったく身動きできない.公理II)が,直線がより次元の高い空間におかれていることが前提だからだ.$n=1$のとき,公理II)は自明な形で成立するだけである.1次元射影空間は,射影幾何の公理からそれ自身の内部で論を展開することはできない.

$n=2$のときはどのようになるか.2次元射影空間の内部では次のデザルグの定理が証明できない.つまりデザルグの定理は公理系からの帰結とはならない.2次元のなかだけで論を進めようとすれば,デザルグの定理を公理に加えなければならない.デザルグの定理を公理に加えることは,『射影幾何学』[35]の202頁にあるように,2次元射影空間が3次元空間のなかにおかれていると仮定するのと同値である.あるいは,『射影幾何学』[35]18頁にあるように,公理系を満たしデザルグの定理の成立しない2次元射影幾何を構成することもできる.

次元が小さいと,このように特別なことが起こる.個別性を研究し,どこまでが一般的であって,どこからが次元に固有なことなのかを明らかにすることは重要なことではある.しかしわれわれは歴史的に3次元空間内で考えたことを,公理的に裏づけるという立場から進んできたので,今後,射影空間の次元$n$$n\ge 3$であるものとする.


定理 4 (デザルグの定理)        $P^n$の3点よりなる二組 $p_1,\ p_2,\ p_3$ $q_1,\ q_2,\ q_3$はそれぞれ独立であり,条件

(i)
$p_i\ne q_i\ (i=1,\ 2,\ 3)$
(ii)
$p_i\vee p_j\ne q_i\vee q_j\ ((i,\ j)=(1,\ 2),\ (2,\ 3),\ (3,\ 1))$
を満たすとする.このとき次の二つの命題は同値である.
甲:
3直線 $p_i\vee q_i\ (i=1,\ 2,\ 3)$は共点である.
乙:
3点 $(p_i\vee p_j)\cap (q_i\vee q_j)\ ((i,\ j)=(1,\ 2),\ (2,\ 3),\ (3,\ 1))$は共線である.■

証明      次元定理2と条件から $(i,\ j)=(1,\ 2),\ (2,\ 3),\ (3,\ 1)$について

\begin{eqnarray*}
&&\dim\{(p_i\vee q_i)\vee (p_j\vee q_j)\}\\
&=&\dim(p_i\vee...
...vee q_j)-\dim\{(p_i\vee q_i)\cap (p_j\vee q_j)\}\\
&=&1+1-0=2
\end{eqnarray*}

よって

\begin{displaymath}
\dim[\{(p_1\vee q_1)\vee (p_2\vee q_2)\}\cap (p_3\vee q_3)]=0,\ 1
\end{displaymath}

である.これから

\begin{eqnarray*}
d&=&\dim\{(p_1\vee q_1)\vee (p_2\vee q_2)\vee(p_3\vee q_3)\}\...
..._1\vee q_1)\vee (p_2\vee q_2)\}\cap (p_3\vee q_3)]\\
&=&3,\ 2
\end{eqnarray*}

$d=3$のとき.

これは平面 $(p_1\vee q_1)\vee (p_2\vee q_2)$上に,$p_3$$q_3$がないときである.

甲なら乙を示す.

\begin{displaymath}
\dim[(p_1\vee p_2\vee p_3)\cap(q_1\vee q_2 \vee q_3)\}]
=2+2-3=1
\end{displaymath}

である. 公理II)より $(i,\ j)=(1,\ 2),\ (2,\ 3),\ (3,\ 1)$に対して, $(p_i\vee p_j)$$(q_i\vee q_j)$は交わる. その交点 $(p_i\vee p_j)\cap (q_i\vee q_j)\ ((i,\ j)=(1,\ 2),\ (2,\ 3),\ (3,\ 1))$ は直線 $(p_1\vee p_2\vee p_3)\cap(q_1\vee q_2 \vee q_3)$上にあり共線である.

乙なら甲を示す.

$(i,\ j)=(1,\ 2),\ (2,\ 3),\ (3,\ 1)$について $p_i\vee p_j$$q_i\vee q_j$は交点をもつので,公理II)によって $p_i\vee q_i$$p_j\vee q_j$も交点をもつ. $d=3$なので $\dim[\{(p_1\vee q_1)\vee (p_2\vee q_2)\}\cap (p_3\vee q_3)]=0$. これは $p_1\vee q_1$$p_3\vee q_3$の交点と $p_2\vee q_2$$p_3\vee q_3$の交点が一致し,その結果, 3直線が共点であることを示している.


$d=2$のとき.

これは$p_3$$q_3$も平面 $(p_1\vee q_1)\vee (p_2\vee q_2)$上にあるときで, 2平面 $p_1\vee p_2 \vee p_3$ $q_1\vee q_2 \vee q_3$が一致するときである.

甲なら乙を示す.

