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ケーリー(Arthur Cayley)の論文集第2巻[42]所収の第113論文の方法を再構成する.本節ではケーリーの方法によってポンスレの定理12の楕円関数による証明をおこなう.
とを二つの円錐曲線との方程式とする.
命題90に示したように,同じ曲線束に属する円錐曲線の方程式は,
の点を用いて
と表される.の点を用いる代わりに,
を含めて
とおき,
方程式を
としてもよい.
このようにして定まる曲線束の曲線を
と表すのであった.
の直線に対してがこれと接するとする.
の方程式を用いての一文字を消去すれば,
他の残る二文字の2次同次方程式が得られる.この判別式を0とおくことによって,の2次方程式が得られる.つまりに接する曲線束の曲線を定めるの値は一般に2個ある.
以下ではとを次のように定める.
命題95によって,
一般の位置にある2つの円錐曲線は
射影変換によって次の形にすることができる.
とする.
である.
とする.
である.
二つの方程式を連立して解くと
となり,
とが相異なる4点で交わるという条件は,
がすべて異なるという条件と同値である.
補題 23
は異なるとする.
と
の共通接線は4本あり,
接線の方程式は
|
(5.7) |
である.
■
証明
がとに接するとする.
との方程式は
である.
であるとし,第1式でを消去する.
これが2次同次方程式として重根もつ.その判別式をとって
についても同様に成り立ち,としたので
である.を消去して
同様にしても定まり,次式を得る.
としたが,得られた結果の対称性から,他の場合も同様である.
これから共通接線の方程式(5.7)を得る.
□
命題 103
と
の共通接線が
と2点
で交わるとする.
における
の接線が
に接するとする.
このとき等式
が成立するように根号の符号を選ぶことができる.
逆にこの関係式が成立するように平方根の符号をとることができれば,
との共通接線との交点をとするとき,
でのの接線はに接する.
■
証明
とおく.におけるの接線は
である.これが,つまり
に接する.とする.これから
判別式をとって整理するとなので
対称性からでないときも同様である.
より
これらより
|
(5.9) |
が成り立つ.
符号を適切にとり,その ときのが
方程式(5.7)の
の上にあるようにする.
このとき等式(5.8)が成立する.
逆にこのとき,
は(5.9)を満たす上の点であり,ここでの接線がに接している.
□
注意 5.3.1
等式(
5.8)は
に関して対称である.
したがって,
と
の共通接線と
の交点における
の接線が
に接するならば,
と
の共通接線と
の交点における
の接線は
に接し,
と
の共通接線と
の交点における
の接線も
に接する.
これを例示するために,さらに
の座標変換をおこない,
実平面に描いてみる.
を相異なる定数として
|
(5.10) |
とおく.
補題 24
と
に対して
を
で定める.このとき
|
(5.11) |
が成り立つ.
■
証明
とし,とおいてを固定する.
である.が固定されているので
.よって
である.
一方,
であるから
両辺に
を乗じて
両辺で積分して
を得る.積分定数はで決まる.
これを明示してこの等式は
となる.次にこのを決定する.
ここでをとるととなりである.
よって
この結果となり,等式(5.11)が成立する.
□
一般に
とおくとはの関数であるが,
その逆関数をヤコビの楕円関数と言い
と表す.
を母数,
を補母数という.
そして
とおくと,関数はを基本周期とする二重周期関数で,
奇関数である.
に対してその逆関数をとおく.
の定義(5.10)
において
とおきかえる.
とすると,
となる.
したがって,を用いると
が成り立つ.
これをについて解いて
を得る.これがの楕円関数による表示である.
これからまたは偶関数である.
が実数の場合,とすると
積分(5.10)はまずで定義され,
その逆関数を複素平面全体に解析接続したものがである.
実数でない場合も同様に考えることができる.
等式(5.11)は楕円関数の加法定理である.
実際,
とすると,
関係式
はを意味する.
そして
であるから,等式(5.11)は
|
(5.12) |
となる.
注意 5.3.2
の場合の
がいわゆるワイエルシュトラスの
関数である.
命題 104
等式
|
(5.13) |
が成り立つ符号のとり方が存在することは等式(
5.8)
が成立することと同値である.
■
証明
等式(5.13)は
であるから,
補題24によって,この等式は補題24の
を
をに変えた等式
|
(5.14) |
を意味する.
よって等式(5.8)と,
符号を適当にとることで等式(5.14)の成立する
が存在することとが同値であること,
これが証明すべきことである.
いいかえると,根号部分の平方計算を経て2式が同一の式なることが証明すべきことである.
次に,同様にして
となる.
それぞれが同一の式に同値変形されたので,
等式(5.14)となるように符号がとれることは
等式(5.8)となるように符号がとれることと同値であることが示された.
□
系 104.1
等式(5.13)が成り立つ符号のとり方が存在することは,
等式
が成立する符号のとり方が存在することと同値である.
証明
等式(5.13)は等式(5.15)と同値になった.
ところがこの式はと
に関して対称である.
よってこれを入れ替え,上記命題の等式(5.8)から等式(5.16)
にいたる同値変形を逆にたどることで等式(5.17)を得る.
□
注意 5.3.3
等式(
5.17)は行列式では
と表される.
ケーリーの定理は,
曲線束の2つの円錐曲線
に接する接線のとの交点における接線が
と接しているとき,
を楕円積分の関係式に表すことができるということであった.
この定理をもとに,ポンスレの定理12の別証明をおこなう.
命題 105
と
の共通接線が
と異なる2点
で交わるとする.
の接線が
と交わる点を
とする.
と
での
の接線が
,
と接しているとする.
このとき,
|
(5.18) |
となるように符号をとることができる.
■
証明
命題104によって
となるように符号がとれる.ここで2式の右辺のとの符号が
いずれも同符号,またはいずれも異符号であれば,
となる.
なのでこれは
を意味する.
このときとの共通接線との交点はのみであり,
その点でのの接線がと接すること意味し,
である.とが異なることに反する.
よって一方が同符号で一方が異符号なので,適当に符号をとることによって
(5.18)の形にすることができる.
□
このとき,関係式
が成り立つが,
逆も成立する.
命題 106
変数
と
が関係式
|
(5.19) |
となるように符号をとることができるなら,
と
の共通接線の
の接点を
,
と
の共通接線の
の接点を
とするとき,
直線
は
に接する.
■
証明
を通るの接線をとする.曲線束の曲線でと接するものを
とする.このとき
となるように符号を選ぶことができ,条件から
も成立し,はを通る.つまり直線はに接する.
□
以上の準備によって,
ポンスレの定理12の楕円積分による証明ができる.
ポンスレの定理12を,曲線束の記号を用いて再掲する.
自然数をとする.
与えられた円錐曲線上に頂点をもつ角形
がある.
辺
はそれぞれと同じ曲線束に属する
円錐曲線
に接している.
このとき残る辺も同じ曲線束に属するある円錐曲線に接する.
■
証明
が成り立っている.
ここで
となるように符号のとれるをとる.
このとき
も成り立ち,
は同じ曲線束に属する円錐曲線に接する.
□
同様に閉形定理13が示される.
定理を再掲する.
自然数をとする.
与えられた円錐曲線上に頂点をもつ角形
で,
辺
が
それぞれと同じ曲線束に属する
円錐曲線
に接しているものが存在する.
このとき,上の任意の点をとり,順次
を
が
に接するようにとる.このとき残る辺もに接する.
■
証明
一つの角形の存在によって
となる.その結果,
を
が
に接するなら,上記記号で
も成り立ち,このとき残る辺もに接する.
□
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2014-01-03