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接線の極方程式表示と応用

南海  定義(4)を極座標で表すとどのようになるか. その場合焦点を極にとり,準線と直交する方向に極線をとろう.

耕一  条件をみたす点を$\mathrm{P}$とし,$\mathrm{PH}$を準線への垂線とします. さらに,$r=\mathrm{FP}$とし準線と焦点の距離を$a$とします. また離心率を$e$とします.定義から

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{PF}}{\mathrm{PH}}=e
\end{displaymath}

これから

\begin{displaymath}
\dfrac{r}{rcos\theta+a}=e
\end{displaymath}
これを解いて

\begin{displaymath}
r=\dfrac{ea}{1-e\cos\theta}
\end{displaymath}
となります.

南海  そういうことなのだ. このようにして,$xy$座標で標準形で表されるものを, 極方程式に表すと次のようになる. 先にいちど掲げた表に極方程式を追加しよう.

\begin{displaymath}
\begin{array}{\vert c\vert c\vert c\vert c\vert c\vert}
\h...
...x=-a&r=\dfrac{l}{1-\cos \theta},\ l=2a\\
\hline
\end{array}\end{displaymath}

演習 3  
標準形の二次曲線を焦点を極にとって極座標表示すると,上の表のようになることを確認せよ.

南海  極方程式で表された曲線の接線を考えることが必要だ.

耕一 $xy$ 座標で $y=f(x)$ で表された曲線上の点 $(t,\ f(t))$ での接線は, $f'(t)$が存在するとき$xy$座標では

\begin{displaymath}
y=f'(t)(x-t)+f(t)
\end{displaymath}

で表されます.

すると, 極座標$(r,\ \theta)$ で極方程式 $r=f(\theta)$ によって表される曲線上の点 $(f(\alpha),\ \alpha)$ での接線はどのようになるのか,という問題ですね.

南海  それを考えよう.

極形式で表された曲線 $r=f(\theta)$ 上の2点 $(f(\alpha),\ \alpha)\ (f(\beta),\ \beta)$ を 通る直線の式を極座標で表わすとどうなるか.

耕一  極座標を$xy$座標に直しつつ考えないとうまくできません.

求める接線上の点を $(r,\ \theta)$ とします.

2点 $(f(\alpha),\ \alpha)\ (f(\beta),\ \beta)$ を結ぶ直線の傾きは

\begin{displaymath}
\dfrac{f(\alpha)\sin\alpha-f(\beta)\sin\beta}{f(\alpha)\cos\alpha-f(\beta)\cos\beta}
\end{displaymath}

ここで, $\beta\to\alpha$ の極限をとります. これは,分子分母がそれぞれ関数 $f(\theta)\sin\theta,f(\theta)\cos\theta$$\theta=\alpha$での微分係数になるので

\begin{displaymath}
\dfrac{f'(\alpha)\sin\alpha+f(\alpha)\cos\alpha}{f'(\alpha)\cos\alpha-f(\alpha)\sin\alpha}
\end{displaymath}

です.したがって接線上の点$(r,\ \theta)$がみたすべき関係式は

\begin{displaymath}
\dfrac{r\sin\theta-f(\alpha)\sin\alpha}{r\cos\theta-f(\alpha...
...f(\alpha)\cos\alpha}{f'(\alpha)\cos\alpha-f(\alpha)\sin\alpha}
\end{displaymath}

です. これより,


を得ます.

南海 それが求める接線の式である.

これをもとに二次曲線の接線に関する基本定理を導こう.

定理 2
楕円,放物線,双曲線 $C$ の焦点,準線,離心率をそれぞれ $\mathrm{F}$ , $d$ , $e$ とし $C$ 上の任意の点 $\mathrm{P}$ における接線 $l$$d$ との交点を $\mathrm{A}$ , $\mathrm{P}$ から $d$ に下した垂線の足を $\mathrm{H}$ とする.

このとき

\begin{displaymath}
\dfrac{\cos \angle \mathrm{APF}}{\cos \angle \mathrm{APH}}=e
\end{displaymath}

が成り立つ.