3直線 $p_i\vee q_i\ (i=1,\ 2,\ 3)$が共有する点を$o$とする. 平面 $\alpha=(p_1\vee q_1)\vee (p_2\vee q_2)\vee(p_3\vee q_3)$上にない点$o_1$をとる. 直線$o\vee o_1$上の第3の点$o_2$をとる.$i=1,\ 2,\ 3$とし, $o,\ p_i,\ q_i,\ o_1,\ o_2$に関して 公理II)を用いれば,$o_1\vee p_i$$o_2\vee q_i$は交点$r_i$をもつ.

$p_i,\ r_i\ (i=1,\ 2,\ 3)$ $q_i,\ r_i\ (i=1,\ 2,\ 3)$に関してそれぞれ$d=3$の場合が適用できる. 各 $(i,\ j)=(1,\ 2),\ (2,\ 3),\ (3,\ 1)$について, $p_i\vee p_j$$r_i\vee r_j$の交点は 平面$\alpha$と平面 $r_1\vee r_2\vee r_3$の上にあり, $q_i\vee q_j$$r_i\vee r_j$の交点も 平面$\alpha$と平面 $r_1\vee r_2\vee r_3$の上にある. つまり$\alpha$$r_i\vee r_j$の交点であり一致する. よって3点 $(p_i\vee p_j)\cap (q_i\vee q_j)$$\alpha$ $r_1\vee r_2\vee r_3$の交わりの上にあり,共線である.

乙なら甲を示す. この場合すべて射影平面$P^2$の命題となる. 「乙なら甲」は「甲なら乙」の双対命題そのものなので成立する. □

今後,点を明記する必要があるときは「 $p_1,\ p_2,\ p_3;\ q_1,\ q_2,\ q_3$に関するデザルグの定理」ということにする.

また$n=2$の場合は,$P^2$のなかで上記の点$o$をとることができない. だからこの証明は2次元射影空間$P^2$には適用できない.

注意 3.1.3        上記デザルグの定理の証明において$d=2$のときを考える. この場合,6点はおよび6直線は同一平面上にある. この場合命題そのものは平面上の図形に関するものになる.

$P^2$において,ある命題の双対命題は,点と直線,記号$\vee$$\cap$ をそれぞれ入れ替えたものである. この方法によって上記命題の条件甲と条件乙が入れ替わる. デザルグの定理の双対定理を作ると二つの同値な条件が入れ替わる. したがって二つの条件の同値性を主張するデザルグの定理そのものである. このように平面上の図形に関するデザルグの定理は自己双対である.

命題36によって, 直線の配景写像,射影写像は,点を中心とするものを考えることによって, 一般的な考察ができる.以下,直線の配景写像,射影写像を考えるときは, 点を中心とするもので考える. また,特にことわらないときは, $h,\ g,\ l$等は直線,$p,\ q,\ r$等は点を表すものとする.

命題 37        相異なる3直線$l,\ g,\ h$が共点のとき, 任意の配景写像 $\pi_{gl}(p),\ \pi_{hg}(q)$に対し,

\begin{displaymath}
\pi_{hg}(q)\circ \pi_{gl}(p)=\pi_{hl}(r)
\end{displaymath}

となる点$r$が存在する.$r$$r\in p\vee q$にとれる. ■
証明      $p=q$のときは$p=q=r$とすればよい.$p\ne q$とする. $a\in l$を固定する.任意の点$x\in l$に対して $x'=\pi_{gl}(p)(x),\ x''=\pi_{hg}(q)(x')$とする.

     $a,\ a',\ a'';x,\ x',\ x''$に関するデザルグの定理から 3直線$p\vee q$$a\vee a''$$x\vee x''$は共点である. この点を$r$とすれば, $x''=\pi_{hl}(r)(x)$となる. □

命題 38        $P^n$の相異なる3直線$l,\ g,\ h$に対し配景写像 $\pi_{gl}(p),\ \pi_{hg}(q)$が与えられたとき, 交点$l\cap g$を通り$h$と交わり$q$を含まないような任意の直線$g'\ (\neq l)$に対して,

\begin{displaymath}
\pi_{hg}(q)\circ \pi_{gl}(p)
=
\pi_{hg'}(q)\circ \pi_{g'l}(p')
,\ \quad p'\in p\vee q
\end{displaymath}

となる点$p'$が存在する. ■

証明      3直線$l,\ g,\ g'$は共点なので,命題37より, $\pi_{g'g}(q)\circ \pi_{gl}(p)=\pi_{g'l}(p')$ となる点$p'\in p\vee q$が存在する.明らかに $\pi_{hg}(q)=\pi_{hg'}(q)\circ\pi_{g'g}(q)$なので

\begin{displaymath}
\pi_{hg}(q)\circ \pi_{gl}(p)
=
\pi_{hg'}(q)\circ\pi_{g'g}(q)\circ \pi_{gl}(p)
=
\pi_{hg'}(q)\circ \pi_{g'l}(p')
\end{displaymath}

である. □
命題 39        異なる3直線$l,\ g,\ h$$P^n$の射影写像 $\varphi=\pi_{hg}(q)\circ \pi_{gl}(p)$がある. 相異なる2点$x\in l$$y\in h$が, 条件 $\varphi(x)\neq y$かつ $x,\ y\ne l\cap h$を満たすとき, 直線$x\vee y$$g'$とおく.

