点を0次元射影空間とみるときは大文字で,射影空間の要素とみるときは小文字で表す.
つまり,射影空間の点に対して,
直線と直線の交点を対応させるのである.
これを一般化して射影空間の部分空間から同一次元の部分空間への写像を定義する.そのために二つの命題を示す.
証明 次元定理から
証明 からへの写像が同様に定義される. このとき命題20によって
の2点をとる.この2点がそれぞれと対応しているとする.
次元定理から
(1) でのとき.
公理II)によって,とは交わる.
交点をとすれば,
と
はを中心とする配景写像で対応する.つまり,
である.
のときも同様.
(2)
で
のとき.
2直線とで定まる平面上に, を通り,と異なる直線を引く. 上の点をとり, ,との交点をとする. (1)によって点でを中心とする配景写像で を に対応させるものが存在する. この合成 をとすれば, 射影写像で と は対応する.
(3) のとき.
上にない点とと異なる直線をとる. を中心とするからへの配景写像で と対応する点を とする. と は射影写像で対応するので,この場合も成立する. □
(1)
のとき.
.この結果
(2) のとき. このとき である. したがって
射影幾何の公理から展開するかぎり,の1次元射影空間は,それだけではまったく身動きできない.公理II)が,直線がより次元の高い空間におかれていることが前提だからだ.のとき,公理II)は自明な形で成立するだけである.1次元射影空間は,射影幾何の公理からそれ自身の内部で論を展開することはできない.
のときはどのようになるか.2次元射影空間の内部では次のデザルグの定理が証明できない.つまりデザルグの定理は公理系からの帰結とはならない.2次元のなかだけで論を進めようとすれば,デザルグの定理を公理に加えなければならない.デザルグの定理を公理に加えることは,『射影幾何学』[35]の202頁にあるように,2次元射影空間が3次元空間のなかにおかれていると仮定するのと同値である.あるいは,『射影幾何学』[35]18頁にあるように,公理系を満たしデザルグの定理の成立しない2次元射影幾何を構成することもできる.
次元が小さいと,このように特別なことが起こる.個別性を研究し,どこまでが一般的であって,どこからが次元に固有なことなのかを明らかにすることは重要なことではある.しかしわれわれは歴史的に3次元空間内で考えたことを,公理的に裏づけるという立場から進んできたので,今後,射影空間の次元はであるものとする.
証明 次元定理2と条件から について
これは平面 上に,かがないときである.
甲なら乙を示す.
乙なら甲を示す.
について とは交点をもつので,公理II)によって とも交点をもつ. なので . これは との交点と との交点が一致し,その結果, 3直線が共点であることを示している.
のとき.
これはもも平面 上にあるときで, 2平面 と が一致するときである.
甲なら乙を示す.
3直線 が共有する点をとする. 平面 上にない点をとる. 直線上の第3の点をとる.とし, に関して 公理II)を用いれば,とは交点をもつ.
と に関してそれぞれの場合が適用できる. 各 について, との交点は 平面と平面 の上にあり, との交点も 平面と平面 の上にある. つまりとの交点であり一致する. よって3点 は と の交わりの上にあり,共線である.
乙なら甲を示す. この場合すべて射影平面の命題となる. 「乙なら甲」は「甲なら乙」の双対命題そのものなので成立する. □
今後,点を明記する必要があるときは「 に関するデザルグの定理」ということにする.
またの場合は,のなかで上記の点をとることができない. だからこの証明は2次元射影空間には適用できない.
において,ある命題の双対命題は,点と直線,記号と をそれぞれ入れ替えたものである. この方法によって上記命題の条件甲と条件乙が入れ替わる. デザルグの定理の双対定理を作ると二つの同値な条件が入れ替わる. したがって二つの条件の同値性を主張するデザルグの定理そのものである. このように平面上の図形に関するデザルグの定理は自己双対である.
命題36によって, 直線の配景写像,射影写像は,点を中心とするものを考えることによって, 一般的な考察ができる.以下,直線の配景写像,射影写像を考えるときは, 点を中心とするもので考える. また,特にことわらないときは, 等は直線,等は点を表すものとする.
証明 のときはとすればよい.とする. を固定する.任意の点に対して とする.
に関するデザルグの定理から 3直線,,は共点である. この点をとすれば, となる. □
証明 3直線は共点なので,命題37より, となる点が存在する.明らかに なのでこのとき, となる点が存在する. ■
3直線は共点でないとする. と,とはそれぞれ同じ平面上にあり,交点をもつ. それを とおく.は相異なり , である. 点の配置によって場合分けして示す.
(1) が一般の位置にあるとき. つまり直線が点を通らないとき.
この場合命題38から, となるが存在する. さらに逆写像 をとる. より である. 条件から なので,直線は点を通らない. 命題38から, となる 点 が存在する.
すなわち となる点が存在した.
が点を通らないときはに同様について,
同様の議論をすればよい.
(2) かつ のとき. この場合,はそれぞれ共線で , となる.
もしならも成り立つ.このときとなり自明である. よってとする.
(2-1) のとき.とする.
(2-1-1) 3点が共線のとき.
(2-1-1-1)
上にと異なる点が存在する場合.
命題38を用いて,直線を次の順序で直線にかえてゆけばよい.
(2-1-1-2) 上にと異なる点が存在しない場合. この場合は , となる. とすると となりである. はつねに成立するのでは条件を満たす.
(2-1-2) 3点が共線でないとき.いいかえれば かつ のとき. (2-1-1-1)のをとすればよい.
(2-2) のとき. このときも (2-1-1-1)のをとすればよい.
以上ですべての場合が尽くされた.
□
直線が3点のみからなる場合は, 命題36によって高々2つの配景写像の合成で表される. よって以下,直線は少なくとも4点を含むものとする.
のとき,が高々2個の配景写像の合成になることを に関する数学的帰納法で示す.
のときに示す.4直線を と3点を とする. 証明は4直線が一般の位置にない場合に示し, 一般の位置にあるときを逆に一般の位置にない場合に帰着させて示す.
(1-1) が相異なり,かつ共点のとき. 命題37から となる点が存在し, となる. が相異なり,かつ共点のときも同様である.
(1-2) でとの交点が上にないとき. との交点をとする. ,,のいずれとも異なる上の点が存在するので,それをとする.とする.命題38によって,写像 のをで置きかえることができる. この結果が共点の場合に帰着できる. でとの交点が上にないときも同様である.
(1-3) ,のとき. この2直線の交点をとし,を通る直線をとる. 同じ平面上の点を中心とする配景写像 をとり,射影変換 , つまり を考える.命題37により, をにおきかえることができる.順次これを行うことで と表すことができる.よって である.
(1-4) が相異なり,かつ共点のとき. を に置きかえることができる. は一つに置き換わるので,この場合も成立する. が相異なり,かつ共点のときも同様.
(2) 3直線で共点であるものがない場合. 4直線はすべて異なる. との交点をとする. 上になくでもない上の点をとりとする. とし,をに置きかえる.これでが共点となり, (1-1)に帰着する.
以上での場合は成立した.
(3) としまでは成立するとする. ので となるところがあれば, に以上の操作を行い配景写像をひとつ減らすことができる. についてなら, はすべて異なる. よって命題39によってを別の直線に置きかえることができる. この場合なので, でひとつ減らすことができる. 帰納法の仮定からこの場合も成立する. □