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ここでいわゆるガウス和を用いて平方剰余の相互法則(定理33の(1))の証明を行う.
今日ガウス和を用いた証明は,「有限体の指標」の問題としてガロア理論を土台にして行われるが,
ここではガロア理論も有限体や巡回群の理論も仮定せずに,
もっとも最初になされたように初等整数論の範囲内で行う.
を奇素数とし, を1の原始 乗根とする.具体的には例えば
とする.
このときガウス和 とは
のことをいう.
この和の2乗 を二通りの方法で計算することによって,
相互法則が示される.定理33(1)の
証明では(2)第一補充則と(3)第二補充則を先に示し,その結果を(1)平方剰余の相互法則の
証明に用いた.同様にここでも,(2)第一補充則と(3)第二補充則は示されているものとする.
ガウス和を明示的に書くために,原始根を用いる.
を を法とする剰余系の原始根とする.定理28によって,原始根は存在する.
が既約剰余系の一組になる.定理30の証明冒頭と同様の理由で, が偶数か奇数に
したがって
である.ゆえにガウス和 は原始根 を用いれば
と明示的に書くことができる.
ここで
とおく.
は
であるから
.
であるから を計算するためには,
が確定すればよい.
例 3.3.1
のとき.3は5を法とする原始根である.実際
を1の原始5乗根とする.
例 3.3.2
のとき.3は7を法とする原始根である.実際
を1の原始7乗根とする.
この例を一般化して示すために1のべき根の性質で必要なものをまとめておく.
補題 3
を1の原始
乗根,
を
を法とする原始根とする.
- (1)
- 有理数
を用いて
となるなら,
である.
- (2)
- 有理数
を用いて
とおく.
ならばは有理数である.
■
証明
- (1)
- より
となるが, は1の原始 乗根なので 以下の次数の方程式の
解とはならない.ゆえに
である.
- (2)
-
である.
は既約剰余系で,
なら
となる.したがって
に を代入したものと,を代入したものは,1の 乗根で
1以外のものが順序が 番ずれて現れる.
(1)から既約剰余系の有理数係数の一次結合による複素数の表示は一意である.
ゆえに
のとき,
より
となり,
と,対応する係数 が順次等しくなる.
である.
となり,確かに有理数である.□
さて, の計算は次の結果を推測させたが,それを示そう.
定理 35
記号はこの節の通りとする.このとき
となる.■
証明
フェルマの小定理から
である.ゆえに
したがって,整数 に対して
次に
において の代わりに を代入すると
と が入れ替わるので
は変わらない.
したがって補題から
は有理数である.
また有理数
に対して
が有理数となるのは
のときにかぎる.それ以外にあれば,
とあわせて の項を消せば, が
次以下の方程式を満たすことになるからである.
そこで
- (i)
-
が奇数.つまり
のとき.
を展開した段階でできる
個の積のうち,1になるものが
個あり,
残る
個の和は有理数なので,
それら 個ずつ
でまとめられ,それが
個ある.
- (ii)
-
が偶数.つまり
のとき.
を展開した段階でできる
個の積のうちに1になるものはなく,すべて
個ずつ
でまとめられる.
これで補題が示された.□
これから が計算でき,他の計算と比較して相互法則が示される.
証明の中で用いる補題を先に証明しておく.
補題 4
素数
と整数係数の多項式
に対して
である.■
証明
に対して
より
は の倍数.
である.□
定理 36 (平方剰余の相互法則の別証明)
を
と異なる奇素数とする.複合を
と同順にとって
である.■
証明
であるから,上の定理から
オイラーの規準(定理31)から
であるから
つまり
一方
つまり
において
の係数はすべて であるから,
がすべて の倍数になる.
これがとりうる値は であるが が奇素数なので
でなければならない.□
これはすなわち平方剰余の相互法則である.
ここではガウス和 の平方のみを用いた. そのものは使わなかったので, の符号を決定する必要がなかった. の符号を決定するのは簡単ではない.
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