     このとき, $\varphi=\pi_{hg'}(q')\circ \pi_{g'l}(p')$となる点$p',\ q'$が存在する. ■

証明      3直線$l,\ g,\ h$が共点ならば,命題37によって $\varphi=\pi_{hl}(r)$となる$r$が存在する. $g'$$r$を通らない.よって $\varphi=\pi_{hl}(r)=\pi_{hg'}(r)\circ\pi_{g'l}(r)$である.

3直線$l,\ g,\ h$は共点でないとする. $l$$g$$g$$h$はそれぞれ同じ平面上にあり,交点をもつ. それを $x^*=l\cap g,\ y^*=g\cap h$とおく.$x^*,\ y^*$は相異なり $x^*\not \in h$$y^*\not \in l$である. 点の配置によって場合分けして示す.

(1)     $x^*,\ y,\ q$が一般の位置にあるとき. つまり直線$g^*=x^*\vee y$が点$q$を通らないとき.

    この場合命題38から, $\varphi=\pi_{hg^*}(q)\circ\pi_{g^*l}(p')$ となる$p'\in p\vee q$が存在する. さらに逆写像 $\varphi^{-1}=\pi_{lg^*}(p')\circ\pi_{g^*h}(q)$をとる. $y=h \cap g^*$より $\varphi^{-1}(y)=\pi_{lg^*}(p')(y)$である. 条件から $x\ne \varphi^{-1}(y)$なので,直線$g'=x \vee y$は点$p'$を通らない. 命題38から, $\varphi^{-1}=\pi_{lg'}(p')\circ\pi_{g'h}(q')$となる 点 $q'\in p'\vee q$が存在する.

    すなわち $\varphi=\pi_{hg'}(q')\circ \pi_{g'l}(p')$ となる点$p',\ q'$が存在した.

    $x\vee y^*$が点$p$を通らないときは$\varphi^{-1}$に同様について, 同様の議論をすればよい.

 

(2)      $p\in x\vee y^*$かつ $q\in x^*\vee y$のとき. この場合$p,\ x,\ y^*$$q,\ y,\ x^*$はそれぞれ共線で $\varphi(x)=y^*$ $\varphi(x^*)=y$となる.

     もし$x=x^*$なら$y=y^*$も成り立つ.このとき$g'=g$となり自明である. よって$x\ne x^*$とする.

(2-1)      $l\cap h \ne \emptyset $のとき.$s=l\cap h$とする.

(2-1-1)     3点$p,\ q,\ s$が共線のとき.

(2-1-1-1)      $h$上に$s,\ y,\ y^*$と異なる点$z$が存在する場合. 命題38を用いて,直線$g$を次の順序で直線$g'$にかえてゆけばよい.

\begin{displaymath}
g=x^*\vee y^*,\
x^*\vee z,\
z\vee x,\
xy=g'.
\end{displaymath}

(2-1-1-2)      $h$上に$s,\ y,\ y^*$と異なる点が存在しない場合. この場合は $l=\{x,\ x^*,\ s\}$ $h=\{y,\ y^*,\ s\}$ となる. $u=(x\vee y^*)\cap (x^*\vee y)$とすると $\varphi=\pi_{hl}(u)$となり$u=p=q$である. $\varphi=\pi_{hl}(u)=\pi_{hg'}(u){\circ}\pi_{g'l}(u)$ はつねに成立するので$p'=q'=u$は条件を満たす.

(2-1-2)      3点$p,\ q,\ s$が共線でないとき.いいかえれば $l\cap h \ne \emptyset $かつ $\varphi(s)\ne s$のとき. (2-1-1-1)の$z$$\varphi(s)$とすればよい.

(2-2)      $l\cap h = \emptyset $のとき. このときも (2-1-1-1)の$z$$\varphi(s)$とすればよい.


