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3章解答

解答 1.1       問題1.1
  1. $a\ne 0$ のとき $x=\dfrac{b}{a}$$a=0,\ b=0$ のとき解不定(すべての数), $a=0,\ b\ne 0$ のとき解なし.
  2. $a\ne 0,\ -1$ のとき $x=\dfrac{1}{a}$$a=-1$ のとき解不定(すべての数), $a=0$ のとき解なし.
  3. 移項して整理すると $2abx=a^2+b^2$ となる.ゆえに

    $a\ne 0,\ b\ne 0$ のとき $x=\dfrac{a^2+b^2}{2ab}$$a=0,\ b=0$ のとき解不定(すべての数), $a=0,\ b\ne 0$ または$a\ne 0,\ b= 0$ のとき解なし.

  4. 移項して整理すると $(a^2+a-2)x=a^2-4a+3$ , つまり $(a+2)(a-1)x=(a-1)(a-3)$となる.ゆえに

    $a\ne -2,\ 1$ のとき $x=\dfrac{a-3}{a+2}$$a=1$ のとき解不定(すべての数), $a=-2$ のとき解なし.

  5. 移項して整理すると $(a^2-5a+6)x=a-2$ , つまり $(a-2)(a-3)x=a-2$となる.ゆえに $a\ne 2,\ 3$ のとき $x=\dfrac{1}{a-3}$$a=2$ のとき解不定(すべての数), $a=3$ のとき解なし.
  6. 移項して整理すると $(a^2-2ab+b^2)x=a^3-b^3$ , つまり $(a-b)^2x=(a-b)(a^2+ab+b^2)$となる.ゆえに $a \ne b$ のとき $x=\dfrac{a^2+ab+b^2}{a-b}$$a=b$ のとき解不定(すべての数).
  7. $a\ne 0$ のとき $x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$$a=0,\ b\ne 0$ のとき $x=\dfrac{-c}{b}$ $a=0,\ b=0,\ c=0$ のとき解不定(すべての数), $a=0,\ b=0,\ c\ne 0$ のとき解なし.

解答 1.2       問題1.2

以下 $D$ は判別式を表す.

  1. $f(0)\ge 0,\ f(1)\ge 0,\ 0\le 軸 \le 1,\ D\ge 0$ より,

    \begin{displaymath}
b\ge 0,\ b-2a+1\ge 0,\ 0\le a \le 1,\ a^2-b\ge 0
\end{displaymath}

  2. $f(0)> 0,\ f(1)> 0,\ 0< 軸 < 1,\ D\ge 0$ より,

    \begin{displaymath}
b> 0,\ b-2a+1> 0,\ 0< a < 1,\ a^2-b\ge 0
\end{displaymath}

  3. 1解が$0< x <1$ にある,つまり$f(0)f(1)< 0$か, 1解が0で他の解が$0 \le x \le 1$ にない,または 1解が1で他の解が$0 \le x \le 1$ になければよい.

    $f(0)=0$ のとき$b=0$ で他の解は $2a$

    $f(1)=0$ のとき $1-2a+b=0$ で他の解は $b=2a-1$

    ゆえに$f(0)f(1)< 0$ $b=O かつ,2a<0 か 1<2a$ または $1-2a+b=0かつ,2a-1<0 か 1<2a-1$

    \begin{displaymath}
b(b-2a+1)\le 0\ ,\ \
\left\{
\begin{array}{l}
b=0\\
2...
...rray}{l}
1-2a+b=0 \\
2a-1<0 か 1<2a-1
\end{array} \right.
\end{displaymath}

  4. $f(0)f(1)< 0$ つまり$b(b-2a+1)< 0$
  5. (1)および(3)である.

    ただし, $f(0)f(1)\le 0 \cdots \maru{1}$ または $f(0)\ge 0,\ f(1)\ge 0 ,\ 0\le a \le 1,\ D\ge 0 \cdots \maru{2}$ でよい. @とAは $f(0)=0$$f(1)=0$ の場合が二重に入っているが,「または」 なのでかまわない.ゆえに

    \begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
b\le 0\\
b\ge 2a-1
\end{array...
...b\ge 2a-1\\
0 \le a \le 1,\ b^2-a\ge 0
\end{array} \right.
\end{displaymath} (a2-b に訂正)

  6. (2),または(4).ゆえに

    \begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
b< 0\\
b> 2a-1
\end{array} \r...
...> 0,\ b> 2a-1\\
0 < a < 1,\ b^2-a\ge 0
\end{array} \right.
\end{displaymath} (a2-b に訂正)

解答 1.3       問題1.3

底の条件から $0<x<1,\ 1<x$ および $0<y<1,\ 1<y$ .このとき $t=\log_xy$ とおく.

\begin{eqnarray*}
\log_xy+2\log_yx \le 3&\iff&t+\dfrac{2}{t}\le 3\\
&\iff&\dfra...
...&\iff&t<0,\ 1\le t \le 2\\
&\iff&\log_xy<0,\ 1\le \log_xy \le 2
\end{eqnarray*}  (,はまたはである)

したがって

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{ll}
y<1,\ x\le y \le x^2 &1<x のとき\\
y>1,\ x\ge y \ge x^2 &0<x ,1 のとき
\end{array}\right.
\end{displaymath}  (0<x1に訂正)

その領域は次図のようになる. □

解答 1.4       問題1.4

\begin{eqnarray*}
&&\dfrac{x-b}{x+a}-\dfrac{x-a}{x+b}-\left(\dfrac{x+a}{x-b}-\df...
...c{2(a^2-b^2)(x^2+ab)}{(x^2-a^2)(x^2-b^2)}>0 \quad \cdots\maru{1}
\end{eqnarray*}

このように $x^2$ の不等式になる.まず $x^2$ の不等式を解く. 大きく $a,\ b$ が同符号か異符号かで場合分けする.
  1. $ab>0$ のとき. $x^2+ab>0$ になる.

    $a^2-b^2>0$ なら@から $x^2<b^2,\ a^2<x^2$

    $a^2-b^2<0$ なら@から $a^2<x^2<b^2$

  2. $ab<0$ のとき.

    このときは $b=-a$ のとき $a^2=b^2$ になりうる.このとき解なし.

    $a^2-b^2>0$ なら $b^2<-ab<a^2$ なので, 1から $b^2<x^2<-ab,\ a^2<x^2$

    $a^2-b^2<0$ なら$a^2<-ab<b^2$ なので, 1から $x^2<a^2,\ -ab<x^2<b^2$

ゆえに,
  1. $ab>0$ のとき. $x^2+ab>0$ になる.

    $a^2-b^2>0$ のとき, $x<-\vert a\vert,\ -\vert b\vert<x<\vert b\vert,\ \vert a\vert<x$

    $a^2-b^2<0$ のとき, $-\vert b\vert<x<-\vert a\vert,\ \vert a\vert<x<\vert b\vert$

  2. $ab<0$ のとき.

    $a^2=b^2$ のとき.解なし.

    $a^2-b^2>0$ のとき, $x<-\vert a\vert,\ -\sqrt{-ab}<x<-\vert b\vert,\ \vert b\vert<x<\sqrt{-ab},\ \vert a\vert<x$

    $a^2-b^2<0$ のとき, $-\vert b\vert<x<-\sqrt{-ab},\ -\vert a\vert<x<\vert a\vert,\ \sqrt{-ab}<x<\vert b\vert$

解答 1.5       問題1.5

\begin{displaymath}
f(x)=x-2+3\vert x-1\vert
=\left\{
\begin{array}{ll}
-2x+1&(0 \le x \le 1)\\
4x-5&(1\le x \le 2)
\end{array}\right.
\end{displaymath}

であるから,定積分の区域に1が入るかはいらないかで,積分計算が変わる.

\begin{displaymath}
g(x)
=\left\{
\begin{array}{ll}
\displaystyle \left\vert\i...
...t_x^2(4t-5)\,dt \right\vert&(1\le x \le 2)
\end{array}\right.
\end{displaymath}

それぞれ絶対値内の定積分を計算すると,

\begin{displaymath}
g(x)
=\left\{
\begin{array}{ll}
\vert-x^2+x\vert+\vert x^2...
...3\vert+\vert-2x^2+5x-2\vert&(1\le x \le 2)
\end{array}\right.
\end{displaymath}

ここで$0 \le x \le 1$のとき $-x^2+x\ge 0,\ x^2-x+1\ge 0$ であるから

\begin{displaymath}
\vert-x^2+x\vert+\vert x^2-x+1\vert=1
\end{displaymath}

$1\le x \le 2$のとき $-2x^2+5x-2\ge 0$ であるが, $2x^2-5x+3=(2x-3)(x-1)$ なので

\begin{eqnarray*}
&&\vert 2x^2-5x+3\vert+\vert-2x^2+5x-2\vert\\
&&=\left\{
\be...
...+5x-2=1&\left(\dfrac{3}{2}\le x \le 2\right)
\end{array}\right.
\end{eqnarray*}

となる.あわせて

\begin{displaymath}
g(x)
=\left\{
\begin{array}{ll}
-4\left(x-\dfrac{5}{4}\rig...
...e x \le 1,\ \dfrac{3}{2}\le x \le 2\right)
\end{array}\right.
\end{displaymath}

したがって $g(x)$ $x=\dfrac{5}{4}$ で最大値 $\dfrac{5}{4}$ をとる. □

解答 1.6       問題1.6
(1)
辞書式の順に書き出す.

\begin{displaymath}
M(3)=\{121,123,131,132,212,213,231,232,312,313,321,323 \}
\end{displaymath}

(2)
1の位は3通り, $k$ の位は $k-1$ の位とは異なる数なので2通り.

\begin{displaymath}
∴ \quad 3 \cdot 2^{n-1}(個)
\end{displaymath}

(3)
$a(n,\ 0)=2$  ( $\{2323\cdots,\ 3232\cdots\}$)
$a(n,\ 1)$ について.
$a(1,\ 1)=1$ ($\{1\}$)
$a(2,\ 1)=4$ ( $\{12,13,21,31\}$)
$n\ge 3$ のとき.○で$2,\ 3$を置く場所を表す.1と1で挟まれたところはつねに $2323\cdots か3232\cdots$の2通り.1の位置で分類する.

\begin{eqnarray*}
1○\cdots ○型&:&2通り\\
○\cdots○1 型&:&2通り\\
○\cdots○1○\cdots ○型&:&2^2(n-2)通り\\
\end{eqnarray*}


\begin{displaymath}
∴ \quad a(n,\ 1)=\left\{
\begin{array}{ll}
1&(n=1)\\
4n-4&(n \ge 2)
\end{array} \right.
\end{displaymath}

$a(n,\ 2)$について.同様に1の位置で分類する.

\begin{displaymath}
\begin{array}{llr}
1○\cdots ○1 型&:2通り&(n \ge 3)\\
...
... ○型&:2^3{}_{n-3} \mathrm{C}_2通り&(n \ge 5)\\
\end{array} \end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴ \quad n \ge 5のとき a(n,\ 2)=2+8(n-3)+8{}_{n-3} \mathrm{C}_2=4n^2-20n+26
\end{displaymath}

$n=3,\ 4$ でも適する.また明らかに

\begin{displaymath}
a(1,\ 2)=0,\ a(2,\ 2)=0
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴ \quad a(n,\ 2)=\left\{
\begin{array}{ll}
0&(n=1,\ 2)\\
4n^2-20n+26&(n \ge 3)
\end{array} \right.
\end{displaymath}

(4)
同様に1の位置で分類する.

\begin{eqnarray*}
両端が1で間にk-2個の1がある型&:&2^{k-1}{}_{n-k-1} \mathrm{C}...
...1でなく間にk個の1がある型&:&2^{k+1}{}_{n-k-1} \mathrm{C}_k通り
\end{eqnarray*}

\begin{eqnarray*}
∴ \quad a(n,\ k)
&=&2^{k-1}{}_{n-k-1}\mathrm{C}_{k-2}+2^{k+...
...=&\dfrac{2^{k-1}(n-k-1)!}{(n-2k+1)!k!}\{4n^2-4(3k-1)n+9k^2-5k\}
\end{eqnarray*}

解答 1.7       問題1.7
(1)
各グループは自然数から成り,かつ要素は等差数列をなしている. したがって公差$d$は自然数である.

