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終結式の行列式表現

南海  さらに判別式と終結式の関係を明示的に書くには 行列式による終結式と判別式の表示が必要だ. 一般の$n$次行列式の理解が必要だが,これは 『線型代数の考え方』を見てほしい.

さて行列式を用いると終結式を係数を用いて具体的に書くことができる.

定理 5
2つの整式

\begin{displaymath}
f(x)=a_0x^m+a_x^{m-1}+\cdots+a_m,\ \quad
g(x)=b_0x^n+b_x^{n-1}+\cdots+b_n
\end{displaymath}

の終結式を$R(f,\ g)$とする.

\begin{displaymath}
R(f,\ g)=
\begin{array}{\vert c}
\left.
\begin{array}...
..._1\,&\cdots&b_n\,\,
\end{array}
\right\}m個
\end{array}
\end{displaymath}

が成り立つ.ただし,空白の成分は0とする.

証明

$f(x)$$g(x)$

\begin{eqnarray*}
f(x)&=&a_0x^m+a_x^{m-1}+\cdots+a_m=a_0\prod_{i=0}^m(x-\alpha_...
...
g(x)&=&b_0x^n+b_x^{n-1}+\cdots+b_n=b_0\prod_{j=0}^n(x-\beta_j)
\end{eqnarray*}

と因数分解されたとする.ただし, ここで各$
m$個,$n$個の根 $\alpha_i,\ \beta_j$と 最高次数の係数$a_0$$b_0$を一般的に文字で考え, 他の係数はそれらの対称式(の$a_0,\ b_0$倍)として定まるものとする.

ある$\alpha_i$とある$\beta_j$に共通の不定元$\gamma$を代入する. すると

\begin{eqnarray*}
f(\gamma)&=&a_0\gamma^m+a_\gamma^{m-1}+\cdots+a_m=0\\
g(\gamma)&=&b_0\gamma^n+b_\gamma^{n-1}+\cdots+b_n=0
\end{eqnarray*}

である.ここで$m+n$個の組

\begin{displaymath}
\gamma^{m+n-1},\
\gamma^{m+n-2},\ \cdots,\ \gamma,\ 1
\end{displaymath}

を根とする連立1次方程式を考える. 根を代入した形で書くと

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{cccccccc}
a_0\gamma^{m+n-1}&+a_1\...
...mma^n&+b_1 \gamma^{n-1}&\cdots&+b_n&=0
\end{array}
\right.
\end{displaymath}

である.$\gamma$は一般の不定元なので,この行列式は0である.

耕介  係数は根と$a_0$$b_0$で書けているので 行列式,

\begin{displaymath}
G=
\begin{array}{\vert ccccccc\vert}
a_0&a_1&\cdots&a_m...
...&&&\cdots&&&\\
&&&b_0\ &b_1\,&\cdots&b_n\,\,
\end{array}
\end{displaymath}

は根の対称式と$a_0$$b_0$で書ける.

そのうちの ある$\alpha_i$とある$\beta_j$に共通の不定元$\gamma$を代入すると, この行列式が0になるということですね.

南海  そういうことだ.そしてこれが任意の$\alpha_i$$\beta_j$についていえる.したがってこの行列式は, すべての $\alpha_i-\beta_j$で割りきれる.

$a_i\ (1\le i \le m)$ $b_j\ (1\le j \le n)$はそれぞれ $a_0$$b_0$で割りきれる(根と$a_0$$b_0$との積になっている). よって$G$ ${a_0}^n{b_0}^m$で割りきれる. したがって$G$$R(f,\ g)$で割りきれる.

一方行列$G$を展開すると,その項は

\begin{displaymath}
a_{i_1-1}
a_{i_2-2}\cdots
a_{i_n-n}
b_{j_1-1}
b_{j_2-2}\cdots
b_{j_m-m}
\end{displaymath}

ただし, $i_1,\ i_2,\ i_n,\ j_1,\ j_2,\ j_n$ $
1,\ 2,\ \cdots,\ m+n
$ の順列で,その結果, 添え字が$a_{\nu}$については $0\le\nu \le m$の範囲にないときは0, $b_{\nu}$については $0\le\nu \le n$の範囲にないときは0, とするものとする.