以上ですべての場合が尽くされた. □

定理 5        異なる直線間の射影写像は,点を中心とする高々二つの配景写像の合成で表される. ■

証明      2直線を$l,\ h$とし,$m$を自然数とする. 命題36により任意の射影写像 $\varphi:l \to h$に対し 次の条件を満たす$l,\ h$を含め$m+1$個の直線 $l=l_1,\ l_2,\ \cdots,\ l_{m+1}=h$$m$個の点 $p_1,\ \cdots,\ p_m$が存在する.

\begin{eqnarray*}
(1)&&l_i\ne l_{i+1},\ l_{m+1}\ne l_1,\ l_i\cap l_{i+1}\ne\emp...
...)は配景写像\ \varphi_{l_{i+1}l_i}(p_i)\ を意味する.
\end{eqnarray*}

直線が3点のみからなる場合は, 命題36によって高々2つの配景写像の合成で表される. よって以下,直線は少なくとも4点を含むものとする.

$m\ge 3$のとき,$\varphi$が高々2個の配景写像の合成になることを $m$に関する数学的帰納法で示す.

$m=3$のときに示す.4直線を $l_1,\ l_2,\ l_3,\ l_4$と3点を $p_1,\ p_2,\ p_3$とする. 証明は4直線が一般の位置にない場合に示し, 一般の位置にあるときを逆に一般の位置にない場合に帰着させて示す.

(1-1)     $l_1,\ l_2,\ l_3$が相異なり,かつ共点のとき. 命題37から $\varphi(p_2)\circ\varphi(p_1)=\varphi(p')$ となる点$p'$が存在し, $\varphi=\varphi(p_3)\circ\varphi(p')$となる. $l_2,\ l_3,\ l_4$が相異なり,かつ共点のときも同様である.

(1-2)     $l_1=l_3$$l_2$との交点$v$$l_4$上にないとき. $l_1$$l_2$の交点を$v$とする. $l_2\cap l_4$$l_3\cap l_4$$\varphi(v)$のいずれとも異なる$l_4$上の点が存在するので,それを$q$とする.$g=v\vee q$とする.命題38によって,写像 $\varphi(p_3)\circ\varphi(p_2)$$l_3$$g$で置きかえることができる. この結果$l_1,\ l_2,\ g$が共点の場合に帰着できる. $l_2=l_4$$l_3$との交点$v$$l_1$上にないときも同様である.

(1-3)     $l_1=l_3$$l_2=l_4$のとき. この2直線の交点を$v$とし,$v$を通る直線$g$をとる. 同じ平面上の点$r_1$を中心とする配景写像 $\varphi_{l_1g}(r_1)$ をとり,射影変換 $\varphi\circ\varphi_{l_1g}(r_1)$, つまり $\varphi(p_4)\circ\varphi(p_3)\circ\varphi(p_2)\circ\varphi(p_1)\circ\varphi_{l_1g}(r_1)$を考える.命題37により, $\varphi(p_1)\circ\varphi_{l_1g}(r_1)$$\varphi(r_2)$におきかえることができる.順次これを行うことで $\varphi\circ\varphi_{l_1g}(r_1)=\varphi(r_4)$と表すことができる.よって $\varphi=\varphi(r_4)\circ\varphi_{l_1g}(r_1)^{-1}$である.

(1-4)     $l_1,\ l_2,\ l_4$が相異なり,かつ共点のとき. $l_1\to l_2 \to l_3\to l_4$ $l_1\to l_4 \to l_3\to l_4$に置きかえることができる. $l_4 \to l_3\to l_4$は一つに置き換わるので,この場合も成立する. $l_1,\ l_3,\ l_4$が相異なり,かつ共点のときも同様.

(2)     3直線で共点であるものがない場合. 4直線はすべて異なる. $l_1$$l_2$の交点を$v$とする. $l_2$上になく$\varphi(v)$でもない$l_4$上の点をとり$s$とする. $g=v\vee s$とし,$l_3$$g$に置きかえる.これで$l_1,\ l_2,\ g$が共点となり, (1-1)に帰着する.

以上で$m=3$の場合は成立した.

(3)     $m>3$とし$m-1$までは成立するとする. $1\le i \le m$$i$ $l_i\ne l_{i+3}$となるところがあれば, $l_i,\ l_{i+1},\ l_{i+2},\ l_{i+3}$に以上の操作を行い配景写像をひとつ減らすことができる. $i=1,\ 2,\ \cdots,\ m$について$l_i=l_{i+3}$なら, $l_1,\ l_2,\ l_3$はすべて異なる. よって命題39によって$l_2$を別の直線$g$に置きかえることができる. この場合$g\ne l_5$なので, $g,\ l_3,\ l_4,\ l_5$でひとつ減らすことができる. 帰納法の仮定からこの場合も成立する. □

命題 40        同一直線の射影写像は,点を中心とする高々三つの配景写像の合成で表される. ■

証明      $l_1=l_{m+1}\ne l_m$である.よって $\varphi\circ\varphi(p_m)^{-1}$は異なる直線間の射影写像である. これを高々二つの配景写像の合成で表わし,それに$\varphi(p_m)$を合成することで, $\varphi$は高々三つの配景写像の合成で表される. □


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2014-01-03