グループAに,自然数$N$$N+1$が含まれているとする.この二数の差は1なので, 公差は1である.ゆえにAには$N$以上の全ての自然数が属する.

二つ以上のグループに分かれるので, 他の各グループは1から$N-1$までの数でできていなければならない.

これは,各グループが無限に多くの自然数を含むことに反する.

よって各グループは連続2整数を含むことはない.

(2)
いずれかのグループは1を含む.グループAに1が含まれるとする. すると(1)からAは2を含まない.2はBに含まれる.すると3はBに含まれずAに含まれる. Aは1と3を含み2は含まないので,公差は2.同様にBは2と4を含み3は含まないので公差は2. よってAは奇数,Bは偶数の集合になる.

このようなグループ分けは1通りである.

(3)
1,3がAに,2がBにそれぞれ入っているので,4はAには含まれない. もしBに含まれるとすると,Bも公差は2となりBがすべての偶数を含むことになるり, 三つのグループ分けにはならない.

よって4はCに含まれる.

Aが1と3を含むので公差は2で奇数の集合になる.よって5はAに含まれる.

BとCはそれぞれ偶数からなる.もし6がCに含まれると, Cの公差が2となり,Cは4以上のすべての偶数を含む. これはBが無限に多くの自然数を含むことに反する.

ゆえに6はBに入る.

(4)
1と2は別のグループになる.これをAとBとする. 3がAにはいる場合.(3)で示したように,Aは奇数の集合. BとCは偶数の集合でこれら偶数の集合に連続する二つの偶数が入ることはない. よってこの場合はBは$k$を自然数として$2+4(k-1)=4k-2$, Cは$4+4(k-1)=4k$の形をした偶数よりなる. この場合は1通りである.

3がCに含まれる場合.4がBに入ればBはすべての偶数. 5がCに入ればCは3以上のすべての奇数を含むのでAが有限になる. よって5はAに入り7はC.かくしてAとCが$1+4(k-1)=4k-3$$3+4(k-1)=4k-1$の奇数よりなる.

3がCに含まれ,4がAに入る場合.Aは公差が3で$1+3(k-1)=3k-2$の形の数よりなり,特に7を含む. 5がCに入ればCは3以上のすべての奇数を含むのでAが7を含むことに反する. よって5はBに入りBは$2+3(k-1)=3k-1$の形の数よりなる. その結果,6はCに入り,Cは$3+3(k-1)=3k$形の数よりなる.

ゆえに自然数全体を三つのグループに分けるときの,その分け方は次の3通りである. $k$は任意の自然数を表す.

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
\{\ 2k-1\ \}\\
\{\ 4k-2\ \}\\ ...
...3k-2\ \}\\
\{\ 3k-1\ \}\\
\{\ 3k\ \}
\end{array} \right.
\end{displaymath}

解答 1.8       問題1.8

  1. $y=k$とする.$1\le k\le n$である. このとき,$x,\ z$$1\le x\le 2k$ $2k \le z\le 2n$ の範囲にあればよいので, それぞれ$2k$個,$2n-2k+1$個ある. 求める個数は次のようになる.

    \begin{eqnarray*}
\sum_{k=1}^n2k(2n-2k+1)&=&
2(2n+1)\sum_{k=1}^nk-4\sum_{k=1}^...
...(2n+1)n(n+1)-\dfrac{2n(n+1)(2n+1)}{3}
=\dfrac{n(n+1)(2n+1)}{3}
\end{eqnarray*}

  2. $xyz$が6の倍数であるとき, $x,\ y,\ z$をそれぞれ6で割った余りを $x_0,\ y_0,\ z_0$とすると,

    \begin{displaymath}
(x,\ y,\ z)=(x_0+6i,\ y_0+6j,\ z_0+6k)
\end{displaymath}

    と表される.これから$x_0y_0z_0$も6の倍数となる.

    まず $1\le x,\ y,\ z \le 6$の範囲で, 積$xyz$が6の倍数であるものの個数を求める.

    1. $x=1,\ 5$のとき.$yz$が6の倍数となればよい.

      $yz$が2の倍数でないのは$3^2=9$個.
      $yz$が3の倍数でないのは$4^2=16$個.
      $yz$が2の倍数でなく3の倍数でもないのは$2^2=4$個.
      $yz$が6の倍数となるのは

      62-(9+16-4)=15

      この場合は15 ×2=30個.
    2. $x=2,\ 4$のとき.$yz$が3の倍数となればよい.

      $yz$が3の倍数でないのは$4^2=16$個.
      $yz$が3の倍数となるのは

      \begin{displaymath}
6^2-16=20
\end{displaymath}

      この場合は$20\times 2=40$個.
    3. $x=3$のとき.$yz$が偶数.

      \begin{displaymath}
6^2-3^2=27
\end{displaymath}

    4. $x=6$のときは36個.
    $1\le x,\ y,\ z \le 6$の範囲で, 積$xyz$が6の倍数であるのは

    30 + 40 + 27 + 36 = 133 (個)

    この範囲の一組の $(x_0,\ y_0,\ z_0)$に対して,
    \begin{displaymath}
(x,\ y,\ z)=(x_0+6i,\ y_0+6j,\ z_0+6k)\quad ,\
0\le i,\ j,\ k\le n-1
\end{displaymath}

    はすべて題意を満たし,最初に確認したように 題意を満たすものはこの形に書ける.

    よって,積$xyz$が6の倍数であるのは 133n3 個である.

解答 1.9       問題1.9

求める個数を$a_n$とする.

    $a_n$は四面体の大きさには関係ない. そこで1辺$n$の正四面体を同様の方法で$n$等分した立体を$D_n$, その各部分の個数を$a_n$とする. $D_n$の体積は相似比から,$D_1$$n^3$個分である. $D_n$の一つの面を$S_n$とし,$S_n$と交わる3つの辺を$D_n$の外に1のばし, その3点を頂点に含む正四面体を作る.$D_n$の切断面をのばし, さらに$S_n$の3つの頂点からの切断面を加えて それぞれの方向に$n+1$等分した正四面体$D_{n+1}$を作るものとする.


    $a_{n+1}-a_n$は,$S_n$$S_{n+1}$の間に挟まれた場所にあって この操作で加わった部分の個数である.

図のように3種類の立体が確認される.

  1. $S_n$上に頂点,$S_{n+1}$上に底面のある正四面体.
  2. $S_{n+1}$上に頂点,$S_n$上に底面のある正四面体.
  3. 底面が$S_{n+1}$$S_n$の上にある正八面体.

    左図は$n=4$のとき,$S_{n+1}$面を破線で,$S_n$面を点線で示している. さらに太線で上記3立体のそれぞれの$S_{n+1},\ S_n$上にある面を示している. これをもとに上記三種の立体の個数を数える.
  1. $S_{n+1}$上にあり,各辺が$S_{n+1}$の対応する各辺と平行な三角形だけある. その個数は $\dfrac{(n+1)(n+2)}{2}$個.
  2. $S_n$上にあり,各辺が$S_n$の対応する各辺と平行でない三角形だけある. その個数は $\dfrac{(n-1)n}{2}$個.
  3. $S_{n+1}$上にあり,各辺が$S_{n+1}$の対応する各辺と平行でない三角形だけある. その個数は $\dfrac{n(n+1)}{2}$個.

これ以外にないことを体積で確認する. 正八面体は隣りあう面で$D_1$と同じ体積の四面体を決め,これが4組あるので, 体積は$D_1$4個分である. ゆえに1.〜2.の体積の合計は,$D_1$

\begin{displaymath}
\dfrac{(n+1)(n+2)}{2}+\dfrac{(n-1)n}{2}+4\cdot\dfrac{n(n+1)}{2}
=3n^2+3n+1(個分)
\end{displaymath}

これは, $S_n$$S_{n+1}$の間に挟まれた部分の体積が$D_1$$(n+1)^3-n^3$倍であることと一致する. よって上記3つの型の立体がすべてである.

\begin{displaymath}
∴\quad a_{n+1}-a_n=\dfrac{(n+1)(n+2)}{2}+\dfrac{(n-1)n}{2}+\dfrac{n(n+1)}{2}
\end{displaymath}

$a_1=1$でこれを解いて

\begin{displaymath}
a_n=\dfrac{n^3+n}{2}
\end{displaymath}

解答 1.10       問題1.10

$f(n)=5^n+an+b$ とおく.

$f(1)=5+a+b$$f(2)=25+2a+b$ がともに 16の倍数であることが必要である.

従って $f(2)-f(1)=a+20$ も16の倍数でなければならない.

$1\le a \le 16$ より $21\le a+20 \le 36$.この範囲の16の倍数は32のみ. ゆえに $a+20=32$ より $a=12$ が必要.

さらにこのとき $5+a+b=17+b$ .同様に考え $17+b=32$ で, $b=15$ が必要である.

逆に $a=12,\ b=15$ のとき $n\ge 3$ についても $f(n)$ が16の倍数であることを示す.

\begin{eqnarray*}
f(n)&=&5^n+12n+15=(1+4)^n+12n+15\\
&=&(1+{}_n\mathrm{C}_{n-1}...
...6+({}_n\mathrm{C}_{n-2}4^2+\cdots + {}_n\mathrm{C}_14^{n-1}+4^n)
\end{eqnarray*}

$n\ge 3$ なのでかっこ内は16の倍数である.

従ってこの場合も $f(n)$ は16の倍数である.

