耕介 有限群の場合は,総和を群の元の個数で割った平均をつかうことで, 数学的帰納法がうまく使えました. 無限群では,加えたものを元の個数で割るということは出来ません.
南海 しかし,総和に代わるものがあるだろう.
耕介 積分ですか.
南海 そうだ.全体にわたる積分が有限確定なら, 平均を考えることも不可能ではない. そのことを話してみよう. そこで,ここからは多項式環の係数は複素数とする. よっても成分は複素数値である.
耕介 複素数でであるようなものによって と表される行列の全体です. しかしそうすると,が作用するベクトル空間も 複素数成分ですか.
南海 そうだ. であるような空間を考える. これをと書こう.
耕介 複素2次元ということは,実数から見れば4次元ですか.
南海
そうだ.そして,ベクトル
の大きさを
耕介 これって2つのベクトル と の内積です.
南海 普通これを「エルミート積」という. 内積の記号を使うと と書ける. の元であって,のベクトルの大きさ, つまりエルミート積を変えないものの集合をと書く. これはの部分群でユニタリ群といわれる. この群は有限群とは違うが,全体を積分した値が有限である. それを考える. そこでまず,の元はどんな形をしているか.
耕介
とします.また任意の
をとります.
内積を1行2列,あるいは2行1列の行列の積と見れば
これは,実成分で
とおくと
南海
4次元空間の中の3次元球面だ.
そこで,
耕介 そんな積分はわかりません.
南海 では,円の面積と円周, 球の体積と表面積はどのような関係であったか.
耕介
南海 上段をで微分すると下段になる. 球の体積は円の面積から回転体の体積計算で求まる.
耕介
3次元の体積を回転させてを求め,それを微分すればになるのですね.
を固定すると
南海 とにかく有限群ではないが,はその3次元球面としての総面積が であることがわかった.
南海 これで次の場合に不変式が有限個でかけることが示せる. そのためにの不変式について もうういちどふり返っておこう.
の元に対して2の方法で の次式が変換され,その結果個の係数の間の変換が定まる. 今は,不変式の伝統に従い を(5)において係数の変換定めている.
この過程を通してが 変数の整式に作用するのだった. そこでをこのような変数の整式とし, この作用によるの変換をと書こう.
今は,の部分群の不変式を考えるのだ.
耕介
有限群の場合に平均をとった作用に関して,
ユニタリー群の場合は,
形式的にはの整式に対して
南海 有限群のときは単なる和であったが, この場合は積分なので, の元を にかけると, これは球面をそれ自身に写す変換であるが, この変換でが変わらないことをおさえなければならない. ところがはエルミート積を一定に保ち, 図形的には球面の長さとなす角,したがってその面積要素を変えない. この結果はの作用による不変式となる. が不変ならも成り立つ.
耕介 まだ不変ではないですね.
南海 そう.それはこれから考える.
今わかったことは,次のことだ.