証明

Fを極とする極座標では楕円,放物線,双曲線は

\begin{displaymath}
r=\dfrac{l}{1\pm e\cos\theta}
\end{displaymath}

と表される.

まずこの上の点 $(f(\alpha),\ \alpha)$ での接線を求める.


\begin{displaymath}
\dfrac{d}{d\theta}r=\dfrac{\pm le\sin\theta}{(1\pm e\cos\theta)^2}
\end{displaymath}

よって

\begin{displaymath}
r\left\{\dfrac{\pm le\sin\alpha}{(1 \pm e\cos\alpha)^2}\sin(...
...\cos(\alpha-\theta)\right\}
=\dfrac{l^2}{(1\pm e\cos\alpha)^2}
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴\quad r\{\pm e\sin\alpha\sin(\alpha-\theta)+(1\pm e\cos\alpha)\cos(\alpha-\theta)\}=l
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
r\left\{\pm e\cos\theta+\cos(\alpha-\theta)\right\}=l
\end{displaymath}

図のように点 $\mathrm{P}(f(\alpha),\ \alpha)$ での接線とFPのなす角を $\gamma,\ \mathrm{PH}$ と のなす角を $\delta$ とする.

\begin{displaymath}
\dfrac{\cos\gamma}{\cos\delta}=e
\end{displaymath}

を示す.

Pでの接線と $x$ 軸との交点をBとする.

まず $\mathrm{FP}$ を求める. 接線の式に $\theta=\alpha$ を代入して


次に $\mathrm{FB}$ を求める.
  1. $+e(0 <e<1)$ ,つまり楕円のとき.

    $\theta =0$ を代入して

    \begin{displaymath}
\mathrm{FB}=\dfrac{l}{e+\cos\alpha}
\end{displaymath}

    このとき $\alpha+\gamma+\delta=\pi $ である.よって,

    \begin{displaymath}
\cos \alpha=-\cos (\gamma+\delta)
\end{displaymath}

  2. $-e(1 \le e)$ ,つまり放物線, 双曲線のとき.

    $\theta =\pi$ を代入して

    \begin{displaymath}
\mathrm{FB}=\dfrac{l}{e-\cos\alpha}
\end{displaymath}

    このとき $\alpha=\gamma+\delta$ である.よって,

    \begin{displaymath}
\cos \alpha=\cos (\gamma+\delta)
\end{displaymath}

よっていずれの場合も

\begin{displaymath}
\mathrm{FP}
=\dfrac{l}{1 -e \cos (\gamma+\delta)},\ \mathrm{FB}=\dfrac{l}{e -\cos (\gamma+\delta)}
\end{displaymath}

正弦定理より

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{FB}}{\sin\gamma}=\dfrac{\mathrm{FP}}{\sin\delta}
\end{displaymath}

これから


\begin{displaymath}
\sin\gamma\left\{e-\cos(\gamma+\delta)\right\}
=\sin\delta\left\{1-e\cos(\gamma+\delta)\right\}\end{displaymath}


\begin{displaymath}
e\left\{\sin\gamma+\sin\delta\cos(\gamma+\delta)\right\}
=\sin\delta+\sin\gamma\cos(\gamma+\delta)
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
e\cos\delta\sin(\delta+\gamma)=\cos\gamma\sin(\delta+\gamma)
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴\quad e=\dfrac{\cos\gamma}{\cos\delta}
\end{displaymath}

南海  放物線の場合は,$e=1$なので

\begin{displaymath}
\cos\gamma=\cos\delta
\end{displaymath}

となる.

演習 4  
定理(2)を,円錐曲線の定義方程式を$xy$座標平面の標準形で表したものを用いて示せ.

定理(1)や定理(2)は局所的な性質だ. だから逆に次のような逆問題ができる.

演習 5  
2定点 $\mathrm{F},\ \mathrm{F}'$が与えられたとき,次の条件を満たす曲線$C$を求めよ.

これに関連した問題が93年阪大前期の問題だ.

このような逆問題については,まだあまり考えていない.


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