ゆえに求める $a,\ b$$a=12,\ b=15$

別解    

\begin{eqnarray*}
&&自然数 n に対して f(n)が16の倍数\\
&\iff&g(n)=f(n+1)-f(n) ..
...16 、ホヌワソ・\
&\iff&h(n)=g(n+1)-g(n) かつ g(1),f(1) が 16 の倍数
\end{eqnarray*}

ここで

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
f(1)=5+a+b\\
g(n)=4\cdot 5^n+a\\
g(1)=20+a\\
h(n)=16\cdot5^n
\end{array}\right.
\end{displaymath}

$h(n)$ はつねに16の倍数になるから,

求める条件は $5+a+b,\ 20+a$ が16の倍数であることと同値である.

つまり $a=12,\ b=15$

解答 1.11       問題1.11

$x=y=1$ のときに成立することが必要である.

\begin{displaymath}
(1+1)^4\le c^3(1^4+1^4) \quad ∴ \quad 8 \le c^3
\end{displaymath}

つまり $2 \le c$ が必要である.

$c\ge 2$ のとき $x,\ y>0$ なので

\begin{eqnarray*}
&&c^3(x^4+y^4)-(x+y)^4\\
&\ge&8(x^4+y^4)-(x^4+4x^3y+6x^2y^2+4...
...&(x-y)^2\{4(x^2+xy+y^2)+3(x+y)^2\}\ge 0\\
&&(等号は x=y のとき)
\end{eqnarray*}

となる.ゆえに$2 \le c$ は十分条件でもある.

したがって求める $c$ の範囲は$2 \le c$

別解1

$x,\ y>0$ なので $t=\dfrac{y}{x}>0$ とおく.

\begin{displaymath}
(x+y)^4 \le c^3(x^4+y^4)\iff (1+t)^4 \le c^3(1+t^4)
\end{displaymath}

である.

\begin{displaymath}
f(t)=c^3(1+t^4)-(1+t)^4
\end{displaymath}

とおく. $t>0$ のとき常に $f(t)\ge 0$ となる $c^3$ の範囲を求める.

\begin{displaymath}
f'(t)=4c^3t^3-4(1+t)^3
\end{displaymath}

$f'(t)=0$ となるのは $1+t=\sqrt[3]{c^3}t$ のときのみ. $f'(0)<0$ なのでこのとき$f'(t)$ は負から正に変わる. ゆえに $t=\dfrac{1}{\sqrt[3]{c^3}-1}>0$ で極小かつ最小.

\begin{eqnarray*}
&&f \left( \dfrac{1}{\sqrt[3]{c^3}-1}\right) \ge 0\\
&\iff& c...
...qrt[3]{c^3}-1\\
&\iff& \sqrt[3]{c^3}-1 \ge 1\\
&\iff& c^3\ge 8
\end{eqnarray*}

したがって求める $c$ の範囲は$2 \le c$

別解2

数IIIを用いる.

$x,\ y>0$ なので

\begin{displaymath}
(x+y)^4 \le c^3(x^4+y^4)\iff \dfrac{(x+y)^4}{x^4+y^4}\le c^3
\end{displaymath}

である. $t=\dfrac{y}{x}>0$ として,

\begin{displaymath}
\dfrac{(x+y)^4}{x^4+y^4}=\dfrac{(1+t)^4}{1+t^4}
\end{displaymath}

$t>0$ のときつねに

\begin{displaymath}
\dfrac{(1+t)^4}{1+t^4}\le c^3
\end{displaymath}

となるような $c^3$ の範囲は, $t>0$ における $\dfrac{(1+t)^4}{1+t^4}$ の最大値以上の範囲である.

$\dfrac{(1+t)^4}{1+t^4}$ の最大値を求める. $g(t)=\dfrac{(1+t)^4}{1+t^4}$ とする.

\begin{displaymath}
g'(t)=\dfrac{4(1+t)^3(1-t^3)}{(1+t^4)^2}
\end{displaymath}

となる.ゆえに $t=1$ のとき極大かつ最大である.最大値 $g(1)=8$ .

したがって求める $c$ の範囲は$2 \le c$. □

その他別解多数.PDF参照して下さい.

解答 1.12       問題1.12

\begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
\displaystyle{\sum _{k=1}^n}(ak^2+bk+1)&= ...
...{ a\dfrac{(n+1)(2n+1)}{6}+b\dfrac{n+1}{2}+1\right\}
\end{array}\end{displaymath}

であるから,題意をみたすためには,

\begin{displaymath}
f(n)= a\dfrac{(n+1)(2n+1)}{6}+b\dfrac{n+1}{2}+1
\end{displaymath}

が整数 $n$ に対し整数であることが必要十分条件である.

必要条件を求める.

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
f(0)=\dfrac{a}{6}+\dfrac{b}{2}+1
=\dfrac...
...{2}+1
=2a+b+1+\dfrac{a+b}{2} \quad \cdots\maru{2}
\end{array}\end{displaymath}

Aより $a+b$ が偶数.このとき@より $a$ が3の倍数.

注意     $f(1)=a+b+1$ となって $a,\ b$ に関する条件が加わらないので, $f(2)$ を調べた.

逆に,$a+b$ が偶数, $a$ が3の倍数とする.このとき

\begin{eqnarray*}
f(n)&=&a\dfrac{(n+1)(2n+1)}{6}+b\dfrac{n+1}{2}+1\\
&=&a\dfrac...
...2}+1\\
&=&\dfrac{a+b}{2}(n+1)+an(n+1)-\dfrac{a}{3}(n+1)(2n+1)+1
\end{eqnarray*}

よりつねに $f(n)$ は整数になる.

条件の範囲にこの条件をみたす $a$$2m$ 個とれる.

$a$ に対して条件をみたす $b$ は,

\begin{displaymath}
\begin{array}{lll}
aが奇数なら&bは1〜6mの奇数だから,&3m個\\
aが偶数なら&bは2〜6mの偶数だから,&3m個
\end{array}\end{displaymath}

とれる.

よって, $6m^2$ 個の $(a,b)$ がある.

別解    

\begin{displaymath}
f(n)= a\dfrac{(n+1)(2n+1)}{6}+b\dfrac{n+1}{2}+1
\end{displaymath}

が整数 $n$ に対し整数となる必要十分条件の求め方の別解.


\begin{displaymath}
g(n)=f(n+1)-f(n)=a\dfrac{4n+5}{6}+\dfrac{b}{2}
\end{displaymath}

とおく.

\begin{eqnarray*}
f(n)が常に整数&\iff&f(1),\ g(n) が常に整数\\
&\iff&f(1),\ g(1),\ g(n+1)-g(n) が常に整数
\end{eqnarray*}

ここで,

\begin{displaymath}
f(1)=a+b+1,\ g(1)=a+\dfrac{a+b}{2},\ g(n+1)-g(n)=\dfrac{2a}3
\end{displaymath}

これらが整数であるため条件は,

\begin{displaymath}
a+b が偶数,\ a が3の倍数
\end{displaymath}

である. □

解答 1.13       問題1.13

行列$X,\ Y$

\begin{displaymath}
X=\matrix{x}{y}{x}{w}\quad \quad
Y=\matrix{p}{q}{r}{s}
\end{displaymath}

とおく.

\begin{displaymath}
AX-XB
=\matrix{2x}{2y}{x+z}{y+w}-\matrix{\alpha x}{\beta y}{...
...=\matrix{(2-\alpha)x}{(2-\beta)y}{x+(1-\alpha)z}{y+(1-\beta)w}
\end{displaymath}

である.したがって条件$AX-XB=Y$

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
(2-\alpha)x=p\\
(2-\beta)y=q\\
x+(1-\alpha)z=r\\
y+(1-\beta)w=s
\end{array}\end{displaymath}

と同値である.

$p\ne 0$である$p$に対して$x$が存在するために$\alpha\ne 2$が必要.

$q\ne 0$である$q$に対して$y$が存在するために$\beta\ne 2$が必要.

これらの$x$$y$に対し$r$$s$を適当にとって $r-x\ne0,\ s-y\ne0$としたとき $z$$w$が存在するために $\alpha\ne 1,\ \beta\ne 1$が必要.

よって

\begin{displaymath}
\alpha\ne 1\ かつ\ \alpha\ne 2,\ \quad \beta\ne 1\ かつ\ \beta\ne 2\quad \cdots (**)
\end{displaymath}

が必要.

逆にこのとき任意の$p,\ q,\ r,\ s$に対して

\begin{eqnarray*}
&&x=\dfrac{p}{2-\alpha},\ y=\dfrac{q}{2-\beta}\\
&&z=\dfrac{1...
...right),\
w=\dfrac{1}{1-\beta}\left(s-\dfrac{p}{2-\beta} \right)
\end{eqnarray*}

ととることができ,こらから定まる$X$は条件$AX-XB=Y$を満たす. よって条件$(**)$は十分条件でもある. □

解答 1.14       問題1.14


\begin{displaymath}
x^3+y^3=(x+y)(x^2-xy+y^2)
\end{displaymath}

と因数分解される.自然数$x,\ y$を用いて$p^2=x^3+y^3$と表せるような素数$p$

\begin{displaymath}
p^2=(x+y)(x^2-xy+y^2)
\end{displaymath}

となる.$x+y>1$であるから,

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
x+y=p\\
x^2-xy+y^2=p
\end{arra...
...y=p^2\\
x^2-xy+y^2=1
\end{array}\right.\quad \cdots\maru{2}
\end{displaymath}

のいずれかである.

$\maru{1}$のとき. $p^2=x^2+2xy+y^2$なので,$p^2-p=3xy$.よって2次方程式

\begin{displaymath}
t^2-pt+\dfrac{p^2-p}{3}=0
\end{displaymath}

は実数解$x$$y$を持つ.判別式

\begin{displaymath}
D_1=p^2-\dfrac{4}{3}(p^2-p)\ge 0
\end{displaymath}

が必要である.これから$0\le p \le 4$$p$は素数だから$p=2,\ 3$である.
$p=2$なら,$x+y=2$.よって$x=y=1$.このとき $x^2-xy+y^2=1\ne p$.解なし.
$p=3$なら,$x+y=3$.よって $(x,\ y)=(2,\ 1),\ (1,\ 2)$. このとき $x^2-xy+y^2=3=p$.これは適切な解である.

$\maru{2}$のとき.同様に$p^4-1=3xy$.よって2次方程式

\begin{displaymath}
t^2-p^2t+\dfrac{p^4-1}{3}=0
\end{displaymath}

は実数解$x$$y$を持つ.判別式

\begin{displaymath}
D_2=p^4-\dfrac{4}{3}(p^4-1)\ge 0
\end{displaymath}

が必要である.これから $0\le p^4 \le 4$.このような$p$はない.

