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青空学園数学科

このような観点から,青空学園数学科では,数学教育にあたるものへの材料の提供と,問題意識のある高校生や大学生への直接の語りかけをおこなってきた.

青空学園数学科のすべての制作物は,TeXによって書かれている.TeXからhtmlファイルを作るソフトを用いるか,あるいはTeXで記述されたことをウエブ上で表示するソフトを用いて,これらのものをウエブ上にあげると共に,すべてPDFファイルに変換し,自由に入手できるように公開してきた.

「学習と教育活動に無償で用いる場合にかぎり,TeX原稿を含め,全体および一部を利用することができます.」として,TeXテキスト,PDFファイル,htmlファイルのなどをDVDRに焼いて実費で配付してきた.現時点で265枚配付されている.そのほとんどは,高校教員かまたは塾などで数学を教えている人である.

青空学園数学科の制作物の柱は次の二面である.

  1. 数学的現象や個別の問題から帰納的に考え,一般化する. それによって,ある体系の中の具体的事実であることをとらえる.
  2. そのような考察過程を経て,体系的記述の意味をつかむ. そのうえで公理系から演繹的に論述して,数学を構成する.

そのことを実際に行うことで,帰納的探究と演繹的構成の力を身につける.これが何より高等数学の教育において伝えるべきことなのである.しかし,現在の教育のなかではそのことの意味も重要さも理解されているとは言いがたく,一般的には実践されていないと言いうる.

青空学園では,「わかってにっこり」とともに「少ない原理,自由な応用」ということを大切にしてきた.これに関して配付物の申し込みメールに次のように書いてくれた人がいた.

     HPの充実と今後の益々のご活躍を祈念申し上げます。小生も、1年残して退職しましたが、数学を教える(=教えられる)ことは楽しいことです。今年は「非常勤講師」として8h/wの授業を担当しています。

     ある精神科医の方が、「数学は暗記である」と持論を展開しておられましたが、本質的な部分で違和感がありました。機能主義・効率主義な論理は現代において支配的ではありますが、「わかってにっこり」「本質の理解」を軸とする先生の考え方は支持されると思います。今後とも、御身ご自愛されてご活躍ください。

     先のバージョンのディスク重宝させていただきました。おかげさまで、東大2名、京大2名の合格者を出すことができました。生徒諸君には良い刺激と良質な話題を提供させていただき、感謝しております。

実際,いまでも数学は暗記だなどということが言われる.小手先の受験技術しか見ていない.

これに対して,青空学園数学科では,

入試数学も数学であるかぎり,数学として正面から勉強するのが,結局は早道です.ひとつの問題を深く考え,その結果として多くの問題が解けるようになる,それが本当の勉強です.そんな勉強を青空学園でしよう!
と呼びかけてきた.それは少しずつではあるが支持を広げている.

こうして,本質を掘り下げ,そのことをとおして数学の力をつけるということを基本にし,帰納的探究と演繹的構成の相互発展を実地に積み重ねてきた.そして,20年近くをかけて次のような制作物を公開してきた.その内容と意味を報告する.





Aozora 2018-08-09