それが0でないとき,その項の根から見た次数は

\begin{eqnarray*}
&&(i_1-1)+
(i_2-3)+\cdots+
(i_n-n)+
(j_1-1)+
(j_2-3)+\cdo...
...dfrac{(m+n)(m+n+1)}{2}-\dfrac{n(n+1)}{2}-\dfrac{m(m+1)}{2}
=mn
\end{eqnarray*}

これは

\begin{displaymath}
R(f,\ g)={a_0}^n{b_0}^m\prod(\alpha_i-\beta_j)
\end{displaymath}

における根の積の次数と等しい. したがって

\begin{displaymath}
G=cR(f,\ g)
\end{displaymath}

となる定数が存在する.

$G$には ${a_0}^n{b_n}^m$という項がある. 一方,$R(f,\ g)$の対応する項は $
\displaystyle
{a_0}^n{b_0}^m\left(\prod_{j=1}^n(-\beta_j)\right)^m
={a_0}^n{b_n}^m$ である.よって$c=1$となり,定理の等式が示された. □

耕介  例(1.2)をこの方法で求めてみます.

\begin{displaymath}
f(x)=a_0x^2+a_1x+a_2,\
g(x)=b_0x^2+b_1x+b_2
\end{displaymath}

ですから

\begin{eqnarray*}
R(f,\ g)&=&
\begin{array}{\vert cccc\vert}
a_0&a_1&a_2&\\...
..._2}^2\\
&=&
(a_0b_2-a_2b_0)^2-(a_0b_1-a_1b_0)(a_1b_2-a_2b_1)
\end{eqnarray*}

となり,同じ結果になりました.

南海  判別式と終結式の間に定理3の関係があった.

これをもとに,判別式を終結式の行列表現から求めることができる. 例(1.1)を行列式でやってみてほしい.

耕介 

\begin{displaymath}
f(x)=x^3+px+q
\end{displaymath}

の判別式を行列式で求めます. $f'(x)=3x^2+p$なので

\begin{eqnarray*}
R(f,\ f')&=&
\begin{array}{\vert ccccc\vert}
1&0&p&q&\\ 
...
...d{array}\right)\\
&=&p^3+3\{-p^3-p^3+3(p^3+3q^2)\}=4p^3+27q^2
\end{eqnarray*}

一方$a_0=1$なので

\begin{displaymath}
R(f,\ f')=(-1)^{\frac{3\cdot 2}{2}}D=-D
\end{displaymath}

です.よって $D=-(4p^3+27q^2)$となりました.

不変式の計算は大変です.

南海  ところがフリーソフトのRisa/Asir などを使うと, 終結式や因数分解がすぐに出来る.

前に掲示板で

から,$a,\ b$を求めようとしましたが, 解けませんでした
という質問があった. 次のように出来る.


\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
[0]\mathrm{res}(b,b^3-3*a^2*b+11,3*a*...
...^2+8*a+1,1],[16*a^4-32*a^3+60*a^2-8*a+1,1]]
\end{array}
\end{displaymath}

最初の[0]で$b$終結式を用いて$b$を消去している. 次に$P$を定義し,最後にそれを因数分解している.

\begin{eqnarray*}
&&-64a^9+96a^6+3327a^3+8\\
&=&-(a-2)(a^2+2a+4)(4a^2+8a+1)(16a^4-32a^3+60a^2-8a+1)
\end{eqnarray*}

と因数分解できる. 他の解がどのような意味をもつのかも考えなければならないがそれは宿題としよう.

耕介  すごいですね.どこで手に入りますか.

南海  例えば,『Risa/Asir (神戸版) ダウンロードページ』などいくつかある.

 

演習 3 (出典不明)   解答3
$a,\ b$が実数のとき,次の2つの2次方程式
\begin{displaymath}
x^2+ax+b=0,\ \quad ax^2+bx+1=0
\end{displaymath}

が共通解をもつための条件を求め,共通解を求めよ.


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