以上より$p=3$ $(x,\ y)=(2,\ 1),\ (1,\ 2)$. □

解答 1.15       問題1.15

$a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)$である.ここで $u=a-b,\ v=a^2+ab+b^2$とおく.

$u^2=a^2-2ab+b^2$であるから$v-u^2=3ab$.つまり $a(-b)=\dfrac{u^2-v}{3}$

したがって$a$$-b$は2次方程式

\begin{displaymath}
t^2-ut+\dfrac{u^2-v}{3}=0
\end{displaymath}

の二つの解である.$a$$b$は実数であることが必要なので,判別式を$D$とおくと

\begin{displaymath}
D=u^2-\dfrac{4(u^2-v)}{3}\ge 0
\end{displaymath}

これから $4v\ge u^2\quad \cdots\maru{1}$を得る.

$217=7\cdot 31$で7と31は素数であるから,$7\cdot 31=uv$となる$u,\ v$のうち, 条件$\maru{1}$を満たすものは

\begin{displaymath}
(u,\ v)=(1,\ 217),\ (7,\ 31)
\end{displaymath}

である.それぞれに対して$a(-b)$は-72と6である.

のとき,$a,\ -b$


の二つの解. $∴\quad (a,\ -b)=(-8,\ 9),(9,\ -8)$

$a-b=7,\ a(-b)=6$のとき,$a,\ -b$

\begin{displaymath}
t^2-7t+6=0
\end{displaymath}

の二つの解. $∴(a,\ -b)=(6,\ 1),(1,\ 6)$


\begin{displaymath}
∴\quad (a,\ b)=(1,\ -6),\ (6,\ -1),\ (-8,\ -9),\ (9,\ 8)
\end{displaymath}

解答 1.16       問題1.16
(1)
$n=1$のとき,$a_n-4=0$ より成立.

$n=k$ のとき $a_k-4$ が7の倍数とする.これを $7l$ とおく.つまり $a_k=7l+4$

このとき

\begin{displaymath}
a_{k+1}-4=3(7l+4)^2+4(7l+4)+3-4=7(l^2+12l)+63
\end{displaymath}

なので $a_{k+1}-4$ が7で割り切れる.ゆえに一般に $a_n-4$ が7で割り切れる.
(2)
$n=1$のとき, ${a_1}^2+a_1+1=16+4+1=21$ より成立.

$n=k$ のとき ${a_k}^2+a_k+1$$7^k$ の倍数とする.これを$7^km$ とおく. このとき

\begin{eqnarray*}
{a_{k+1}}^2+a_{k+1}+1&=&(3{a_k}^2+4a_k+3)^2+(3{a_k}^2+4a_k+3)...
...t7^km+7^km\\
&=&9\cdot7^{2k}m^2+6\cdot7^km(a_k-4)+28\cdot7^km
\end{eqnarray*}

(1)と帰納法の仮定から和の3項とも $7^{k+1}$ で割りきれる.

ゆえに,${a_n}^2+a_n+1$$7^n$ で割り切れることが示された.

(3)

\begin{eqnarray*}
{a_n}^{3p}-1&=&({a_n}^3-1)({a_n}^{3(p-1)}+{a_n}^{3(p-2)}+\cdo...
..._n}-1)({a_n}^2+{a_n}+1)({a_n}^{3(p-1)}+{a_n}^{3(p-2)}+\cdots+1)
\end{eqnarray*}

ゆえに${a_n}^{3p}-1$$7^n$ で割り切れる.つまり ${a_n}^{3p}$$7^n$ で割った余りは1である.

解答 1.17       問題1.17

  1. $t^n$の係数を推測するためにいくつかの$T_n(t)$を求める.

    \begin{eqnarray*}
f_1(x)&=&t=T_1(t)\\
f_2(x)&=&\dfrac{1}{2}\left(x^2+\dfrac{1}{...
...ght)^3-3\left(x+\dfrac{1}{x}\right)\right\}\\
&=&4t^3-3t=T_3(t)
\end{eqnarray*}

    したがって$T_n(t)$$t^n$項の係数は$2^{n-1}$と推測される.そこで

    \begin{displaymath}
T_n(t) は\ t\ の整数係数の整式で,\ t^n\ の係数は\ 2^{n-1}\ である
\quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}

    ことを,$n$に関する数学的帰納法で示す.

    (i) $n=1,\ 2$のときは,上のように成立する.

    (ii) $n=k,\ k+1$のときに$\maru{1}$が成立するとする.

    \begin{eqnarray*}
f_{k+2}(x)&=&\dfrac{1}{2}\left(x^{k+2}+\dfrac{1}{x^{k+2}}\righ...
...ht\}\\
&=&\dfrac{1}{2}\{4tT_{k+1}-2T_k(t)\}=2tT_{k+1}(t)-T_k(t)
\end{eqnarray*}


    \begin{displaymath}
∴\quad T_{k+2}(t)=2tT_{k+1}(t)-T_k(t)\quad \cdots\maru{2}
\end{displaymath}

    となる.

    数学的帰納法の仮定から $T_{k+1}(t),\ T_k(t)$は整数係数の整式なので$T_{k+2}(t)$の 係数も整数である.さらに $T_{k+1}(t),\ T_k(t)$の最高次の項の係数も帰納法の仮定から定まるのでそれを含めてこれらの多項式を書くと

    \begin{eqnarray*}
T_{k+1}(t)&=&2^kt^{k+1}+\cdots\\
T_k(t)&=&2^{k-1}t^k+\cdots
\end{eqnarray*}

    となる.したがって

    \begin{eqnarray*}
T_{k+2}(t)&=&2t\{2^kt^{k+1}+\cdots\}-\{2^{k-1}t^k+\cdots\}\\
&=&2^{k+1}t^{k+2}+\cdots
\end{eqnarray*}

    となり,$T_{k+2}(t)$は整数係数の$k+2$次整式で$t^{k+2}$の係数は$2^{k+1}$であることが 示された.つまり$n=k+2$でも$\maru{1}$が成立した.

    (iii) (i)(ii)より自然数$n$に対して$\maru{1}$が成立する.


  2. \begin{displaymath}
T_n(\cos \theta)=\cos(n \theta)
\quad \cdots\maru{3}
\end{displaymath}

    が成り立つことを数学的帰納法で示す.

    (i) $T_1(t)=t$なので $T_1(\cos \theta)=\cos \theta$,つまり$n=1$で成立.

    $T_2(t)=2t^2-1$なので

    \begin{displaymath}
T_2(\cos \theta)=2\cos^2\theta-1=\cos 2 \theta
\end{displaymath}

    つまり$n=2$で成立.

    (ii) $\maru{3}$$n=k,\ k+1$で成立するとする.$\maru{2}$より

    \begin{displaymath}
T_{k+2}(\cos \theta)=2\cos \theta T_{k+1}(\cos \theta)-T_k(\cos \theta)
\end{displaymath}

    が成り立つ.数学的帰納法の仮定を代入してこれを計算する.

    \begin{eqnarray*}
T_{k+2}(\cos \theta)&=&2\cos \theta T_{k+1}(\cos \theta)-T_k(\...
...os\{(k+2)\theta\} + \cos k \theta]-\cos k \theta=\cos(k+2)\theta
\end{eqnarray*}

    したがって$n=k+2$でも成立した.

    (iii) (i)(ii)より自然数$n$に対して$\maru{3}$が成立する.

解答 1.18       問題1.18
(1)
解と係数の関係から

\begin{displaymath}
\alpha+\beta=p\ ,\ \quad \alpha\beta=-q
\end{displaymath}

$n=1,\ 2$ のとき.

\begin{eqnarray*}
A_1&=&\alpha+\beta=p\\ \
A_2&=&\alpha^2+\beta^2=(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta=p^2+2q
\end{eqnarray*}

よりともに整数で,成立する.

$n=k,\ k+1$ で成立するとする.このとき

\begin{eqnarray*}
A_{k+2}&=&\alpha^{k+2}+ \beta^{k+2}\\
&=&(\alpha+\beta)(\al...
...1}+ \beta^{k+1})
-\alpha\beta(\alpha^k+ \beta^k)=pA_{k+1}+qA_k
\end{eqnarray*}

となり,これも整数なので $n=k+2$ でも成立する.

ゆえにすべての正の整数 $n$ について$A_n$ は整数である.

(2)


(1)から$A_n$は整数である.ゆえに $A_{3n}-{A_n}^3$ は3の倍数である.

解答 1.19       問題1.19
  1. $x=y$ のときは等号が成立する.

    $x<y$ とする.このとき $x<px+qy<y$ である. 関数$y=\log x$が上に凸な関数であるから,

    \begin{displaymath}
p\log x+q\log y<\log(px+qy)
\end{displaymath}

    が成り立つ.これから

    \begin{displaymath}
\log x^py^q<\log(px+qy)
\end{displaymath}

    関数$y=\log x$は単調増加なので

    \begin{displaymath}
x^py^q<px+qy
\end{displaymath}

    が成立する.$x>y$のときも同様なので, $x=y$のときとあわせて題意の不等式が成立する. 等号成立は $x=y$ のときである.
  2. (1)と同様に考え,

    \begin{displaymath}
p_1\log x_1+p_2\log x_2+ \cdots +p_n\log x_n\le
\log\left(p_1x_1+p_2x_2+\cdots+p_nx_n\right)
\end{displaymath}

    が成立することを数学的帰納法で示せばよい.

    $n=2$ のときは(1)から成立.

    $n$個の場合に成立するとし $n+1$ 個の場合に成立することを示す.

    $q=p_1+p_2+\cdots+p_n$ とおく.

    \begin{displaymath}
\dfrac{p_1}{q}+\dfrac{p_2}{q}+\cdots+\dfrac{p_n}{q}=1
\end{displaymath}

    および,$q+p_{n+1}=1$ であることに注意する.

    \begin{eqnarray*}
&&p_1\log x_1+p_2\log x_2+ \cdots
+p_n\log x_n+p_{n+1}\log ...
...\\
&=&\log\left( p_1x_1+p_2x_2+ \cdots +p_{n+1}x_{n+1}\right)
\end{eqnarray*}

(訂正:上から2行目,{}内第1項と2項の間に+挿入)


ゆえに $n+1$ の場合も成立した. 等号成立は $x_1=\cdots=x_n$かつ

\begin{displaymath}
\dfrac{p_1}{q}x_1+\dfrac{p_2}{q}x_2+ \cdots
+\dfrac{p_n}{q}x_n=x_{n+1}
\end{displaymath}

つまり $x_1=\cdots=x_{n+1}$のとき.

よって一般の $n$ に対して題意が示された.□

注意

\begin{displaymath}
p_i=\dfrac{1}{n}\quad (i=1,\ 2,\ \cdots,\ n)
\end{displaymath}

のとき,これは相加平均と相乗平均の関係の不等式である. □

解答 1.20       問題1.20
(1)
$m$ に関する数学的帰納法で示す.

$m=1$ のとき.

\begin{displaymath}
1^3\le a_n\le 2^3
\end{displaymath}

となる $n$ は, $a_1=1,\ a_2=1+2^2=5,\ a_3=14$ より $n=1,\ 2$ と二つある. つまり $c_1=2\ge1$ で成立している.

$m=k$ のとき $c_k\ge 1$ とする.つまり

\begin{displaymath}
k^3\le a_n\le (k+1)^3
\end{displaymath}

となる $n$ が少なくとも一つ存在するとする. その $n$ のなかで最大のものを $N$ とする.したがって

\begin{displaymath}
a_N\le(k+1)^3\ \cdots\maru{1} \quad
かつ\ (k+1)^3<a_{N+1} \ \cdots\maru{2}
\end{displaymath}

である.

ここでもし $a_{N+1}\le (k+2)^3$ が示されたら

\begin{displaymath}
(k+1)^3\le a_{N+1}\le (k+2)^3
\end{displaymath}

となり, $m=k+1$ のときも $(k+1)^3\le a_n\le (k+2)^3$をみたす $n$ が 少なくとも一つ存在し$c_{k+1}\ge1$ となることが示される.

そのためには, $a_{N+1}=a_N+(N+1)^2$かつ $ a_N\le (k+1)^3$なので


を示せばよい.

ここで $a_N=\dfrac{N(N+1)(2N+1)}{6}>\dfrac{N^3}{3}$なので

\begin{displaymath}
N^3<3a_N\le 3(k+1)^3
\end{displaymath}

つまり $N<\sqrt[3]{3}(k+1)$ $\sqrt[3]{3}<\dfrac{3}{2}$ なので

\begin{displaymath}
N+1<\sqrt[3]{3}(k+1)+1=\sqrt[3]{3}k+\dfrac{5}{2}
\end{displaymath}

\begin{eqnarray*}
∴&&3k^2+9k+8-(N+1)^2\\
&\ge&3k^2+9k+8- \left(\sqrt[3]{3}k+...
...鐔quad 9-5\sqrt[3]{3}=729^{\frac{1}{3}}
-375^{\frac{1}{3}}>0 )
\end{eqnarray*}

(訂正:3カ所の +8 は+7に)

ゆえに $m=k+1$ でも成立し,帰納法により題意は示された.
(2)
$m$  に関する数学的帰納法で示す.

$m=1$ のとき.(1)から $c_1=2$ であるから成立している.

$m=k$ のとき $c_k\le 2$ とする.

\begin{displaymath}
k^3\le a_n\le (k+1)^3
\end{displaymath}

となる$n$ のなかで最大のものを $N$ とする.このとき
\begin{displaymath}
(k+2)^3<a_{N+3}
\end{displaymath}

をしめせば, $(k+1)^3\le a_n\le (k+2)^3$を満たす $n$ は多くても $N+1$$N+2$ の二つであることになる.

そのためには $a_{N+3}=a_{N+1}+(N+2)^2+(N+3)^2$$(k+1)^3<a_{N+1}$ であるから

\begin{displaymath}
(k+2)^3-(k+1)^3<(N+2)^2+(N+3)^2
\quad \iff \quad 3k^2+9k+7<2N^2+10N+13
\end{displaymath}

を示せばよい.Aより
\begin{displaymath}
(k+1)^3<\dfrac{(N+1)(N+2)(2N+3)}{6}<\dfrac{(N+2)(N+2)(2N+4)}{6}
=\dfrac{(N+2)^3}{3}
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴ \quad \sqrt[3]{3}(k+1)<N+2
\end{displaymath}

$\dfrac{5}{4}<\sqrt[3]{3}$ なので
\begin{displaymath}
\sqrt[3]{3}k-\dfrac{3}{4}<N
\end{displaymath}

\begin{eqnarray*}
∴&&2N^2+10N+13-(3k^2+9k+7)\\
&>&2 \left(\sqrt[3]{3}k-\dfra...
...3^{\frac{2}{3}}-3)k^2+(7\cdot3^{\frac{1}{3}}-9)k
-\dfrac{3}{8}
\end{eqnarray*}

ここで
\begin{eqnarray*}
&&7\cdot3^{ \frac{1}{3}}-9-
\dfrac{3}{8}=7\cdot3^{ \frac{1}{...
...}-\dfrac{77}{8}
=7 \left(3^{\frac{1}{3}}-\dfrac{11}{8} \right)
\end{eqnarray*}

そこで
\begin{displaymath}
\left(\dfrac{11}{8} \right)^3=\dfrac{1331}{512}<3
\end{displaymath}

であるから $k$ が正の整数であるかぎり
\begin{displaymath}
2N^2+10N+13-(3k^2+9k+7)>0
\end{displaymath}

ゆえに $m=k+1$ に対しても成立し, すべての自然数 $m$ に対して $m\le 2$ である.

解答 1.21       問題1.21
(1)
$\beta>1$$0 \le x \le 1$より

\begin{displaymath}
0 \le \beta x <\beta
\end{displaymath}

一般に二つの実数 $x<y$ に対して $[x]\le[y]$ であるから

\begin{displaymath}
0 \le [\beta x] \le [\beta]
\end{displaymath}

したがって

\begin{displaymath}
0 \le d_1(x) \le [\beta]
\end{displaymath}

$n\ (n=1,\ 2,\ 3,\ \cdots)$ に対して $0\le f_n(x) \le 1$ が示されれば上の議論を $x$ に代えて $f_n(x)$ に対して行うことにより

\begin{displaymath}
0 \le [\beta f_n(x)] \le [\beta]
\end{displaymath}

から

\begin{displaymath}
0 \le d_{n+1}(x) \le [\beta]\ (n=1,\ 2,\ \cdots)
\end{displaymath}

が成立し, $d_1(x)$ の結論とあわせて題意が示される.

$n\ (n=1,\ 2,\ 3,\ \cdots)$ に対して $0\le f_n(x) \le 1$ を数学的帰納法で示す.

$n=1$ のとき. $f_1(x)=\beta x-[\beta x]$

\begin{displaymath}[\beta x]\le \beta x<[\beta x]+1
\end{displaymath}

$f_1(x)=\beta x-[\beta x]$ より

\begin{displaymath}
0 \le f_1(x) <1
\end{displaymath}

$n=k$ のとき $0 \le f_k(x) <1$とすれば

\begin{displaymath}[\beta f_k(x)]\le \beta f_k(x)<[\beta f_k(x)]+1
\end{displaymath}

より同様に

\begin{displaymath}
0 \le f_{k+1}(x) <1
\end{displaymath}

ゆえに帰納法によってすべての $n$ に対して

\begin{displaymath}
0 \le f_n(x) <1
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴ \quad 0 \le d_n(x) \le [\beta]\ (n=1,\ 2,\ \cdots)
\end{displaymath}

(2)
数学的帰納法で示す.

$n=1$ のとき.

\begin{eqnarray*}
&&\beta^1x-\sum_{k=1}^1\beta^{1-k}d_k(x)\\
&=&\beta x-d_1(x)\\
&=&\beta x-[\beta x]=f_1(x)
\end{eqnarray*}

となり,成立.

$n=j$ で成立するとする.つまり

\begin{displaymath}
f_j(x)=\beta^jx-\sum_{k=1}^j\beta^{j-k}d_k(x)
\end{displaymath}

とする.このとき

\begin{eqnarray*}
f_{j+1}(x)&=&f(f_j(x))=\beta f_j(x)-[\beta f_j(x)]\\
&=&\be...
...j+1}(x)\\
&=&\beta^{j+1}x-\sum_{k=1}^{j+1}\beta^{j+1-k}d_k(x)
\end{eqnarray*}

ゆえに $n=j+1$ でも成立した.

したがって帰納法により すべての $n=1,\ 2,\ 3,\ \cdots$に対して

\begin{displaymath}
f_n(x)=\beta^nx-\sum_{k=1}^n\beta^{n-k}d_k(x)
\end{displaymath}

が成り立つ.
(3)
(2)から

\begin{displaymath}
\dfrac{1}{\beta^n}f_n(x)=x-\sum_{k=1}^n\dfrac{d_k(x)}{\beta^k}
\end{displaymath}

$1<\beta,\ 0\le f_n(x)<1$なので $x$ を固定するとき

\begin{displaymath}
∴ \quad \lim_{n \to \infty} \left\vert x-\sum_{k=1}^n\dfra...
...}\right\vert
=\lim_{n \to \infty} f_n(x)\dfrac{1}{\beta^n}=0
\end{displaymath}

注意     これは何をしているのか. $\beta=10,\ x=\sqrt{2}-1=0.41421356\cdots$ のときどのようになっているか.

\begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
d_1(x)=[10x]=4&f_1(x)=10x-[10x]=0.142135...
...10f_3(x)-[10f_3(x)]=0.1356\cdots\\
\cdots&\cdots
\end{array}\end{displaymath}

したがって

\begin{displaymath}
\lim_{n \to \infty}\sum_{k=1}^n\dfrac{d_k(x)}{10^k}
=\dfrac{...
...{10^2}+\dfrac{1}{10^3}+\dfrac{2}{10^4}+\cdots=0.41421356\cdots
\end{displaymath}

となる. つまり $x$ の10進展開そのものである.これを $\beta>1$ である任意の実数 $\beta$ による 展開,いわば $\beta$ 進展開に拡張したものである. □

解答 1.22       問題1.22

  1. $f'_1(x)=3x^2-3$なので,$x=\pm 1$で極. $f_1(\pm 1)=\mp 2$. また $f_1(\pm 2)=\pm 2$である.

    $f_1(x)=a$を満たす実数$x$の個数は,二つのグラフ$y=f_1(x)$$y=a$の共有点の個数に 等しい.

    したがって

    \begin{displaymath}
\vert a\vert>2\ のとき1個,\ \vert a\vert=2\ のとき2個,\ \vert a\vert< 2\ のとき3個
\end{displaymath}

  2. $f_2(x)=f_1(f_1(x))$である.$f_1(f_1(x))=a$ $f_1(z)=a,\ z=f_1(x)$とおく. (1)のグラフから
    1. $\vert a\vert>2$ のとき$\vert z\vert>2$$z$が1個存在し,それに対して$z=f_1(x)$となる$x$が1個存在する.
    2. $\vert a\vert=2$ のとき$\vert z\vert=2$$z$$\vert z\vert<2$$z$が各1個存在し, それに対して,$z=f_1(x)$となる$x$がそれぞれ3個と2個,計5個存在する.
    3. $\vert a\vert<2$ のとき$\vert z\vert<2$$z$が3個存在し,それぞれに対して$z=f_1(x)$となる$x$が3個, 計9個存在する.
  3. 1以上の自然数$n$$\vert a\vert<2$である任意の定数$a$に対し,

    \begin{displaymath}
\begin{array}{l}
f_n(x)=a\ を満たす実数\ x\ は\ 3^n\ 個存..
...\ a\ 、ヒツミ、ケ、・ 3^n\ クト、ホ\ x\ 、ホテヘ、マ、ケ、ル、ニーロ、ハ、・・
\end{array} \end{displaymath}

    このことを数学的帰納法で示す.

    $n=1$のときは(1)から成立.

    $n$で成立するとする.

    $f_{n+1}(x)=f_1(f_n(x))$なので(2)と同様に$f_1(f_n(x))=a$ $f_1(z)=a,\ z=f_n(x)$と分ける. (1)から$f_1(z)=a$となる$z$$\vert z\vert<2$の範囲に$3$個存在する.それを $z_1,\ z_2,\ z_3$とする. これはすべて異なる.各 $z_k\ (k=1,\ 2,\ 3)$に対して 数学的帰納法の仮定によって$f_n(x)=z_k$となる$x$$3^n$個存在し, $z_1,\ z_2,\ z_3$に対する $x$の値はすべて異なる.ゆえに $f_{n+1}(x)=f_1(f_n(x))=a$となる$x$$3^{n+1}$個存在する.

    $a$が異なれば(1)から対応する $z_1,\ z_2,\ z_3$がすべて異なるので,上のようにして定まる $f_{n+1}(x)=a$となる$3^{n+1}$個の$x$の値もすべて異なる.

    よって命題が$n+1$でも成立したので,すべての$n$で成立する.

    特に$a=0$で成立するので(3)が示された.

別解 自然数$n$に対し

\begin{displaymath}
f_n(2\cos \theta)=2\cos(3^n\theta)
\end{displaymath}

が成立することを数学的帰納法で示す.$n=1$のとき.

\begin{displaymath}
f_1(2\cos \theta)=8\cos^3\theta-6\cos\theta=2\cos 3\theta
\end{displaymath}

で成立. $f_n(2\cos \theta)=2\cos(3^n\theta)$とする.このとき

\begin{eqnarray*}
f_{n+1}(2\cos \theta)&=&f_n\{f_1(2\cos \theta)\}\\
&=&f_n(2\cos 3\theta)=2\cos\{3^n(3\theta)\}\\
&=&2\cos(3^{n+1}\theta)
\end{eqnarray*}

$n$のときの成立を仮定して$n+1$のときの成立が示せたので,一般に成立する.

これを活用して,$f_n(x)=0$となる$x$ $x=2\cos \theta\ (0\le \theta\le \pi)$と表されるものを求める.

$f_n(2\cos \theta)=0$より $2\cos(3^n\theta)=0$.つまり

\begin{displaymath}
3^n\theta=\dfrac{(2k+1)\pi}{2}
\end{displaymath}

θは

\begin{displaymath}
0\le \dfrac{(2k+1)\pi}{2\cdot3^n}\le \pi
\end{displaymath}

の範囲でとればよい.これから

\begin{displaymath}
0\le k+\dfrac{1}{2}\le 3^n
\end{displaymath}

つまり$k$ $0\le k \le 3^n-1$$3^n$個とれる.

したがって$f_n(x)=0$を満たす$x$

\begin{displaymath}
x=2\cos \left\{\dfrac{(2k+1)\pi}{2\cdot3^n} \right\}\ (k=0,\ 1,\ \cdots,\ 3^n-1)
\end{displaymath}

$3^n$個存在した.一方$f_n(x)$の次数は明らかに$3^n$なので,これらが$f_n(x)=0$を満たす$x$の すべてである.よって題意が示された. □

解答 1.23       問題1.23

$n=1$ のとき. $f(x)=x+b$ とおく.$f(q_1)=q_1+b$$f(q_1)$ が有理数なので, $b=f(q_1)-q_1$ も有理数である.

$n=m$ のとき成立するとする.

$n=m+1$ のとき. $f(x)$$x^{m+1}$ の係数が1である $x$$m+1$ 次式とし, 相異なる $m+1$ 個の有理数 $q_1,\ q_2,\ \cdots,\ q_{m+1}$に対し $f(q_1),\ f(q_2),\ \cdots,\ f(q_{m+1})$がすべて有理数であるとする.

因数定理より

\begin{displaymath}
f(x)=(x-q_{m+1})Q(x)+f(q_{m+1}) \quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}

となる.ここで $Q(x)$$m$ 次式で $x^m$ の係数は両辺の係数を比較して1である.

$q_1,\ q_2,\ \cdots,\ q_{m+1}$はすべて異なるので, $q_1,\ q_2,\ \cdots,\ q_m$に対し

\begin{displaymath}
Q(q_i)=\dfrac{f(q_i)-f(q_{m+1})}{q_i-q_{m+1}}
\end{displaymath}

したがって $Q(q_1),\ \cdots,\ Q(q_m)$ はすべて有理数である.

数学的帰納法の仮定から $Q(x)$ は有理数係数の多項式である.ゆえに$\maru{1}$から $f(x)$ も 有理数係数の多項式である.

したがって題意が示された.□

注意         この問題は数学的帰納法を使うことなく解ける. $g(x)=f(x)-x^n$$n-1$ 次式である. $g(q_1),\ g(q_2),\ \cdots,\ g(q_n)$もすべて有理数である.

$n-1$ 次式 $g(x)$ に対して$n$ 個の$x$に対する値が定まれば $g(x)$ は一意に定まる. 実際

\begin{eqnarray*}
G(x)&=&g(q_1) \dfrac{(x-q_2)(x-q_3) \cdots
(x-q_n)}{(q_1-q_...
...\cdots
(x-q_{n-1})}{(q_n-q_1)(q_n-q_2) \cdots
(q_n-q_{n-1})}
\end{eqnarray*}

とおく.このとき $G(q_1)=g(q_1),\cdots,\ G(q_n)=g(q_n)$ なので恒等式の原理より $G(x)=g(x)$ . したがって

\begin{eqnarray*}
f(x)&=&x^n+g(x)\\
&=&x^n+g(q_1) \dfrac{(x-q_2)(x-q_3) \cdots ...
...\cdots
(x-q_{n-1})}{(q_n-q_1)(q_n-q_2) \cdots
(q_n-q_{n-1})}
\end{eqnarray*}

これから $f(x)$ が有理数係数の $n$ 次多項式であることが示された.□

※    これが「ラグランジュの補間公式」の方法である. □

解答 1.24       問題1.24

解1     $a_1\ge 0$ならすべての項が負でなく和が0になるのはすべて0のときのみになる. ゆえに$a_1<0$である.同様に$a_n>0$である.したがって 番号 $i\ (1\le i \le n-1)$

\begin{displaymath}
a_i<0,\ \quad a_{i+1}\ge 0
\end{displaymath}

となるものがある.このとき

\begin{eqnarray*}
&&a_1+2a_2+\cdots+ia_i>i(a_1+a_2+\cdots+a_i)\\
&&(i+1)a_{i+1}+(i+2)a_{i+2}+\cdots+na_n>
(i+1)(a_{i+1}+a_{i+2}+\cdots+a_n)
\end{eqnarray*}

であるから

\begin{eqnarray*}
&&a_1+2a_2+\cdots+na_n\\
&=&a_1+2a_2+\cdots+ia_i+(i+1)a_{i+1}...
...)+
a_{i+1}+a_{i+2}+\cdots+a_n\\
&=&a_{i+1}+a_{i+2}+\cdots+a_n>0
\end{eqnarray*}

(訂正:下から2行目「>」を「=」に)


である. □

解2     $a_1<0,\ a_n>0$を示すことは同様.

$n$に関する数学的帰納法で示す. 条件が成り立つので$n\ge 2$である.

$n=2$のとき.$0<a_2$であるから

\begin{displaymath}
a_1+2a_2=a_1+a_2+a_2=a_2>0
\end{displaymath}

$n=k$のとき成り立つとする. $n=k+1$のとき.

\begin{displaymath}
a_1+a_2+\cdots+a_{k-1}+a_k+a_{k+1}=0
\end{displaymath}

を満たしている. $b_k=a_k+a_{k+1}$とおくと,

\begin{displaymath}
a_1,\ a_2,\ \cdots,\ a_{k-1},\ b_k
\end{displaymath}

も和が0で増加数列である.数学的帰納法の仮定から

\begin{displaymath}
0<a_1+2a_2+\cdots+{k-1}a_{k-1}+kb_k
\end{displaymath}

であるが,

\begin{eqnarray*}
&&a_1+2a_2+\cdots+{k-1}a_{k-1}+kb_k\\
&=&a_1+2a_2+\cdots+{k-1...
..._k+a_{k+1})\\
&<&a_1+2a_2+\cdots+{k-1}a_{k-1}+ka_k+(k+1)a_{k+1}
\end{eqnarray*}

なので,$n=k+1$のときも命題が成立する. よって$n\ge 2$で成立する. □

解答 1.25       問題1.25

(1) 次数 $n$ のとき,任意の正の実数 $a_0,\ a_1,\ \cdots,\ a_n$ に対して

\begin{displaymath}
a_nx^n-a_{n-1}x^{n-1}-\cdots-a_1x-a_0=0 \quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}

が正の解をただ一つもつことを数学的帰納法で示す.

$n=1$ のとき. $\maru{1}$

\begin{displaymath}
a_1x-a_0=0
\end{displaymath}

であるから, $x=\dfrac{a_0}{a_1}>0$ は確かにただ一つの正の解である.

$n=k-1\ (k\ge 2)$ のとき成立するとする.

$n=k$ のとき.

\begin{displaymath}
f(x)=a_nx^n-a_{n-1}x^{n-1}-\cdots-a_1x-a_0
\end{displaymath}
と置く.

\begin{displaymath}
f'(x)=na_nx^{n-1}-(n-1)a_{n-1}x^{n-2}-\cdots-a_1
\end{displaymath}
ここで係数

\begin{displaymath}
na_n,\ (n-1)a_{n-1},\ \cdots,\ a_1
\end{displaymath}

はすべて正なので, 帰納法の仮定によって $f'(x)=0$ は正の解をただ一つもつ.

それを $x_0$ とする. $f'(0)=-a_1<0$ なので $f'(x)$$x=x_0$ で負から正に変わる. つまり $f(x)$$x=x_0$ で極小である.

$f(0)=-a_0<0$ なので $f(x)=0$ はただ一つ正の解 $r$ をもつ.


(2) 一般に複素数 $\alpha,\ \beta$ に関して不等式

\begin{displaymath}
\vert\alpha\vert-\vert\beta\vert\le \vert\alpha-\beta\vert \le \vert\alpha\vert+\vert\beta\vert
\end{displaymath}

が成立する.ゆえに

\begin{eqnarray*}
\vert f(\alpha)\vert&=&\vert a_n\alpha^n-a_{n-1}\alpha^{n-1}-\...
...ts-\vert a_1\alpha\vert-\vert a_0\vert\\
&=&f(\vert\alpha\vert)
\end{eqnarray*}

したがって $\vert\alpha\vert>r$ である複素数 $\alpha$ に対しては(1)から $f(\vert\alpha\vert)>0$なので$f(\alpha)=0$となることはあり得ない.

よって1の他の解 $\alpha$ はすべて $\vert\alpha\vert\le r$ をみたす.

(3)

\begin{displaymath}
g(x)=(x-1)(A_nx^n+A_{n-1}x^{n-1}+\cdots+A_1x+A_0)
\end{displaymath}

とおく.

\begin{eqnarray*}
g(x)&=&(x-1)(A_nx^n+A_{n-1}x^{n-1}+\cdots+A_1x+A_0)\\
&=&A_nx^{n+1}-(A_n-A_{n-1})x^n-\cdots-(A_2-A_1)x-A_0
\end{eqnarray*}

この係数

\begin{displaymath}
A_n,\ A_n-A_{n-1},\ \cdots,\ A_2-A_1,\ A_0
\end{displaymath}

はすべて正なので, $g(x)$ は次数 $n+1$ で(1)の条件を満たす.

$g(x)=0$$x=1$ を解にもつので,(2)から $g(x)=0$$x=1$ 以外の 解 $\alpha$ はすべて $\vert\alpha\vert\le 1$ をみたす.つまり

\begin{displaymath}
A_nx^n+A_{n-1}x^{n-1}+\cdots+A_1x+A_0=0
\end{displaymath}

の解はすべて $\vert\alpha\vert\le 1$ を満たす.□

注意     実は $\vert\alpha\vert<1$ が成り立つ.数学的帰納法の部分に的を絞ったので問題は $\vert\alpha\vert\le 1$ にしてあるが,ぜひこの証明も考えてほしい. □

解答 1.26       問題1.26
(1)
$\sqrt{3}$ が有理数であるとする.

\begin{displaymath}
\sqrt{3}=\dfrac{p}{q}\ p,\ q\ は互いに素な整数
\end{displaymath}

とおく.

\begin{displaymath}
3q^2=p^2
\end{displaymath}

より $p$ は3の倍数である. $p=3p'$ とおく.

\begin{displaymath}
3q^2=(3p')^2 \quad \Rightarrow q^2=3p'^2
\end{displaymath}

これから $q$ も3の倍数になり, $p,\ q\ は互いに素$ の仮定と矛盾した.

よって, $\sqrt{3}$ は有理数でない.つまり $\sqrt{3}$ は無理数である.

(2)
三つの有理点 $\mathrm{A},\ \mathrm{B},\ \mathrm{C}$ $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ が正三角形であるものが存在したとする.

このとき二つのベクトル

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(x_1,\ y_1)\ , \quad \overrightarrow{\mathrm{AC}}
=(x_2,\ y_2)
\end{displaymath}

の各成分は有理数である.

$\bigtriangleup \mathrm{ABC}$ の面積を考えると

\begin{displaymath}
\dfrac{1}{2}\vert \overrightarrow{\mathrm{AB}}\vert^2 \sin 60 ^{\circ}
=\dfrac{1}{2}\vert x_1y_2-x_2y_1\vert
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
\dfrac{\sqrt{3}}{2}(x_1^2+y_1^2)=\vert x_1y_2-x_2y_1\vert \...
...tarrow \quad \sqrt{3}
=\dfrac{2(x_1y_2-x_2y_1)}{x_1^2+y_1^2}
\end{displaymath}

右辺は有理数であるからこれは $\sqrt{3}$ が無理数であることと矛盾した.

よって3頂点が有理点である正三角形は存在しない.

別解     (2)は次のように$\tan$で示すこともできる.

設定は同様とする.直線$\mathrm{AB}$,直線$\mathrm{AC}$$x$軸の正の方向をなす角を それぞれ $\alpha,\ \beta$とする.いずれかが$y$軸と平行なときは, 辺長が有理数の正三角形の高さは無理数であることから,矛盾が出る.

いずれも$y$軸とは平行でないとする.

\begin{displaymath}
\tan\alpha=\dfrac{y_1}{x_1},\
\tan\beta=\dfrac{y_2}{x_2}
\end{displaymath}

である.

一方

\begin{displaymath}
\left\vert\beta-\alpha \right\vert=\dfrac{\pi}{3}
\end{displaymath}

より,


となって,無理数=有理数の等式となり矛盾である.

よって存在しない. □

解答 1.27       問題1.27
(1)
直線$\mathrm{AB}$の傾きは $\dfrac{b^2-a^2}{b-a}=b+a$,同様に 直線$\mathrm{AC}$の傾きは$c+a$である.各直線が$x$軸の正の方向となす角を $\alpha,\ \beta$とすれば

\begin{displaymath}
\tan \alpha=b+a,\ \tan \beta=c+a
\end{displaymath}

である.このとき

\begin{eqnarray*}
\tan\angle \mathrm{BAC}&=&\tan 60^{\circ}=\sqrt{3}\\
\vert\...
...an\alpha\tan\beta} \right\vert\\
&=&\dfrac{c-b}{1+(b+a)(c+a)}
\end{eqnarray*}

である.$\sqrt{3}$が無理数で, は有理数であるから どのような$a,\ b,\ c$に対してもこれが一致することはない. つまり $\angle \mathrm{BAC}=60^{\circ}$となることはない.
(2)
$\angle \mathrm{BAC}=45^{\circ}$なので

\begin{displaymath}
\tan\angle \mathrm{BAC}=1
\end{displaymath}

である.$a=-3$であるから

\begin{displaymath}
1=\dfrac{c-b}{1+(b-3)(c-3)}
\end{displaymath}

でなければならない.これから

\begin{displaymath}
bc-3b-3c+10=c-b
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
bc-2b-4c=-10\quad \iff\quad (b-4)(c-2)=-2
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
(b-4,\ c-2)=(\pm2,\ \mp1),\ (\pm1,\ \mp2)
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
(b,\ c)=(6,\ 1),\ (2,\ 3),\ (5,\ 0),\ (3,\ 4)
\end{displaymath}

$b<c$なので $(b,\ c)=(2,\ 3),\ (3,\ 4)$である.

解答 1.28       問題1.28

$x^n+2y^n=4z^n$にすべてが0ではない1組の解 $(x_0,\ y_0,\ z_0)$ があるとする. この3数の最大公約数を$d$とし, $x_0=dx'_0,\ y_0=dy'_0,\ z_0=dz'_0$ とする. すると

\begin{displaymath}
x_0^n+2y_0^n=4z_0^n \quad \iff\quad {x'_0}^n+2{y'_0}^n=4{z'_0}^n
\end{displaymath}

である.よってすべてが0ではない1組の解があれば, 最大公約数が1の解がある.

最大公約数が1の1組の解を $(x_0,\ y_0,\ z_0)$とする.

$x_0^n=4z_0^n-2y_0^n$ より $x_0$ は偶数. $x_0=2x'_0$ とおく.このとき

\begin{displaymath}
2^n{x'_0}^n+2y_0^n=4z_0^n \quad \iff\quad 2^{n-1}{x'_0}^n+y_0^n=2z_0^n
\end{displaymath}

$n\ge 3$ より $y_0$ も偶数. $y_0=2y'_0$ とおく.同様にこれから

\begin{displaymath}
2^{n-2}{x'_0}^n+2^{n-1}{y'_0}^n=z_0^n
\end{displaymath}

を得る.$n\ge 3$ より $z_0$ も偶数.

ところがこれは $(x_0,\ y_0,\ z_0)$が最大公約数が1の解であることと矛盾する.

よって,$n$ が3以上の整数のとき,

\begin{displaymath}
x^n+2y^n=4z^n
\end{displaymath}

を満たす整数 $x,\ y,\ z$$x=y=z=0$ 以外に存在しない.

別解 次のようにしてもよい.

$x^2+2y^2=4z^2$にすべてが0ではない1組の解 $(x_0,\ y_0,\ z_0)$ があるとする. 冒頭と同様にして,$x_0,\ y_0$は2の倍数である. $x_0=2x_1,\ y_0=2y_1$とおく.

\begin{displaymath}
(2x_1)^2+2(2y_1)^2=3{z_0}^2
\end{displaymath}

より$z_0$も2の倍数である.$z_0=2z_1$とおく.このとき再び

\begin{displaymath}
{x_1}^2+2{y_1}^2=4{z_1}^2
\end{displaymath}

と,はじめの式と同じ式になる. したがって $x_1,\ y_1,\ z_1$が再び3の倍数となり,この操作は限りなく続けることができる.

つまり $x_0,\ y_0,\ z_0$は2で何度でも割れる. このような数は0以外になく.$x_0=y_0=z_0=0$となり. $(x_0,\ y_0,\ z_0)$ が「すべてが0」ではない1組の解であったことに反した. □

解答 1.29       問題1.29
(1)
$z^9=-1$ である.また $\bar{z}=\cos 20^{\circ} -i\sin 20^{\circ}
=\dfrac{1}{z}$ である.
$z^9+1=(z^3+1)(z^6-z^3+1)$$z^3 \ne -1$ なので

\begin{displaymath}
z^6-z^3+1=0\quad \Rightarrow \quad z^3-1+\dfrac{1}{z^3}=0
...
...(z+\dfrac{1}{z} \right)^3-3 \left( z+\dfrac{1}{z} \right)-1=0
\end{displaymath}

つまり $\alpha$ $\alpha^3-3\alpha -1=0$ を満たすので

\begin{displaymath}
x^3-3x -1=0
\end{displaymath}

の解である.

注意     ド・モアブルの定理を習っていないときは,三倍角の公式でもよい.

$\alpha =z+\bar{z}=2\cos 20^{\circ}$である.三倍角の公式から

\begin{displaymath}
\cos 60^{\circ}=4\cos^3 20^{\circ}-3\cos 20^{\circ}
\end{displaymath}

より

\begin{displaymath}
\dfrac{1}{2}
=4\left(\dfrac{\alpha}{2} \right)^3
-3\left(\dfrac{\alpha}{2} \right)
\end{displaymath}

これから $\alpha^3-3\alpha -1=0$ が導かれる.
(2)
$f(x)=x^3-3x -1$ とおく. $f'(x)=3x^2-3$ より $f'(x)=0$ の解は $x=\pm 1$

\begin{displaymath}
f(1)\cdot f(-1)=(-3)(1)<0
\end{displaymath}

であるから, $f(x)=0$ は異なる3実数解を持つ.

有理数解 $x=\dfrac{p}{q}\ (p,\ q\ は互いに素な整数)$ を持つとする.

\begin{displaymath}
\left(\dfrac{p}{q} \right)^3-3 \left(\dfrac{p}{q} \right) -1=0
\end{displaymath}

より

\begin{displaymath}
p^3-3pq^2-q^3=0
\end{displaymath}

これから


$p,\ q\ は互いに素な整数$なので $p=q=1$ .しかし $x=1$ は明らかに解でない. よって有理数の解はない.
(3)
$\alpha$ が二次方程式 $ax^2+bx+c=0\ (a,\ b,\ c 有理数)$ の解とする. $a\ne 0$ なので $a$ で割ることにより $x^2+bx+c=0\ (b,\ c 有理数)$ の解とできる.

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
\alpha^3-3\alpha -1=0\\
\alpha^2+b\alpha +c=0
\end{array} \right.
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
x^3-3x-1=(x^2+bx+c)(x-b)+(b^2-c-3)x+bc-1
\end{displaymath}

より

\begin{displaymath}
(b^2-c-3)\alpha+bc-1=0
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
\alpha=\dfrac{bc-1}{b^2-c-3},\ またはb^2-c-3=0\ かつ\ bc-1=0
\end{displaymath}

第1の場合 $\alpha$ は有理数であり得ないことに反する.
第2の場合 $c=\dfrac{1}{b}$ より $b^2-\dfrac{1}{b}-3=0$ .つまり

\begin{displaymath}
b^3-3b-1=0
\end{displaymath}

$b$$x^3-3x -1=0$ の解である.ところが $x^3-3x -1=0$ は有理数の解を 持ち得ないのであるから, $b$ が有理数であることと矛盾した.

よって有理数を係数とする二次方程式で, $\alpha$ を解とするものは存在しない ことが示された.

解答 1.30       問題1.30
(1)
$\log_53>0$ が有理数であると仮定し

\begin{displaymath}
\log_53=\dfrac{a}{b}\ (a,\ b は自然数)
\end{displaymath}

とおく.このとき

\begin{displaymath}
5^{ \frac{a}{b}}=3 \quad \iff \quad 5^a=3^b
\end{displaymath}

5と3がともに素数であるからこれはあり得ない(素因数分解の一意性).
(2)
有理数 $r$が負なら$\log_{10}r$が定義されないので $r$ は正である. $r=\dfrac{i}{j}\ (i,\ jは互いに素な自然数)$ とおく.
  1. $r=1$ のとき. $r=10^{0}$より成立.
  2. $r>1$ のとき. $\log_{10}r=\dfrac{s}{t}\ (s,\ tは互いに素な自然数)$ とおく.

    \begin{displaymath}
\log_{10}r=\dfrac{s}{t} \quad \iff \quad
10^{\frac{s}{t}}=r=\dfrac{i}{j}
\end{displaymath}

    より

    \begin{displaymath}
10^s= \dfrac{i^t}{j^t}
\end{displaymath}

    左辺は整数で $i^t$$j^t$ も互いに素なので, $j=1$

    左辺の素因数は2と5のみで2と5が同数( $s$ 個ずつ)入っている.

    ゆえに $i$ も素因数は2と5のみで, $t$ 乗して2と5が同数になるので, $i$ 自身2と5が同数入っていなければならない.

    つまり $i$ は10のべき乗で $10^q$ と表せる.

  3. $r<1$ のとき. $\dfrac{1}{r}>1$$\log_{10}r$が有理数なら $\log_{10}\dfrac{1}{r}=-\log_{10}r$も 有理数である.

    ゆえに $\dfrac{1}{r}=10^q$ と表せる.

    つまり $r=10^{-q}$ と表せる.

ゆえに $r=10^q\ (q=0,\ \pm1,\ \pm2,\ \cdots)$ に限ることが示された.
(3)
$\log_{10}(1+3+3^2+\cdots+3^n)$ が有理数と仮定する. (2)の論証から $1+3+3^2+\cdots+3^n>1$ $10^q\ (q=1,\ 2,\ \cdots)$ に限る.

\begin{displaymath}
1+3+3^2+\cdots+3^n=\dfrac{3^{n+1}-1}{3-1}
\end{displaymath}

より

\begin{displaymath}
3^{n+1}=2\cdot 10^q+1=2\cdot (10^q-1)+3
\end{displaymath}

$n$ が自然数なので$3^{n+1}$は9の倍数である.

一方右辺は $ (10^q-1)$ が9の倍数なので9で割ると3余る.

両辺9でわった余りが異なるのでこの等式は成り立たない.

ゆえに 任意の正の整数 $n$ に対して, $\log_{10}(1+3+3^2+\cdots+3^n)$ は無理数であることが示された.

解答 1.31       問題1.31

$\tan 1^{\circ}$が有理数であると仮定する.

まず $\tan n^{\circ}\quad (1 \le n \le 89)$が 有理数となることを数学的帰納法で示す.

$n=1$のときは仮定から有理数である.

$n=k$のとき有理数であるとする.このとき

\begin{displaymath}
\tan(k+1)^{\circ}=
\dfrac{\tan 1^{\circ}+\tan k^{\circ}}{1-\tan 1^{\circ}\tan k^{\circ}}
\end{displaymath}

より $\tan(k+1)^{\circ}$も有理数である.

したがって $\tan n^{\circ}\quad (1 \le n \le 89)$が有理数である.

次に $\tan 60^{\circ}=\sqrt{3}$で,これが有理数となったので

\begin{displaymath}
\sqrt{3}=\dfrac{q}{p}
\end{displaymath}

と分数に表される.このとき

\begin{displaymath}
3p^2=q^2
\end{displaymath}

である. 平方数の因数分解における各素因数の個数は偶数個なので, 左辺の因数分解において素因数3は奇数個あり, 右辺は偶数個ある.

これは矛盾である.

よって $\tan 1^{\circ}$は無理数である. □

解答 1.32       問題1.32

  1. $a_m>0$ であることを数学的帰納法で示す.

    定義より$a_1=1>0$$a_{m-1}>0$ とする. $f(x)>0$ より

    \begin{displaymath}
a_m=\int_0^{a_{m-1}}f(x)\,dx>0
\end{displaymath}

    ゆえに $m\ge 1$ に対して$a_m>0$ である.このとき $m\ge 2$ に対して $f(x)<1$なので

    \begin{displaymath}
a_m=\int_0^{a_{m-1}}f(x)\,dx<\int_0^{a_{m-1}}1\,dx=a_{m-1}
\end{displaymath}

    よって $a_1>a_2>\cdots >a_{m-1}>a_m>\cdots$ となることが示された.
  2. $\dfrac{1}{2002}>a_m$ となる $m$ が存在しないと仮定する.つまり つねに $\dfrac{1}{2002}\le a_m$ が成り立つとする. これから

    \begin{displaymath}
\dfrac{1}{2002}\le \lim_{m \to \infty} a_m
\quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}

    次に$\alpha$ $0<\alpha<\dfrac{1}{2002}$に一つとる. 仮定から各$m$に対して$\alpha<a_m$である. $f(x)$ は連続関数であるから $\alpha\le x \le 1$ における最大値が存在する. それを $M$ とする. $x>0$$0<f(x)<1$ なので $0<M<1$ である.

    \begin{displaymath}
\int_{\alpha}^{a_{m-1}}f(x)\,dx\le\int_{\alpha}^{a_{m-1}}M\,dx=M(a_{m-1}-\alpha)
\end{displaymath}

    であるが

    \begin{eqnarray*}
\int_{\alpha}^{a_{m-1}}f(x)\,dx
&=&\int_0^{a_{m-1}}f(x)\,dx-...
...
&>&\int_0^{a_{m-1}}f(x)\,dx-\int_0^{\alpha}1\,dx
=a_m-\alpha
\end{eqnarray*}

    なので

    \begin{displaymath}
a_m-\alpha<M(a_{m-1}-\alpha)
\end{displaymath}

    これから

    \begin{displaymath}
a_m-\alpha< M^{m-1}(a_1-\alpha)
\end{displaymath}

    $0<M<1$ であるから

    \begin{displaymath}
\lim_{m \to \infty} (a_m-\alpha)= 0
\end{displaymath}

    よって

    \begin{displaymath}
\lim_{m \to \infty}a_m=\alpha<\dfrac{1}{2002}
\quad \cdots\maru{2}
\end{displaymath}

    $\maru{2}$$\maru{1}$ と矛盾する. したがって $\dfrac{1}{2002}>a_m$ となる $m$ が存在することが示された.

解答 1.33       問題1.33

$\vert z\vert>\dfrac{5}{4}$となるどのような複素数$z$に対しても$w=z^2-2z$とは表されない」 という命題の対偶は 「$w=z^2-2z$となる$z$は, $\vert z\vert\le \dfrac{5}{4}$を満たす」 である. この命題が成立するような$w$とは,つまり $z$の2次方程式

\begin{displaymath}
z^2-2z-w=0
\end{displaymath}

の2解がともに $\vert z\vert\le \dfrac{5}{4}$を満たすような$w$ということである.

つまり一定の条件を満たす2次方程式の(複素)定数$w$の集合が$T$なのである.

さて, ひとつの複素数$w$に対して$z^2-2z-w=0$となる$z$は二つある.

\begin{displaymath}
z=1\pm\sqrt{1+w}\ (ただし \sqrt{1+w}\ は2乗して1+w となる複素数のひとつを表す.)
\end{displaymath}

それを$\alpha$$\beta$とする.解と係数の関係から

\begin{displaymath}
\alpha+\beta=2,\ \alpha\beta=-w
\end{displaymath}

$w$$T$に属することと,この$\alpha$$\beta$がさらに

\begin{displaymath}
\vert\alpha\vert\le \dfrac{5}{4},かつ\ \vert\beta\vert\le \dfrac{5}{4}
\end{displaymath}

を満たすことが同値である.

ゆえに$T$に属する$w$に対しては

\begin{displaymath}
\vert w\vert=\vert\alpha\beta\vert\le \dfrac{5}{4}\cdot\dfrac{5}{4}
\end{displaymath}

が成り立つ.

ここで等号が成立する$\alpha$$\beta$が存在することを示す.

\begin{displaymath}
\vert\alpha\vert=\dfrac{5}{4},かつ\ \vert\beta\vert=\vert 2-\alpha\vert=\dfrac{5}{4}
\end{displaymath}

$\alpha=x+iy$とおくと

\begin{displaymath}
x^2+y^2=\dfrac{25}{16},かつ(x-2)^2+y^2=\dfrac{25}{16}
\end{displaymath}

辺々引いて.よって $x=1$ $y=\pm \dfrac{3}{4}$.つまり

\begin{displaymath}
\alpha=1\pm\dfrac{3i}{4},\
\beta=1\mp\dfrac{3i}{4}\ (複号同順)
\end{displaymath}

よって$\vert w\vert$の最大値は $\dfrac{25}{16}$で, このとき

\begin{displaymath}
w=-\alpha\beta=-\left(1+\dfrac{3i}{4}\right)\left(1-\dfrac{3i}{4}\right)
=-\dfrac{25}{16}
\end{displaymath}

である. □


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